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私にとって、あの子はまさにそれ。
「私だけを見て!」と駄々こねて、「なんでわかってくれないの!?」と泣きわめく。
「私だけが愛してあげるから」と上から目線で言っておきながら、「愛して欲しい」なんて言うし。
自分のことしか考えていないんだもの。
だから私はあの子なんか嫌いよ。
あんなにうるさくて迷惑な存在はいないもの。
私だって疲れてるのに! もう嫌!
「ねぇ」って言われても知らんぷりする。
話しかけられても無視する。
それでもめげずにしつこく付き纏うあの子。
「一緒に帰ろう」とか、「一緒のお弁当食べよう」とか言ってきて。
鬱陶しい。本当にウザったらしい。
私には私なりの生活があるのに……どうして邪魔をするのかしら?
「私がいるじゃない?」なんて言われたって、知った事じゃ無い。
あなたの存在そのものが煩わしくて仕方がないのに。
なのに……何故こんなにも、あなたのことが忘れられないのだろう? ああ、そうか。
この胸の奥底にある気持ちは、きっと……。
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病名:偽翼症候群 かつて、とある場所で見つかった奇怪な病。突然、背中から偽翼と呼ばれる奇妙なモノが生えてくる。それは、まるで天使のような美しい姿だが、同時にとても禍々しい印象を与える。この病を発症した者は、身体の成長が止まり、老いることもなくなる。また、心臓などの臓器の動きが止まっているため、生命活動の維持が不可能となる。そのため、発症した人間は必ず死亡する。しかし、何故か死体が残らないのも特徴である。何故このような現象が起きるのかはまだ解明されていない。
病名の由来は、背中に生えるその偽翼が、まるで生きているかのように羽ばたくからである。この現象は、発症者の脳波に呼応しているためではないかと言われているが定かではない。
現在、国内で確認されている感染者は、約200人程である。
病の進行は早く、初期症状は発熱や頭痛などである。重症になると意識障害を起こす場合もある。そして末期状態になると、幻覚を見たり幻聴が聞こえたりするようになる。これは発症者にとって最も恐ろしいことらしいが、まだ詳しいことはわかっていない。また、稀にではあるが、偽翼が勝手に動くこともあるという。
治療法は見つかっていない。現時点ではただ見守るしかないというのが現状である。
この病の特徴はもう一つあり、発症する原因が全くわからないことである。その為、いつどこで誰が発症してもおかしくはない状態が続いているのだ。
もし、自分の家族や友人がそうなったら、貴方はどう対処しますか?
「……」
彼は静かに目を開く。そして、いつものように窓の外を見つめる。あの日から、何も変わらない。
もう、この景色を見ることはできないかもしれないのだけれど……。
「おはようございます」
そう言って入ってきたのはメイド服姿の女性だった。彼女は俺に向かって恭しく礼をする。俺は彼女に返事をした。
「ああ、今日もいい天気ですね」
「はい」
「昨日はよく眠れました?」
「えぇ、おかげさまでぐっすりと」
「それはよかった」
女性は微笑んだ。
「さぁ、朝食の準備ができておりますよ」
「ありがとう」
彼女が部屋を出ていくのを待ってからベッドから出た。少しふらついたけど、どうにか立ち上がることができた。まだ本調子じゃないみたいだ。早く慣れないとな。
鏡の前に立ってみた。そこには見覚えのない顔があった。ぼさっとした髪に眠たそうな目をしている。頬骨が浮いているし、唇も乾燥してひび割れていた。肌の色もよくないし、体つきだって貧相に見える。どこからどう見ても冴えないおっさんだった。これが今の俺なのかと思うと泣けてくる。こんなんじゃモテるわけがないじゃないか……! しかし嘆いてばかりはいられない。今日こそはこの顔をどうにかしなければならないのだ。そう思いながら洗面台の下の収納スペースを開ける。そこには多種多様な化粧水や美容液などが並んでいるのだが、俺はその中からとある一本を手に取った。
それは『男の美肌パック』という名前の商品である。中身を取り出してみると、なんとも言えない気持ちの悪いものだった。お世辞にも美しいとは言えない顔の形をした男が、これまた美しくもない袋に入っているのだ。
しかしそんなことは一切気にしない。なぜならこの男は、自分の容姿に不満を持ったことなど一度たりともなかったからだ。そもそも男は自分がイケメンだと自覚していたし、それ故に周りの人間に対して優越感に浸っていた。だからこそ今目の前にあるものがどれほど素晴らしいものなのかを理解できると思っていた。
「よし! 早速使ってみよう!」
そう言って男は洗面所へと向かった。
まず最初に顔を洗い、それからパックを開封して顔に貼り付けた。しばらくそのままの状態で待機していると、次第に肌に変化が現れた。
「うおっ!?」
思わず声を上げてしまった。それほどまでに劇的な変化であった。パックをした部分からまるで植物のようにツルが伸び始めたのだ。
「マジかよ……」
男は驚きながらもその様子をじっと見つめていた。やがて伸びたツルの先端が五つに枝分かれしていき、それぞれ先端部分が丸くなっていった