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水漏れ 近道 保志
「暑い。暑い……。麦茶ーーーー!! 俺は飲み物なんて持ってきてないんだぞー!」
荒れ果てた水漏れの酷い二階の洗面台を見つけて、ひとまず不満をぶちまけた。
なんで、誰もいないんだよ。電話では切迫詰っていた感じだったのに……。
それより飲み物だ!
あ、違う! 修理だ!
さっさと、こんな仕事終わらせて帰ってしまおう!
「うーん……。と、原因はゴミの汚れだな?」
空の缶やビニール袋が乗っている洗面台の水漏れの原因は配管の詰まりだった。
配管にゴミが入り蛇口が開けっ放しで、洗面台は水道水が溢れ出し床へと滴り落ちていた。
なんだかわざと水漏れにしている感じだ。
「ま、いっか……」
配管の中のゴミを洗浄するのに、予めバンから用意してあるパイプクリーナーを工具箱から取り出す。
そこで、一階からお湯を沸かすポットの音がした。
どうやら、住人が戻って来てお茶を用意してくれているのだろう。だが、どうしても冷えたお茶が飲みたかった。
「うーん……」
後はパイプクリーナーを入れるだけだし。下へ行って冷たいお茶を頼もうかと思っていると……。
ガゴン!
何故かこの家には不釣り合いな大きな作動音がどこかの部屋の壁からした。まるで、何かの巨大な金属製の物体が降りた音。スイッチの入った音だった。
「な……なんだこの音?!」
恐る恐る辺りを見回すと。
グーーーーン……。
巨大なウインチの巻かれる音と共に、立っているのもやっとの振動が部屋全体に広がりだした。
「う!!」
部屋自体が怖いぐらいの速さで勢いよく降りだし、パイプクリーナーと工具箱を持つ手に自然に力を入れる。ハッとして天井を見上げた。グングンと天井は空の高さまで上がっていった。
「な! なんだこの家ーーー!!」