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第一話
「お兄ちゃんー!起きてー!遅刻しちゃうよー!」
窓から眩しい光が差し込むとともに妹のクララの声が聞こえた。
「ああ、もう起きたよ。」
体を起こしながら答えた。俺は街の工場で働くロベルト。毎日休みなく銃や防具などの戦争のための道具を作っている。妹のクララは俺の職場の近くの製糸工場で働いている。行きと帰りに同じ道を通るため、いつも一緒に行っている。珍しく今日は少し起きるのが遅くなってしまったらしい。
「お兄ちゃんいっつも私より先に起きてるのに今日は珍しいね。」
いつも仕事は大変だが最近では特に働き詰めで帰りが遅くなり寝る時間も遅くなってしまったせいだろう。国力強化のため、戦争に勝つため、俺たち下級階層の人たちは奴隷のように働かされる。負け戦も増え生活は苦しいままだ。
「じゃあそろそろ仕事に行こうか。」
俺たちは家を出た。
「クララ、仕事には慣れてきたか?」
俺はクララに聞いた。クララは15歳でまだまだ子供だが俺ばかりに大変な思いをさせるわけにはいかないと言い生活のために就職したばかりだ。俺は幼い頃に親を亡くし、たった1人の妹を守るため町工場で働く事にした。稼ぎも少ないが妹のためならと身を粉にして働いた。それを見兼ねたクララは俺のために自分も働くも言い出した。好奇心が強いクララのことだからきっと反対しても無駄だろうし、本人の意思を尊重しそれを許可した。
「うん!だいぶ慣れてきたよ!先輩達みんな優しくしてくれるし同い年の子もいたんだ!楽しくやれそうだよ!」
「そうか、それならよかったよ。」
「じゃ、また帰りにね!」
妹を職場まで送り、俺も工場へ向かった。そういえばさっき大きな荷物を持った人を数人見かけた。どの人も荷物を布で覆っていて何を持っているのかはわからなかった。引っ越しなのだろうか。ここら辺の貧民街で引っ越しなんて滅多に目にしないためあれこれ考えながら歩いているうちに工場に着いてしまった。
「よおロベルト。今日も男前だなー」
職場の先輩が背後から俺の肩に腕を回してきながら言った。
「おはようございます先輩。毎日毎日やめてくださいよー、そこまでじゃないですから。」
少し困ったように言った。
「とか言って〜、どうせ女たちからモテモテなんだろ〜?」
「はははぁ、まぁぼちぼちですね、、、」
鉄や火薬の匂いが鼻をついた。この工場は戦争で使う銃や手榴弾などを作るところだ。力仕事が多いため町中の男たちが安く雇われている国の管理下の工場だ。モテモテだろとか言われても出会いなんてこれっぽっちもないし、そんな時間がないくらいに働かされている。
「じゃあ着替えてきますね。」
「おう!」
適当にその場をかわして面倒な先輩と別れた。
「はぁ、今日も何も変わらないな。」
俺は毎日同じ日々に退屈していた。かといって遊びに使えるようなお金も時間もない。クララも働きに出てくれてるとはいえ生活できるギリギリの給料しかもらえない。俺はいつも通り仕事をこなした。