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ミルヴェイユとケイエムとでデザインを詰め、広告の打ち合わせなども進めていく。 

ミルヴェイユでは今まであまり広告など打ったことはない。

季節毎のDMを顧客に送るくらいだ。


その辺りもお互いの会社の部署同士の交流があり、お互いに良い刺激になっている、という報告が美冬のところにも上がってきていた。


実際に商品が店頭に並ぶのは、S/S(スプリング・サマー)つまり、春夏物でということになった。


春夏物は早いものでは2月頃から店頭に並ぶことになり、広告関連は冬のセールが終わってすぐ、ということになる。


その間に情報を拡散させ、話題を作っていかなくてはいけない。

デザイン部ではコラボ商品の最終的な打ち合わせに、夜も詰めていると聞いている。


他の部署も同様だ。

遅くまで残ってやってくれているようだった。

申し訳ないと思いながらも、一生懸命な社員達をありがたいと美冬は感じる。


美冬は特に業務が増えてしまっている販促部とデザイン部のために、その月の月末、ケータリングを頼むことにした。


美冬も企画が進行するに伴って、決裁が格段に増えたし、仕事はそれだけではない。

残って仕事をしていると内線が鳴ったのだ。


「はい?」

『美冬?』

電話の相手は石丸諒である。

デザイン部に手配したケータリングのお礼の件だろうと美冬は見当をつけていた。


『差し入れありがとう。皆が社長も一緒に、と言うんで電話した。まだいるんだな』

「うん。いるよ」

『じゃあ、軽く食べに来ないか?』


そんな風に言われて、美冬は嬉しくなった。

「ん。じゃあ行こうかな」


社長になって初めて分かることは決裁にしても判断にしても社長というのはその責任が大きく、孤独なことも多いということだ。


悩みはあっても社員に打ち明けることで不安を感じさせてしまうかもしれないと思うと、相談できないこともある。


その点槙野は良いパートナーでもあって、美冬が打ち明けた悩みにも親身になって回答してくれたりするのだ。


『大したことじゃない。何でも言えよ?』

そんな風に言って頭を撫でられてしまうと、正直カッコいいっ! と思ったりもしたりしなかったりするのだが、照れてしまってなかなか本人には言えない。


最初のイメージがあるせいか、なかなか素直にはなれないのだけれど、槙野を本当に頼りにしているし頼りがいがあるところも実を言えば大好きだ。


デザイン部に美冬が顔を出すと、スタッフがみんなわぁっ! と喜ぶ。

「社長! ご馳走様です!」

「頑張れる! モチベーション上がります!」


そこには共同開発しているエス・ケイ・アールのメンバーもいた。

「あら、ミーティングの日だった? 足りたかしら?」


ケータリングは少し多めには頼んだけれど、他にもメンバーがいたのなら充分に行き渡ったかが心配になった美冬である。


足りたかどうかと尋ねた美冬に一人の女性が頭を下げる。

「大丈夫です。すみません。急にお邪魔したのに」


──ん? どなたかしら?


「えっと……木崎綾奈きさきあやなです」

美冬は二度見した。不躾ぶしつけかと思ったけど、じっと見つめてしまった。


ふっくらとしていたはずなのに、その面影もなく美冬の目の前にいるのはすらりとしている和風美人さんだ。


綾奈はそんな美冬に照れた様子を見せる。

「そんなに見ないで頂きたいわ……恥ずかしい」

「綾奈さん、失礼ですけど、お痩せになった?」


こくりと綾奈は頷いた。

「お恥ずかしい話なんですけど、今までは役員と言っても名目だけだったんです。けど椿さんを見ていて、私も頑張りたいって思ったんです。現場で皆と動いていたら、気づいたら……あと、あの……素敵だと思う方が……」


「お仕事と恋かぁ……充実しているから綺麗になったんですね」

「はい……」

そう言った綾奈の視線の先には石丸がいる。


──あら?

これまた困難な相手だ。


石丸は本当に綺麗だ。

そして、とても優しい。

美冬に対しても優しいけれど、それは美冬だからということではないのだ。

誰に対しても等しく優しいのである。


『誰かと付き合ったりしないの?』


アプローチは引きも切らない石丸なのだから、美冬もそう聞いたことはある。

それでも、あの優美な顔でにこりと笑って、いい人がいたらね、とか言ってはぐらかされてしまっていたのだ。


あまりにもそういう気配がないものだから、ものすごくストレートに『ゲイなの?』と聞いたこともある。


さすがにその時は美冬が謝りたくなるレベルの冷たい視線を飛ばされた。

顔立ちが整っているだけに、冷たい顔をされると凍りつきそうなくらい怖い。


『仕事が好きなの!』とアッサリ言われたものだが。


付き合いは長いけれど、どんなパートナーが好みなのかプライベートに関してはあまり知らないことに美冬は驚いた。

それでも美冬が社長になった時からずっと見守ってくれている人だ。

彼にも幸せになってほしいという気持ちはもちろんある。


そうかぁ……諒ね。


「そうだわ、あとで社長室にお邪魔しようと思っていたんですけど、ここでお会いできて良かった。プレゼントがありますの」


両手を胸の前できゅっと合わせて綾奈は笑顔になっている。


「ご結婚のお祝いがまだでしたもの」

「気にしなくていいんですよ、そんなの」


ちょっと待ってらして? と言った綾奈は自分の荷物から紙袋を取り出して、美冬に渡した。

契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした!

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