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夜。
薄暗い部屋。
ベッドの横に座るエリオットは、静かにクールキッドの寝顔を見ている。
規則正しい寝息。
無防備な顔。
その光景に、ふっと目を細める。
「……似てるな」
小さく呟く。
誰に、とは言わない。
⸻
耳の奥に、音が蘇る。
ノイズ混じりの声。
イヤホン越し。
『そっち、通った』
「見えてる」
『派手にやれよ』
「お前がな」
笑い合う。
画面越しの共犯。
ショー。
壊して、見せて、笑って。
“観客”を沸かせる。
その中心にいたのは——
いつも007n7…セブンだった。
「……主役はお前だったな」
ぽつり。
少しだけ懐かしむように。
⸻
次に思い出すのは、現実の音。
店のドアのベル。
ピザの匂い。
カウンター越しに見るセブン。
無愛想で、でもちゃんと来る常連。
「……近くにいたかった」
その一言が、本音だった。
パソコン越しじゃない。
声だけじゃない。
同じ空気の中にいたかった。
だから働いた。
理由なんて、単純だ。
⸻
(ちっちゃかったな)
記憶が浮かぶ。
小さな手。
泣き声。
ミルクの匂い。
セブンが不器用に抱いてた姿。
(あの頃から、もう“違った”)
ただの子どもじゃなかった。
でも。
それでも。
(普通に育ってほしいとも、思ってた)
ほんの少しだけ。
本当に、ほんの少し。
そんな感情があった。
エリオットは、目を細める。
(……でも、無理だろ)
この世界で。
この才能で。
“普通”なんて。
つまらない。
「セブンは、閉じ込める」
「守るって言ってな」
指先で、そっと髪を撫でる。
起こさないように。
丁寧に。
「でも、それじゃダメだ」
目が、少しだけ鋭くなる。
(もっと、上に行ける)
(もっと、見せられる)
「舞台に立たせないと」
「意味がない」
一拍。
静寂。
「……連絡、来なくなったな」
ぽつり。
セブンのことを思い出す。
あの頃は、毎日のように繋がってた。
でも。
クールキッドが来てから。
——切れた。
「まぁいい」
あっさりと。
でも、それは強がりじゃない。
「近くにはいられたしな」
実際に、そばにいた。
一緒に育てた。
泣いた時、あやした。
笑った時、見てた。
それは、事実。
誰にも否定できない。
⸻
エリオットの手が、止まる。
クールキッドの寝顔を、じっと見る。
「……閉じ込めちゃいけない」
静かに。
でも、確信を持って。
「主役にしないと」
その言葉は、
昔と同じ。
何も変わっていない。
むしろ——
より強くなっている。
「なぁ」
小さく呼びかける。
眠っている相手に。
「ちゃんと見せてやるよ」
目が、細くなる。
「お前がどれだけすごいか」
その視線の奥には、
優しさと、
執着と、
狂気が混ざっている。
⸻
(守るんじゃない)
(見せるんだ)
(全部)
静かに、笑う。
あの頃と同じ笑い方。
画面の向こうで、007n7と並んでいた時の。
「……またやろうぜ」
誰もいない空間に。
ぽつり。
「今度は、もっとデカい舞台で」
その視線の先には——
もう、“日常”はない。
ショーだけが、ある。
あめ猫
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