テラーノベル
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僕には、2人のお父さんがいる。
一人目のお父さんは僕の本当のお父さん。
僕が5歳になるまで一緒にいた。僕の6歳の誕生日プレゼントを買いに行くためにお母さんと一緒に出掛けていた時、飲酒運転に巻き込まれて死んでしまった。
お父さんが死んでから僕は嫌というほど実感することになる。
僕の家族というコミュニティはお父さんがいることで保たれていて、お父さんという柱一つで成り立っていたハリボテ同然の家族はこうも簡単に壊れてしまうということを。
お父さんが死にお母さんはしばらく仕事で忙しくなった。
お通夜、葬式、それが終われば遺品の整理、親族回りの挨拶、父の稼ぎがなくなり経済面でも困ることが増えてきた。
父が死んでから1か月は「私があの子を食べさせなきゃ」と口癖のように毎日言っていた。
しかし人間はそう丈夫にできていない。まだ6歳の子供を女手一つで育てながらまだ慣れない職場で人間関係にも気を使い、悩みを相談できる人間はこの世にもういない。
父が亡くなり3か月も経ったころ、母は僕に一言つぶやく。
「あんたが、死ねばよかったのに」
言い終わるがはやく母の顔にはまだ6歳の僕には理解しがたい顔をしていた。
後悔、怒り、悲しみ、失望、この世の負の感情という感情を全て詰め込んでいたあの顔は母自身に向けたものなのか僕に向けられたものなのかは定かではないが、僕の心にトラウマを植え付けるには十分だった。
だが今思い返してみれば、まだあの頃の母は僕に愛情を持っていたのかもしれない。
少なくとも、あの頃までは、
母が僕にあの言葉を浴びせてから、母は僕と一切会話をしなくなった。
一度言葉にしたことで自分の中にある感情に気づいてしまったのだろう。
最低限の食費を机に置いて一週間以上帰ってこないこともざらだった。
小学校でできる友達は全員僕に話しかけてこなかった。風呂に入らない上に服も小汚い。そんな理由で僕はたびたび嫌がらせを受けていた。
そんな生活が二年も続いたころだろうか。
お母さんが男をつれて家に帰ってきた。
男はお母さんとなにやら楽しそうに話している。
新しいお父さんだろうか、昔のお父さんの方が好きだが彼が新しいお父さんになってくれれば僕の家は昔のように戻るのかもしれない。僕の心に少しの希望が浮かんだ。
が、僕に待っていたのはそんな現実ではなかった。
お母さんは男を僕の前に連れてきて僕ではなくその男に話しかけた。
「どうですか?今は少し汚いですが、お風呂に入れておめかしすればそこそこになるかと。」
「あぁ、お前似でずいぶんかわいらしい子じゃないか。これなら少し仕込めば商品として使えそうだ。」
「何円で買い取ってくれますか!?」
「そうだな、とりあえず50万。それ以降はこいつの頑張り次第だ」
僕は久しぶりにお母さんの笑顔を見た。が、それは僕の好きな優しい笑顔ではなかった。
男はすぐにお母さんに茶封筒を渡し、僕の手をつかみ家から引っ張り出す。
抵抗むなしく外に止まっている男の車に乗せられた。
窓から見える景観にお母さんはいなかった。
男の車で向かった場所は僕の家のリビングほどの大きさの部屋に大きなベッドが一つ置いてあるだけの部屋だった。
そこで僕はお尻にいろいろなものを入れられた。
指、バイブ、おじさんの陰部、アナルビーンズ、時には尿道に変なものを入れられることもあったし咥えさせられることもあった。
学校から帰り、あの部屋に行き、おじさんの相手をさせられ、夜遅くになると帰る。
帰るとお母さんが僕からお金を受け取りそのお金でどこかに出かける。
僕が中学を卒業した年の夏、お母さんがまた男を連れてきた。
以前とは違う。黒髪の優しそうな見た目の男だ。
男の後ろには一人の男の子がいた。
僕と同じぐらいか少し上の男の子。
お父さんと同じ優しそうな見た目をしている。
髪はひまわりのようなきれいな黄色だ。
彼は僕と目が合うと少し微笑んで会釈する。
僕はその会釈を無視してキッチンに向かう。
客人が来たときはお茶を出さねば殴られるのだ。冷蔵庫から麦茶をとりだすと後ろに男の子が立っていた。
「あの、僕も手伝います。」
「え、いや、お客さんに手伝わせたら僕が怒られちゃうから。」
「こらるぅと、勝手に人のキッチンに入ったらだめだろう?」
「あ、ごめんなさい、手伝おうかと思って」
男の人が少年にそういってお母さんと一緒に客間に入っていった。
お茶を入れ終わり客間に行くとお母さんが僕に優しく話しかけてきた。
「ありがとうころん、ほら、ここにおいで」
「、、、はい」
「ころん、この方は再婚相手のまことさん」
「君がころんくんか、あけみから話は聞いてるよ、お父さんがなくなって大変なお母さんを助けるために働いてるんだって?」
この人は、何を言っているんだ。
僕がお母さんを見るとお母さんは僕を一瞥して楽しそうに声を出す。
「そうなのー!!この子は本当にいい子でね、情けない私のためにいつも働いてお金を入れてくれてるのよー!!」
僕はここでようやく気付いた。こいつはお母さんの再婚相手だ。僕はこいつらの中でお母さんのために働いてるいい子にされてるのだということも気づいた。
「今まであけみを支えてくれてありがとう。ここからは僕があけみを支えていくから、君はしっかり子供として生活を楽しみなさい。」
そんな感じで数時間はなしてこの日は解散した。
解散したとたん、お母さんはいつも通りのお母さんに戻り僕はあの部屋にまた連れていかれた。
結局、この生活は変わらない。変な希望を与えてくるな。
それから一週間後、少年と男も一緒に暮らすことになった。
男は海上自衛官らしく、滅多に家に帰ってくることはないそう。先日お母さんが病死してからは一人息子のために長期休暇をもらっていたらしい。
その長期休暇も今日で最後らしく次に帰ってくるのは年末だとか。
その日は一日優しかったお母さんに戻ってみたみたいで楽しかった。あの部屋に行くこともなかった。ずっと、こんな生活が続けばよかったのに
次の日になると男は朝から仕事に行った。
お母さんはるぅとくんには優しかった。お母さんとるぅと君の会話は昔の僕の家族を見ているようで心が苦しかった。
るぅと君が学校に行くとまたいつものお母さんに戻る。朝の食事がまずかっただのるぅとくんにもっと愛想よくしろだの言って殴られる。一通り殴られたら食事の買い出し。家の家事。中学校卒業してからは学校がないので午後からあの部屋に向かう。
帰ってきたらお母さんにお金を渡し3人分の夕食をつくる。
生活を一か月もしていたころ
また一日が終わり寝ようと自室に入る直前るぅと君が話しかけてきた。
るぅとside
僕の家は3人家族の幸せな家族だ。
父は海上自衛隊だから滅多に家には帰ってこないけどお金には困ってないし帰ってきたときはしっかり遊んでもらえる。お母さんもとてもやさしく僕は生活を不満に思ったことはない。
そんな幸せな生活は突然崩れることになる。
高校一年生の秋ごろお母さんが病気にかかった。
最初は疲れがでて熱を出しただけだろうと思った。
一週間熱を出し続けさすがにおかしいと思い救急車を呼び、お母さんは病院に運ばれていった。
その3日後、お母さんは病院で死んだ。
お母さんは救急車の中で容態は一変し一気に危ない状況になったそうだ。
なんとか延命しようと死力をつくしてもらったがお母さんが意識を取り戻すことはなかった。
お母さんが亡くなったとお父さんに連絡を入れて5日後にお父さんが帰ってきた。
お父さんは自分がお母さんの死に顔に会えなかったことに絶望していた。
「俺は、あいつが苦しんでいるときなにをしてたんだ!!」
「仕事なんかして!!金があってもあいつが生きていないと意味ないじゃないか!!」
僕はかける言葉が見当たらなかった。
初めて見るお父さんの荒れ狂った姿に困惑してつい涙が出てしまった。
荒れ狂いながらも部屋の前で自分の姿を見て泣いている息子をみてお父さんははっとした顔でこちらに歩いてきた。
「悪い。るぅと。お前もつらかったよな。父さん、また頑張るから。」
「お前のことも一人にできないししばらく仕事は休むよ」
お父さんは上司に事情を説明して長期休暇を取っていた。
僕たちはお母さんがいなくなった悲しみを忘れるかのように遊びに行った。
お母さんが生きている間に行った場所。お母さんが行きたいなぁと生前言っていた場所。
全く行ったことのない場所。
お母さんが生きている間のことを思い出すように、忘れるように、僕たちは楽しんだ。
学校から帰って家にいるとお父さんがいる生活は新鮮だった。
受験勉強を応援してくれて、学校ごとの相談にもよく乗ってくれた。
僕が高校受験を終えたころ、お父さんが申し訳なさそうにある話をし始めた。
「るぅと、俺、今好きな人ができたんだ。俺、そろそろお母さんを忘れて前に進もうと思うんだ。」
「その、お前には申し訳ないけど、再婚しようと思う。」
新しいお母さんができる。正直いい気はしなかったけど、僕のために弱いところを見せないように頑張ってくれたお父さんは幸せになるべきだと思ったからすんなり受け入れた。
「お前の意見に俺は従う、反対なら行ってくれ、お前が嫌だというならこの話はやめる」
「何言ってるんですか、もちろんokですよ。」
「ほ、本当か!?ありがとう!!今度お前にも紹介するよ!!本当にいい人なんだ!!」
週末、再婚相手の家に行くことになった。
お父さんを迎えに来た女の人はあけみさんというらしく年齢よりだいぶ若く見えるきれいな人だった。
あけみさんとお父さんが楽しそうに話しているのを聞きながらあけみさんの家に向かう。
「ころんもきっとまことさんのことを気に入るわ。」
一言そう言ってあけみさんが玄関を開けるとそこにはみすぼらしい一人の男の子がいた。
あけみさん似で女の子のようなきれいな顔立ちをいしている。がどこか違和感を覚えた。
顔の顔の綺麗さと服の綺麗さがアンバランスなのだ。
顔や髪はしっかりケアされているのだろう。とてもきれいだ。だが来ている服はとても貧相だ。
膝が隠れるほど丈が長いTシャツは首元がよつれ薄汚れている。
こんなにきれいなお母さんの子供が家でこんな服装をさせられるのだろうか。
そんな疑問を抱えて一週間後
一緒に暮らし始めて疑問は確信に変わる。この子は虐待されている。
高校にもかよっておらずあけみさんがころんくんに接する態度は冷たい。
お母さんのために働いていると言っていたが何で働いているのかも怪しい。
僕はお母さんが死んですぐのころお父さんのおかげで心が救われたことを思い出した。
僕があのこを助けないと。
僕は自室に戻ろうとしているころん君にできるだけ笑顔で明るく話しかけた。
「ころん君、少しお話しませんか?」
コメント
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うわ、これは辛い…読みながら心がぎゅーっとなったよ。特に「あんたが♡♡♡ばよかったのに」って母親の言葉、重すぎる。でも最後のるぅと君が「少しお話しませんか?」って話しかけるシーンは、暗闇に一筋の光が射したみたいで、すごく救われた気持ちになった。この続きが気になる…! 腐男子さん、重いテーマを丁寧に描いてくれてありがとう。