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「これからどうする? この小屋は借り物で……治療完了までって医者との約束でね。そろそろ出なきゃ行けないんだ」
「大丈夫です。明日、第二勇者のセクンドス様が魔王を倒されます」
なぜ、と聞こうとすると理解した。
そうか『神託』か。
フルクトゥアトは話を続けた。
「それから直ぐに『EXダンジョン』が出現すると思います。だから、そのダンジョンへ向かいましょう。先に中へ入った者が所有権を得られ、ずっと専用ダンジョンに出来るんですよ」
「マジかよ。ていうか、やっぱり魔王は倒はされるんだな。俺が倒したかったけど、ギルドから追放されちまったしな。今頃、第二勇者とその一行は魔王城って所かな」
「ええ、既に魔王城の手前と神託がありました。ですので、こちらは『EXダンジョン』の出現ポイントへ急ぎましょう」
魔王打倒後、すぐに所有権を得るって寸法か。いいね、ヤツ等が世界を平和にしてくれる一方で、俺は『EXダンジョン』を掻っ攫う。
別にいいだろう。
勇者のポジションをくれてやったというか、奪われたしな。ヤツ等はこれから英雄として崇められ、名誉とか莫大な富を得られるんだ。その引き換えとすれば、安いものさ。
「よし、フルクトゥアト。明日なんだよな。なら早朝、そのEXダンジョンの出現ポイントへ向かおう。今日までは丁度小屋も使えるし」
「分かりました。それと……わたしの事は『フルク』と気軽にお呼びください」
「ああ、フルク。これからも宜しくな」
フルクトゥアト。
彼女は銀髪でアクアマリンの瞳をしていた。
綺麗で豪華な礼服に身を包み、スタイルも抜群。これほどの女の子が教会にずっと閉じ込められていたらしい。
けれど、神託が運命を変えた。
「神託……か」
俺は外に出ていた。
夜空に広がる星雲を眺め、今後のプランを練っていた。
最強スキルと思われる【レベル投げ】……今まで俺は勇者として剣技を極め、剣スキル一筋で頑張って来たけど、今は別次元のスキルを習得した。
この力と運があれば、圧倒的だ。
ちょっと投げただけで大爆発だった。
「この力でダンジョンを攻略しまくって……あの第二勇者にギャフンと言わせてやれそうだな。それと俺を裏切り、棄てやがったルードス。ヤツを絶対に許さん」
ルードスには、ボコボコされた恨みがある。
ヤツのせいで死にかけた。
地獄のような苦痛を味わい、今はなんとか村の小屋暮らし。ここから成り上がってやる……。
「お前たちの捨てた勇者は、確かに勇者ではなかったよ。いいさ、俺はダンジョン攻略の鬼となる……」
星に向かって誓っていれば、眠っていたはずのフルクが扉から顔を覗かせた。
「アウルム・キルクルスさん?」
「ああ……俺の事はアウルムでいいよ」
「……アウルムさん」
なんだか照れくさそうに俺の名を呼ぶ。
「うん」
「ダンジョン攻略頑張りましょうね」
「ああ……頑張ろう」
フルクは「おやすみです」と挨拶して小屋へ戻った。俺は小屋の前にあるベンチに横になった。
――逆襲開始だ。