テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
部屋は、静かすぎた。
さっきまで、確かに“いた”はずの気配がない。
クールキッドの声も、
足音も、
笑いも。
全部、消えている。
「……」
セブンはソファに座ったまま、動けない。
手だけが、わずかに震えている。
(……やりすぎたか)
頭の奥で、言葉が浮かぶ。
遮断。
切断。
排除。
全部、“正しいはずの選択”。
なのに。
(……あんな顔、させるつもりじゃなかった)
クールキッドの目。
怯えと、拒絶。
あれは——
敵を見る目じゃない。
(俺を見てた)
胸が、鈍く痛む。
(自由を、奪ったのは——俺だ)
ぽつりと、理解が落ちる。
Noliじゃない。
干渉でもない。
(……俺が閉じ込めた)
拳を、強く握る。
記憶が浮かぶ。
⸻
小さな手。
まだ、指もまともに動かせなかった頃。
泣き声ばかりで、
何がしたいのかも分からなかった頃。
「……ったく」
ぎこちなく抱き上げた。
泣き止まない。
どうすればいいか分からない。
その横で——
「ほら、こう」
エリオットが、笑っていた。
慣れた手つきで、あやす。
ミルクの温度を確かめる。
背中を軽く叩く。
「……お前、なんでそんな慣れてんだよ」
軽く笑って。
「嫌いじゃないだけだ」
その言葉に、
少しだけ救われたのを覚えている。
⸻
(……あいつは、ずっと側にいた)
エリオットは。
Noliは。
あの頃から。
(気づけなかったのか)
いや。
違う。
(気づかなかった)
信じたかったから。
「……くそ」
低く、吐き出す。
でも。
それでも。
(あいつが、あいつだったとしても)
記憶は消えない。
クールキッドを抱いていた手。
笑っていた顔。
あれが全部嘘だったとは——
思えない。
だから余計に、厄介だ。
「……」
深く息を吐く。
視線が、落ちる。
空っぽの部屋。
(……でも)
思考が、切り替わる。
静かに。
確実に。
(だからって、渡すわけにはいかない)
拳が、止まる。
震えが、消える。
「……あいつは、壊す」
断言。
迷いはない。
ショー。
主役。
その言葉の意味を、セブンは知っている。
(あのやり方は)
一瞬の輝き。
そのために削る。
削り続ける。
最後には——
何も残らない。
(そんなの、認めない)
ゆっくりと立ち上がる。
足取りは、もう揺れていない。
(自由を奪ったかもしれない)
それは事実だ。
(でも)
目が、鋭くなる。
(壊させるくらいなら、奪う)
矛盾している。
でも、本心。
「……親、だからな」
小さく呟く。
誰に聞かせるでもなく。
(嫌われてもいい)
(恨まれてもいい)
(それでも——)
一瞬だけ、目を閉じる。
クールキッドの顔が浮かぶ。
泣き顔。
笑顔。
そして、さっきの拒絶。
胸が、痛む。
それでも。
(…守る)
静かに、確信する。
ドアを開ける。
「絶対に、壊させない」
それが、
父親としての覚悟。
あめ猫
3,650