交流会の後、奨也は自分の術式について更なる研究と実験を繰り返していた。既に「物質の三態」には大きな進化を遂げていたが、彼はまだ満足していなかった。術式の限界を見定め、次なるステージへと進化させる必要があると感じていた。
「もっと、深いところまで突き詰めてみないと。」奨也は自室でハンドスピナーを回しながら、静かに呟いた。
彼の術式は、物質を「固体」「液体」「気体」と変化させるものであり、その範囲は広がってきていた。しかし、実戦で使うためにはさらに多くの柔軟性と、応用力が必要だ。奨也はそのことを十分に理解していた。
そこで、彼は術式の新たな段階へと進む決意を固めた。それは、物質の「状態」を変えるだけではなく、その「性質」をも操ることができるようになるという進化だった。
「気体や液体にするだけじゃ物足りない…その物質の性質そのものを変えれば、もっと強力になるはずだ。」奨也は目を輝かせ、思い切って実験を開始することにした。
奨也はまず、自身の術式の理論を見直した。物質の三態が変化する理由は、分子の構造にある。彼はその構造を意識し、微細な調整を施すことで物質を単なる「状態」ではなく、物理的な「性質」にまで影響を与えることを目指した。
「例えば、この液体の水を…不安定にして、爆発的なエネルギーを引き出せるようにできれば…」奨也は夢中で計算と考察を繰り返す。彼の頭の中で術式の変化が確信を持った形で描かれていった。
奨也が最初に試みたのは、普通の水を特殊な形で操作することだった。彼はハンドスピナーを回しながら、目の前にある水の状態を変化させていく。
「液体の水を、高速で分子の振動を調整して気化させると同時に、その熱を急激に上昇させる…」奨也は実験を繰り返し、遂にその成果を見せる。目の前の水が瞬時に気体に変わり、その気体の温度が爆発的に上昇し、周囲の空気が熱を帯びた。
「成功…だ!」奨也は喜びを隠しきれず、興奮した。これにより、物質を単なる状態変化させるだけでなく、その性質や特性、例えば熱や圧力、密度まで操れるようになったのだ。
次に奨也が挑戦したのは、異なる物質同士を反応させ、意図的にその相互作用を制御することだった。彼は手元にある鉄と水を取り出し、これを操作し始める。
「鉄と水を接触させることで、化学反応を引き起こす…それを意図的に制御して爆発的な力に転化させることができれば。」奨也は目を閉じ、集中しながら手を動かした。
すると、鉄と水が接触した瞬間、奨也の術式がその反応を制御し、二つの物質が暴力的なエネルギーを放出した。しかし、それは完全に奨也の意図通りであり、その力を完全に掌握することができた。
「これで、物質間の相互作用も自在に操れるようになった…」奨也は満足げに微笑んだ。物質を操る術式が、単なる操作の域を超えて、より強力で多様な戦術へと進化したのだ。
最終的に奨也が挑戦したのは、物質を操ることから一歩進んで、空間そのものを操作することだった。これは非常に高等な術式であり、非常に困難な挑戦だったが、奨也はそれを乗り越えようと決意した。
「物質の状態を変化させるだけではなく、この空間自体の構造を変えることができれば…戦局が一変する。」奨也は冷静に言葉を呟き、ハンドスピナーを握りしめながら、気合を入れて空間に向けて術式を発動させた。
すると、空間そのものが歪み、周囲の風景が微かに歪んだのが見えた。奨也はそれを見守りながら、成功の兆しを感じていた。
術式の進化に成功した奨也は、ますます強くなった。しかし、その力を持つことには新たな試練が待っていることを彼は知っていた。今後、東京本校の仲間たちや、さらなる強力な術師たちとの戦いが待っている。
「これで、ようやく本当の戦いが始まる。」奨也は一人、静かに前を見据えた。次のステップは、ただの戦闘ではない。彼自身の運命を変える、大きな戦いが待ち受けているのだ。
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