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穏やかな子守唄を考えた。
誰に向けたものでもないその刹那的な歌は、私だけが聞いた。
私だけがその歌の全てを知っている。
私だけがその歌は無意味だと知っている。
夜。私はいつも、仕事に行くのが嫌だとブルーライトの涙を流し、かと言って家族と関わるのも嫌だとロックをかけ、 ひとりで自室に篭もり、睡魔に負けるのを待っている。
掛け布団を自分の肉体にかぶせてやると、自分の肉体にデバフがかかり、睡魔が強くなる。いつも通り負けて、いつも通り朝が来る。
朝。食欲は私の肉体に現れてこない。前に、食べなければ動かないこの肉体に、無理くりパンを押し込んだことがある。そしたらこの肉体はあろうことかえずいた。そして呆然とした感覚と唾液まみれで少し湿ったパンを見た私はどうしていいか分からず、そのまま朝ご飯を食べずに出勤した。
そんなことがあってから、私は少しだけ朝食を食べている。三時のおやつにすら満たない量だが、これが私の限界らしいので、満足している。
そんな朝と夜を繰り返す私の生活に、文句がある人はいるのだろうか。
自慢ではない意味で、文句はないだろう。ある意味虚無に近いのかもしれない。 まぁ、何かやりがいを見いだせればそれでいい、くらいの感覚で生きている。
これを理想だと勘違いする人もいるだろう。勘違いではないかもしれないが、私は勘違いだと信じたいので、勘違いだとする。そしてそれに甘んじ、怠惰な毎日を送る。
私より可哀想な人がいるし、私より幸せな人がいるこの世界。
私は誰かより可哀想で、誰かより幸せな人。
しかしいつからだろう、そんな日々に変化が欲しいと願ったのは。
変化が欲しいと思うと辛くなる。どんどん変化できない日々に絶望し、日増しに辛くなるから。
藁にも縋る思いで、私は近所の神社に来た。別に神を信じているわけじゃない。ただ、心の支えが欲しいだけだ。
ここで何か、神様が現れた、とか、妖怪が現れた、とかが起こればそれはファンタジーで、誰かからすれば羨ましいんだろう。
私も、羨ましいと思われるような存在になってみたい。
誰もいない神社で目を閉じ、子守唄のことを思い出し、ひとりを望んだ。