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それから月日が経って俺は高校3年生になった。
冬馬とは親友と言ってもいいほどに仲良くなっていた。
俺はそんな冬馬と図書委員に入った。そして今日は委員会の日。一人一人自己紹介をする。
そして、当番表が配られ、俺は当番表に目を向けた。
俺と同じ当番の人は1年生の真辺翔くん。
自己紹介してたけど、どの子だったか忘れちゃった。
そして、当番当日の昼休み。俺は図書室に向かった。真辺くんはまだ来てないみたいだ。
少し待つと、カウンターの中に男子生徒が慌てて入ってくる。
「すみません!」
すごい慌ててる。大丈夫って思わせてあげないと。
俺はそう思ってなるべく優しい笑顔で言う。
「そんなに急がなくて大丈夫だよ。ゆっくりで大丈夫だから。ね?」
真辺くんは俺を見て、じっと固まってしまった。
もしかして、笑顔なのが逆に圧になっちゃったかな。
「真辺くん?」
「…あ、すみません!えっと…」
まだ慌ててる。とりあえず落ち着かせないと。
「ここ、座って」
俺はそう言って横のイスをトントンと叩く。それを見て真辺くんは慌てて座った。
なんか、慌てん坊で可愛いな。
そう思って思わずふふっと笑みがこぼれる。
「真辺くんってなんか可愛いね」
なんて言ってみた。落ち着かせるのにもいいと思ったし。
そしたら真辺くんは。
「そうなんですよ。俺、可愛いんです」
って言って両頬に人差し指を添えた。
可愛いな。
素直にそう思って、俺は黙り込んでしまう。
「あっ、えっと…今のは何でもなくて!ほんと、忘れてください!」
なんて焦った様子で言うから、また俺は思わずふふっと笑ってしまった。
「なんで?可愛かったよ。真辺くん」
「…ありがとうございます」
真辺くんの頬が少し赤く染まる。もしかして、照れたのかな。可愛い。
「あれ。照れちゃったかな。やっぱり可愛いね」
「やめてくださいよ。そんなに褒められたら、俺でも照れちゃいます」
そう言う真辺くんの後ろからカウンターに向かって1人の生徒が歩いてくる。
せっかくだし、真辺くんに任せようかな。
「じゃあ、可愛い真辺くん。早速お仕事だよ」
俺がそう言って生徒の方を見ると、真辺くんも生徒を見る。
「返却お願いします」
「はい!」
いい返事だ。元気な子だな。
そう思っていると、真辺くんはやる事を終え、生徒に向かって言う。
「返却完了です!」
「ありがとうございました」
生徒はそう言って立ち去った。
「真辺くん、元気だね」
俺はついそう聞いてしまう。
「あ、いや…こんなに褒められるの久しぶりでテンション上がっちゃって…」
なんだそれ。可愛い。
「真辺くんは褒めるとテンションが上がるんだね」
「はい!上がります!委員長はテンション上がらないんですか?」
どうだったかな。
「どうだろう。最近別に褒められるようなことしてないからな…」
俺はそう言った後、考え込む。けれど、何も出てこない。
そんな俺に真辺くんは笑顔で言う。
「委員長の笑顔は人の心を穏やかにさせますね。それに、優しくて心がポカポカになります」
まだ会ったばかりなのに。俺の事、すごい見てくれてる。
それに、褒められるなんて久しぶりだ。
素直に嬉しくて、思わず笑みがこぼれる。
「本当?嬉しいな」
「委員長は素直に喜ぶタイプなんですね」
「そうみたいだね」
知らなかった俺の性格。真辺くんのお陰で自分の事を少し知れた。
次の日の昼休み。誰もカウンターに来なくてぼーっとしていると、横に座る真辺くんがカウンターの端から本を取った。
俺は何となく気になって真辺くんに聞く。
「なにそれ?」
「人来ない時暇じゃないですか。なんで、これ!」
そう言って真辺くんは本の表紙を俺に向ける。
その表紙を見て、俺は息を呑む。
「それ…」
俺が小学生の頃、虐められていた時によく読んでいた本。
「これ、知ってるんですか?」
「うん。昔から大好きで、何回も読んじゃうんだよね」
「分かります!俺も何回も読んでて、また読みたいな〜って思って持ってきたんです」
「おぉ〜。これ知ってる人初めて会った」
「俺もです!すげぇ嬉しいです」
なんだかすごく嬉しくて。真辺くんと仲良くなりたいと思った。真辺くんもそう思ったのか、俺の教室に来てくれるようになった。それからだんだん仲良くなって映画を一緒に観たりもして、お互いの呼び方も変わった。
そして月日が流れ、文化祭の時期になった。
翔くんは文化祭で開催される女装・男装コンテストに出るらしい。別に順位を決める訳じゃない、ただのショーみたいな感じだ。
そのコンテストできる服を一緒に買いに行く事になった。
親友だと言っていた春人くんじゃなくて、俺を誘ってくれたのがすごく嬉しかった。
その話になった時、嬉しくて文化祭を一緒に回らないか聞いたらOKしてくれて、当日は一緒に回る事になった。
そして、服を買いに行く日になる。
俺は先に集合場所について、翔くんを探していた。
すると、こっちの方に歩いてくる女性と目が合った。
関係ないと思った俺はサッと目を逸らす。
だが、その女性は俺の目の前で立ち止まり、俺の顔を覗き込んで来た。
「お兄さん、かっこいいですね」
なんだ、この子。逆ナンってやつかな。
可愛いとは思うけど、逆ナンとか面倒臭いし、この子に興味もない。
そう思って俺は1度合わせた目を逸らす。
「あの、聞いてます?お兄さんかっこいいですねって言ってるんですけど」
しつこい子だな。こういう子にはちょっとキツく言った方が引いたりするんだよね。
「逆ナンですか?悪いですけど、俺あなたに興味ないので、ごめんなさい」
冷たくしてそう言ったら、その子は聞き覚えのある声で言う。
「すみませんふざけました。俺です。翔です」
俺は目を見開く。この可愛い子が翔くん。
「嘘。翔くん?ごめんっ。知らない女の人かと思って…」
「いいんですよ!俺がふざけたのが悪いんで」
そう言う翔くんの全身を見る。今から服を選ぶのに、もう既にすごく可愛い。
「めっちゃ可愛い」
自然とそう口に出る。
「な、なんですか。さっきは興味無いとか言ってたくせに」
「翔くんなら話が別だし、俺はいつもの翔くんの方が可愛くて好きかな」
「そ、そうですか」
翔くんはそう言って手で自分の顔を仰ぐ。顔が赤い。どうしたんだろう。
「翔くん大丈夫?顔赤いけど」
「えっ。だ、大丈夫です!なんか、暑くて!」
「暑いの?なら…」
俺はカバンからペットボトルを取り出した。
「はい。これ。俺の飲みかけだけど飲む?」
俺は翔くんにペットボトルを差し出した。
「あっ…すみませんっ。ありがとうございます」
翔くんはペットボトルを受け取った後、慌てた様子でペットボトルの水を飲んだ。
けれど、水が変な所に入っちゃったのかコホコホと咳き込む。
「ちょっ、大丈夫?」
「すみませんほんと。ぜんっぜん大丈夫なんで!とりあえず行きましょう!ね!」
翔くんはそう言って慌てた様子で歩き出す。
ほんとこの子はどこまでも可愛いな。
そう思いながらも俺は翔くんについて行った。