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虚 無 天 .
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薬 チャン ❕ 💭
80
数週間後の日曜日。二人は久しぶりに、近所の大きな公園まで散歩に出かけていた。
以前のいるまなら、なつの腕を折れそうなほど強く掴んで離さなかっただろう。けれど今の彼は、なつの歩幅に合わせてゆっくりと隣を歩き、時折不安そうに、でも愛おしそうになつの横顔を伺っている。
「……なつ、疲れてないか? 喉乾いただろ。あそこのベンチで休もう」
「……まだ歩き始めて十分だぞ。お前、過保護すぎ」
なつは呆れたように笑うけれど、その瞳にはかつての「死んだ色」はない。
いるまが差し出したお茶を一口飲み、なつは自分から、隣に座るいるまの膝に頭を乗せた。
「……ふわぁ。……外の空気、久しぶりに吸うと美味いな」
「……なつ。……本当に、俺と一緒にいていいのか? 嫌になったら、いつでもあの鍵を使っていいんだぞ」
いるまは、なつのポケットに入っているはずのスペアキーを指差した。
情緒が安定してきたとはいえ、ふとした瞬間に「自分はなつを不幸にしているのではないか」という不安が顔を出す。
なつは、わざと意地悪く笑って、いるまの頬を指でつねった。
「……あのさぁ。嫌だったら、お前が泣いてようが喚いてようが、とっくに逃げてるっつーの。……俺がここにいるのは、俺がそうしたいからだ。……分かったか、このヤンデレ重重野郎」
「……っ、なつ……」
いるまの瞳に、じわりと熱いものが浮かぶ。
支配しなくても、閉じ込めなくても、なつは自分の隣で笑ってくれている。
その当たり前の事実が、今のいるまにとっては、どんな宝物よりも価値のある救いだった。
「……よし、帰りにスーパー寄るぞ。今日のご飯、俺が作ってやるから」
「えっ、なつの手料理!? ……俺、一生の記念にする……!」
「大げさなんだよ、バカ! ほら、行くぞ」
なつが先に立って歩き出し、少し後ろを歩くいるまに「早くしろよ」と手を差し出す。
いるまはその手を、今度は壊さないように優しく、けれど絶対に離さないという意志を込めて、しっかりと握り返した。
コメント
1件
うわ、いい……! 支配とか閉じ込めじゃなくて、ただ隣にいてくれるだけで救われるって気づいたいるま、めっちゃ成長してるし、なつの「俺がここにいるのは俺がそうしたいから」って台詞、グッときたわ。手料理に「一生の記念にする」って照れるなつとのやり取りも可愛くて、公園デートの空気感ほっこりした😊 二人のペースでゆっくり進んでる感じが沁みるなあ。