テラーノベル
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なつが、笑わなくなった。怒ることも、嫌がることもせず、いるまが差し出す食事を摂り、言われるがままに横になる。その瞳は濁った硝子玉のように、何も映していない。
いるまはその姿を見て、初めて「自分の敗北」を悟った。
手に入れたかったのは、魂のない人形じゃない。自分に対して牙を剥き、生意気に笑い、熱い鼓動を刻んでいた「なつ」だったはずなのに。
「……なつ。……おい、こっち見ろよ」
いるまは、なつの前に膝をついた。いつもなら強引に顎を掴むところを、震える指先で、壊れ物を扱うようにそっと頬に触れる。
「……ごめん。俺、お前を閉じ込めすぎた。……お前が苦しんでるの、分かってて、自分の寂しさを優先したんだ」
なつは反応しない。ただ、ぼんやりといるまの喉元を見つめているだけだ。
いるまは決意したように、なつのポケットに、ずっと取り上げていたスマホと、家のスペアキーをねじ込んだ。
「……これ、返す。……どこへ行ってもいい。誰と会ってもいい。……GPSも、もう見ない。……だから、お願いだ、なつ。……俺を、拒絶してくれ。……俺を、殴ってくれよ……!!」
いるまはなつの膝に顔を埋めて、慟哭した。
支配することでしか愛せなかった男が、初めて「自由」を与えることで愛を証明しようとしている。
沈黙が流れる中、カサリ、となつの指が動いた。
ゆっくりと、本当にゆっくりと、なつの手がいるまの頭に乗せられる。
「……バカ……。……いまさら、……遅ぇよ……」
掠れた、小さな声。
でも、そこには確かな「感情」が宿っていた。
なつの瞳に、少しずつ、少しずつ光が戻ってくる。
「……自由にしてやるって言われて……。はいそうですかって、……行けるわけねーだろ。……お前が、……こんなにボロボロなんだから……」
なつの目から、一滴の涙がこぼれ落ち、いるまの手の甲に当たった。
それは嘘の笑顔でも、絶望の涙でもない。いるまという厄介な男を見捨てられない、なつの「意志」だった。
「……なつ……っ!!」
「……一回だけだぞ。……次、変なことしたら、……本当に刺すからな」
なつはいつものように、少しだけ生意気に、でも優しく笑った。
いるまはなつを抱きしめた。今度は鎖で繋ぐためではなく、二人の心が同じ速さで鼓動を刻んでいることを確かめるために。
コメント
1件
あああああもうダメだ泣いた😭💦💦!!「自由にしてやる」って言いながら実はめっちゃ縛ってたいるまが、初めて本気で手放そうとしたところ、めっちゃグッときたよ…。なつの「遅ぇよ」からの「こんなにボロボロなんだから」って台詞、完全に心臓射抜かれたんだけど!!💘 二人ともちゃんと互いのこと想ってんじゃんかよぉ…尊すぎて永遠にこの続き読みたいよ〜!!📖💕
虚 無 天 .
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薬 チャン ❕ 💭
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