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「ふ ぃ〜〜…」
3時間程前まで何冊か積まれていたファイルを片付ける。
思いっきり伸びをして、他人に聞かれてしまえば羞恥してしまう抜けた声で落ち着く。
窓の先はすでに真っ暗で。窓のこちら側は周りを見渡しても人はおらず、静かな空気が頬を撫でた。
とっくのとうに定時は過ぎている。
急いで荷物をまとめ、電気を消し、早足で帰路につく。
「さっむ!!」
建物の外に出れば、冷たい空気が肺を満たす。吐く息は白く染まり周りの空気に溶けていく。
「早く帰ろ…」
少し早足になる。街中はイルミネーションでキラキラと普段よりも更に光っており、明るいミュージックに行き交う人々で溢れている。
「もうクリスマスかあ…」
もう12月も後半に差し掛かる。
月末なのだ。仕事が大忙しの時期なため、みこはクリスマスなんてイベントを楽しんでいる暇はない。
「…社畜だなみこ」
ふと、視線をあげるとそこにはモデルさんの広告だろうか。一瞬にして目を奪われてしまうほど綺麗で美人で可愛い女性がどーんと大きく貼られている。
白くて上品な衣装に身を纏い、サラサラな青髪が映える。そして、輝く星みたいな笑顔。
あれ…みここの顔どこかで……
『あの』
「ひゃいっ!?」
『写真、撮ってあげましょうか?』
突然声をかけられてしまったせいで思わず変な返事を返してしまう。
モデルさんに目を奪われていたから気づかなかったが広告の周りには、足を止め写真を撮る者、可愛いと騒ぐ者、見つめる者…沢山の人がそのモデルに魅了されていた。
だからみこファンだと思われたのか…寒い時期の遅い時間にこんなにもの大人数が集まるとは、とても人気なのだろう。
社畜のみこはテレビもSNSも最近は触れていないから名前も分からないけど……
『無視?』
「あ、すみませ…えッ」
視線を声の主に向ければ、そこに居たのは、
今さっきまで眺めてた顔。
広告と隣の人の顔を見比べる。完全一致。
そして思い出す。
この顔は、この声は。
「す、すいちゃん…っ」
『久しぶりだね?みこち』