私
の名前はマリア=ナイトメア。今から100年前くらいに生まれた人造人間よ。
今は西暦2000年代。つまり、未来から来たってことね! この時代ではロボット技術が発達していて、人間とほとんど変わらないアンドロイドがたくさん働いているわ。
私が造られた理由は簡単。お父様とお母様に愛されるためよ。だって、私は二人の子どもだから。
でも、二人は私のことを愛してくれなかった……。
それはなぜかというと、二人が好きなものは、人間の男性と女性同士の組み合わせだったからだ。
二人はお互いを愛していたけれど、結婚することができなかった。なぜなら、二人とも同性愛者で女しか好きになれなかったから。
それで、仕方なく私たちは造られたのだ。もちろん、私は望まれた存在ではなかった。ただのお人形さんでしかなかった。
ある日のこと、両親は私を置いてどこかへ行ってしまった。おそらく、二人は二人で幸せになる道を選んだんだと思う。もしくは、新しい家族を見つけたのかしら。
いずれにせよ、私は捨てられたのだ。両親の顔すら知らない。今さら、何を恨めば良いのか……。
「お前はもう用済みだ……」
そんな言葉と共に突き飛ばされた。その日からずっと独りきりだ。
「……」
誰もいない部屋で黙々と勉強をする日々が続く中、突然扉が開いた。現れた人物は、この家の主人の娘らしい。
「ねぇ、あんたが噂の新しい使用人?」
「はい」
「ふーん……」
「…………」
「じゃあ、あの子はもういないんだね」
「……え?」
「この世界にはさ、いないんだよ」
「どういうことですか?」
「彼女は君の知っている彼女じゃないって事だよ」
「それは……つまり……」
「うん、死んだよ」
「そうですよね……」
「あれ?意外と冷静だね」
「だって……」
「君は僕を信じていないんじゃなかったかな?」
「信じています」
「どうしてそんなに簡単に信じられるのか不思議だなぁ」
「貴方は嘘をつくような人ではありませんから」
「君にとって僕はどんな存在なのかな」
「大切な友人です」
「そっか」
「はい、だから私は貴方の言葉を信じます」
「ありがとう」
「お礼を言う必要なんてありません」
「それでも言いたかったんだよ」
「そうなんですか……」
「そうだよ」
「それでは仕方がないですね」
「うん、仕方がないことなんだよね」
「ところで……今更な質問なのですが……」
「なんだい?」
「貴女の名前は何と言うのでしょうか?」
「ああ、まだ言っていなかったっけ?」
「はい、聞いていますよ! この子達には罪はないんですから!」
そう言って、子供達を連れて行こうとする母親を引き留めた。
「じゃあ、その子達は!?」
「……仕方がないでしょう?」
「そんな……」
彼女は肩を落として去って行った。
私は溜め息をつくと、目の前にいる少年を見た。
「大丈夫だよ。きっとまた会えるさ」
「本当ですか?」
「ああ、約束しよう」
「ありがとうございます」
少年は涙を拭いて笑った。
「お姉ちゃん。僕ね、お姉ちゃんみたいな人になりたいんだ」
「どうしてだい?」
「だって凄く優しいもん。それに何でも知ってるし」
「ふむ。そうだなぁ」
「うん。だからね、いつか困っている人がいたら助けられるようになりたいの」
少年は真っ直ぐに私を見て言った。
「分かった。君が大きくなっても忘れなかったら教えてくれないか? 私が誰なのかを」
「えー? お姉さんはお姉さんじゃないの?」
「ハハッ。そうだな。でもその時が来たら分かるはずだ。私の名は──」
夢を見る。
あの日の思い出。
もう二度と戻らない日々。
「──ルチア、起きなさい。朝ですよ」
「ん~? まだ眠いよぉ。もう少しだけ寝かせてくれぇ……」
「だめ! もう朝だよ!! はやく起きないと遅刻しちゃう!!」
「むぅ……あと五分だけぇ」
「あーもうダメだってばぁ!!!」
「うわああ!?」
俺はベッドから引きずり降ろされた。
「ほら早く準備して! 朝ご飯できてるんだからはやく!」
俺の妹、桜坂雪菜は今日も元気いっぱいだった。
***
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