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「人殺しが嫌とか……別にそういうのは、ない」


眉をピクリと跳ね上げつつも、口元には薄い笑みを浮かべるユーシス。

傍から見たらものすごく猟奇的な美少年に見えるだろう。


「あっそう。でもね、駄犬。私はあなたごときに嘘をつかれるのが気に入らないの」


ううーん。

『幼馴染の私には正直に話してくれよ』って言葉がどうしてこうも刺々しく変換されるのか。

マリアって本当に目上の人にはペコペコできるのに、自分より格下だと判断すれば容赦ない口調だよな。

あ……でも、最近はわりとメイドのアンに対する態度がやわらかいかな?


おっと、今はそっちに意識を割いてる場合じゃないな。

えーっとこのままじゃ確実にユーシスは罪悪感で心が潰れるから、人殺しの練習なんて嫌ならやめればいいと促そう。


「俺は……【死神の大鎌レヴァナント】の一振りとして、殺しの技術を磨かなければいけないんだよ。これは大義ある殺しなんだ」


「殺しだけが解決策ではないでしょう?」


「マリアに何がわかるのかな? 【死神の大鎌レヴァナント】としての務めを立派に果たせなきゃ、俺の本当の家族は飢えてしまうから……なら、喜んで暗殺にも手を染めるさ」


ニコニコと笑みを張り付けたユーシスから、聞き捨てならない単語が飛び出した。


「本当の家族ですって?」


「マリアも知っているよね? 俺は孤児院の生まれで、落とし子だって。父上に俺が認められなきゃ、孤児院への援助金を打ち切られる。それだけの話だよ」


なるほどなあ。

レヴァナント侯爵は私たちの・・・・孤児院の支援を条件に、ユーシスに暗殺の特訓を強要してるってわけだ。それは嫌でも暗殺の技術を磨こうという気にもなる。

私たちの孤児院は経営困難に陥っていて、いつもお腹を空かしている兄妹ばかりだった。だから勇者時代の稼ぎの大半を孤児院に寄付していたし、なんなら他の孤児院にも手広く支援金を送っていた。


私たちのように孤児院出身の者なら、兄妹たちが少しでも楽になる生活をと願う者は少なくない。ユーシスも私と同じく、そのうちの一人だったというわけだ。


まったく、貴族ってやつはやり方がしたたかというか、汚いというか……。

ま、それならそうと私もあくどい手段はとりやすいってものだけど。

まずは幼馴染の懐柔かいじゅうからいこうか。


「ユーシス。やっぱり貴方は無様な駄犬なのね。エサに釣られてホイホイ他者を殺すなんて」


「ふふっ、マリアに俺のことを理解してもらおうとは思わないね」


「いいえ。栄えあるフローズメイデン伯爵令嬢であるこの私が、駄犬ごときの心情を読むなんて容易たやすいわよ?」


「さっきからマリアは何が言いたいの?」


相変わらず微笑むばかりのユーシスに、私は精一杯の気迫を込める。

笑みの裏に隠された彼の想い。揺れる瞳と心に突き刺さるよう、全身全霊を以って言葉を紡ぐ。



「自分の心を殺さずとも、望みを叶えていいのよ」


「……!」


ほんの一瞬だけ、ユーシスは眩しいものでも見るかのように目を細めた。

私はかまわずに、そのままあくどい笑みを浮かべてやる。

かつて、幼馴染をたくさんの悪だくみに誘ったときのように。

修道女シスターたちを困らせてしまった時のワクワクを思い出してほしい。


「辛いことをせずとも他の方法を一緒に模索しようと言ってるのよ、駄犬。ようやく理解できたかしら?」


「他の方法を……?」


おそらくレヴァナント侯爵はユーシスの暗殺術の評価する際、自身の目で直接殺し方を見る時と、ユーシスの個人練習後に残った死体から殺し具合を確認しているのだろう。

それならば————


「察しが悪いのね。さっきやってみせたでしょう? 貴方が殺しても、シロちゃんが復活させるの。それで私が引き取るの。レヴァナント侯爵に死体を確認してもらった後で復活させれば怪しまれないでしょうし、貴方の暗殺の腕も上がるでしょう?」


「……それは確かに……」


「まあ殺すことには変わりないけれど、多少なりとも駄犬の罪悪感は薄れるでしょう?」


「あ、あぁ……それは、そうだね……うん」


スッとユーシスの表情が柔らかくなる。

何かから少しだけ解き放たれたような、そんな清々しい顔だ。


いや、とはいえお前がやってることはむごいからね?

なんて野暮なことを自分マリアの口から出させないよう、勇者の精神力でもってどうにかねじ伏せる。

代わりに自分の利益になることをここぞとばかりに押し付けるんだ。


「だから私がここに来たことも、この取引きも二人だけの秘密よ? それすら守れない駄犬なら、もう飼う価値もないわ」


「二人だけの秘密……」


なぜかユーシスはそのフレーズを反芻して、噛みしめるように呟いていた。

それからいつもの作り笑いではなく、ふわりと天使のような微笑みを浮かべた。


「わかった。俺と、マリアだけの秘密だね」


「いい子ね、駄犬」


それから私たちは、レヴァナント侯爵が確認した人数分だけの亜人を復活させてゆく。

やはり先ほどの【犬耳の娘ワンティー】同様、ユーシスに恐怖して私やシロちゃんを崇め奉るケースになってゆく。

というか最初に復活させた【犬耳の娘ワンティー】が積極的にそういった流れに持っていってるように思える。


「こちらがあたしたちを生き返してくれた、慈悲深い方々だわん!」

「銀髪の乙女わん?」

「白いトカゲだにゃ?」


「無礼だわん! この方々はあたしたちのために、そこの殺人鬼と交渉してくださった聖女様と聖竜様だわん!」

「わああ……銀花の聖女さまだわん」

「にゃんと……!? 白き聖竜さまだにゃ!」

「理解できたわんね!? これよりあたしたちは『白銀教』の信徒わん! 一生懸命、聖女様と聖竜様に尽くせば祝福がもらえるわん!」


こんな感じで私が聖女様でシロちゃんは聖竜様だとか、『白銀教』なるものを布教してくれている。

復活できたのは【犬耳の娘ワンティー】が2人と【猫耳の娘ニャムリア】が3人。

合計5人の労働力を手に入れられた。



「そういえば亜人といっても娘種ばかりね? レヴァナント家は少女を痛ぶる趣味であるのかしら?」


「いや、亜人種は総じて娘種の方が身体能力に優れているんだ。だから【犬耳の息子ワンマン】や【猫耳の息子ニャムリエ】を使うより、抵抗力の強い娘種で暗殺術を練習するのが決まりなんだよね」


「あら、そうなの」


「次はもっと効率的に蘇生できるよう、父上が多くの死体をチェックする日がいいかもしれない。そうすればもっとたくさんの亜人を復活できるようになる」


なんだかんだ言ってやっぱり殺しはしたくないと認めるユーシスだった。


「そうね。じゃあ駄犬のスケジュールを共有してもらうわ。貴方の方でもなるべく殺しの練習スケジュールは調整するのよ? 私だっていつでもここに転移できるほど暇ではないのだから」


「転移ねえ……まったくマリアはなんていうか、色々と破天荒というか、規格外というか……」


「もちろん転移の件も秘密よ?」


「ふふっ、わかってるよ」


ユーシスの乾いた笑いも、確かに本心からくるような笑顔だ。

これでユーシスの心も孤児院も安泰かな?

ん……孤児院といえば……女勇者アリアの存在ってどうなってるんだろう?

すっかり自分の状況を調べるのを忘れてた。

もしユーシスが変わらず勇者アリアと幼馴染なら、きっと勇者わたしのことも知っているはずだ。

だから私は思い切ってユーシスへと問いかける。


「そういえば駄犬。貴方と同じ孤児院にアリアって女の子はいたかしら? 今の時期だと…勇者の力に目覚めた少女、ってところかしら?」


私は私自身の現在を、かつての幼馴染に尋ねてみると————


「女勇者アリア? そんな奴はいないよ?」


え、女勇者わたしがいない?

ユーシスは動揺する私に、さらに驚愕する事実を告げて来る。


「あ、でも女勇者っていうか、聖女・・かもしれないって騒がれてる奴ならいるね」


え? 勇者じゃなくて聖女?


「その人のお名前は?」


「アリアだ。聖女アリア、まあ俺にとっては幼馴染みたいな奴」


ほう……。

なんで!?

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