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洋平の言葉に、一気に荒元と松田の表情が明るくなった
「ラビット・コインは、日本の紙の紙幣金融システムとは全く異なる、希望の世界電子通貨だ!」
「そうだよ!ラビットコインは日本の紙の紙幣の価値ではない、デジタル通貨なんだ!
このデジタル通貨は日本国家に依存せずに、「ブロックチェーン量子システム」を用いて、世界中のインターネット上で、やりとりができる正真正銘のお金だ」
荒元の話を聞きながら、洋平は上昇し続けている、チャートが映し出された大型モニターをじっと見つめて言った
「今まで銀行に紙の紙幣を預けていても、金利は無くなり、知らない間に使われているだろ?実際銀行には金が無いんだ、だから僕達の預金を全額引き出そうとしても一日の限度額がある」
先日銀行窓口で500万を降ろそうとした時に、何に使うんだと行員にしつこく聞かれ、挙句の果てにその日の引き出し限度額200万しか降ろせなくて・・・窓口でひと悶着を起こしたことを洋平は思い出した
「だからこそ・・・僕達のやってることは貴重だよ、不透明な紙の紙幣価値を終わらせ、デジタル通貨が紙幣や小銭の代わりに、新通貨として認定されれば、銀行を介することなく僕達の金が守れるんだ」
荒元と松田がブンブン首を縦に振った
「従来のクレジットカードのように、高い決算手数料をいつの間にか抜かれたりしない、ATMで手数料もかからない、そもそも紙幣じゃないので動かす時に手数料なんか発生しないし、デジタル通貨は税収の対象でもないしね」
松田が得意げに鼻を膨らませて言う
ふふん♪「うまいこと財務省の裏をかいてやりましたよ!デジタル通貨を銀行で現金に変えた瞬間に、半分以上の税金が発生するシステムなんてくそくらえだ」
うんうんと荒元も胸の前で腕を組んで言う
「紙の現金に変えた瞬間に税金でとられるなら、現金に変えなけりゃいい!」
「国民は公共料金の支払い、買い物などを、このラビットコインで支払えばいいんだ。この通貨は、デジタル網膜認証技術を搭載している、最新テクノロジーで僕達の保有資産を、それこそ親でも、誰も悪用出来ない方法を編み出した」
ウンウンと松田も嬉しそうに言う
そこで荒元が少し俯いて一指しゆびと親指で顎を挟む
「でも・・・少し気になるんですけど、紙幣に慣れているお年寄りなどは・・・この新しいシステムを受け入れてもらえるでしょうか・・・」
洋平がその件は想定内だとばかりに言う
「お年寄りでも電子決済はわかるだろう?量子ブロックチェーン(QFSカード)を発行するつもりだ!決算会社との連携はもう取れているよ!どこでもカードを見せるだけで買い物ができるし、通帳記入もいらないんだ。スマホを見れば自分の金の流れがわかる」
松田の両手はさっきから洋平の椅子の背を握りしめていた
嬉しさに今は部屋の周りをウロウロしている、隣でフム・・・と考えている荒元に洋平が言う
「お年寄りにはシステムがわからなくても、「便利で税がかからない」ということさえ分かってもらえばいいよ」
「頭では分からないだろうけど、システムが生活に馴染んで便利だと肌で感じられるようになれば、みんな喜んでくれるよ!財布など持たずにカード一枚で出かけられるし、これでずっと国から自動搾取される債務奴隷システムは終わりを告げる」
「来年からPAmazonでデジタル通貨の支払いOKになりますよね」
「仮想通貨国家のオランダは公共料金を仮想通貨で
払えますもんね」
「アメリカもインドもこれから参戦し出すよ」
「世界に後から遅れて着いてくるのが日本さ、そこで発祥は日本だったと初めて気づくのさ」
「これから仮想通貨の販売サイトが増えていくよ!そもそも現金を動かさないから、消費税がかからないし、手数料もかからない!ラビットコインで支払えばいいんだ」
「ラビットコインは、国が定めた紙幣奴隷制度から国民が解放されるんだ」
洋平は近い未来人々が幸せに暮らす様子を想像して胸を膨らませた
「これから早急に、このデジタル通貨が世界的にメジャーになるよ。数年後には人類が紙幣でやりとりしていたなんて、誰も信じられなくなるよ、これで不透明な富の流れを防げる」
イエィ!と松田が飛び上がった、荒元もワハハと笑う
「ざまみろ!すべての銀行はなくなる、すべての資産を透明にし、金を預けなくても自分達のツールで管理できるんだ 」
「銀行と手数料と税金が無くなりますね!」
「やったぞーーーーーー」
三人はワイワイと肩を組んで笑いながらピョンピョン跳ねて回った
僕達はやり遂げたんだ!新しい貨幣価値の世界がここから始まるんだ!
三人の笑顔は本当に幸せそうに輝いた
・:.。.・:.。.
【1年後】
「なん・・だって・・・? 」
洋平は力なく声に出した、ラビットコインを誕生させてから一年・・・
今や洋平達の開発した仮想通貨「ラビットコイン」は、世界190カ国で取引をされ、「量子金融システム」を世界共通の通貨として成長していた
ラビットコインのおかげで海外の人々は、紙の現金紙幣よりも、電子通貨のラビットコインが手数料もなく、手軽に資金移動ができるという観点から
海外でラビットコインのムーブメントに火が点き、その価値は上がり、世界中の資金移動の、40%を移行するようになっていた
その背景には長年によって壮大なプランを立てて、厳密に実行していた洋平達の血の滲む努力があった
全てが順調だと思っていた
それなのに・・・・・
洋平は自分が立ち上げた会社「ラビットコイン・カンパニー」の大型モニターの前に立ち尽くしていた
大きなロビーに三大設置された、仮想通貨取引所のスクリーンに映し出されるチャート表に、彼の目は釘付けになっていた
汗ばんだ手・・・ポケットの中のスマートフォンを握りしめる、心臓の鼓動が耳に響く
ラビットコインの価格はここ三日で信じられないほどの急落が起こっていた
どうして・・・どうして?・・・
彼が全財産と人生を投じた、ラビットコインの通貨価格表が赤く無情に点滅している
今では画面上のチャートは、まるで断崖絶壁を滑り落ちるかのように急降下を続けていた
最初は小さな下落だと高を括っていた、洋平は深呼吸をし、自分に言い聞かせた
「大丈夫、すぐに戻る・・・絶対大丈夫・・・」
しかし、その希望は儚くも崩れ去っていく
数字が次々と下がっていく
-5%・・・-10%・・・-15%・・・・
洋平の顔から血の気が引いていく、周りの喧騒が遠のいていく
いまでは画面上のチャートは、まるで断崖絶壁を滑り落ちるかのように、急降下を続けている
「なぜだ・・・なぜなんだ!」
「わからない・・・・」
「こんな急落今まで見たことない」
―どういうことだ―
心の中で叫ぶ、昨日まで描いていた豪華な未来図が目の前で砕け散っていく
そして・・・恐れたいたことが起こった
ついに―ストップ安―
「通貨リセット・・・・」
「俺達のラビットコインが・・・」
洋平の膝から力が抜け、その場にへたり込んだ
頭の中は真っ白になり、耳鳴りがする
モニターの隅には、ニュース速報が次々と流れていく
―ラビットコイン、史上最大の暴落―
―仮想通貨市場に激震―
―本日投資家達がパニック売りに走った結果
通貨リセット―
それぞれの文字が、洋平の心に突き刺さるようだった。
洋平の夢、希望、そして人生そのものが、あの冷たい数字とともに崩れ落ちていくようだった
大型モニター前のロビーの喧騒の中、洋平だけが静止した時間の中にいるようだった
目は虚ろにまだスクリーンを見つめている
しかし、もはやそこに映るものは、洋平達の敗北を示す赤い数字だけだった、洋平の人生だけが、永遠に止まってしまったかのように
訳が分からない、彼は一言だけ呟いた
「何が起こっているんだ・・・」
洋平の呟きは、誰にも届かず、彼の周りで、世界は変わらず回り続けていた