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桜丸
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〜〜〜
莉來「お待たせしましたぁ!当店自慢のナゴミヤスペシャル料理で御座います!」
路郎の整った容姿に惚れて、この旅館の受付で一緒に来た羽渡志土を盛大にフッた五泉莉來。
莉來は、新たな恋人の路郎とお揃いの抹茶色の茶羽織を着て、旅館のスタッフとして働いていた。
風太「馴染むん早すぎやろ!!元々旅館の店員やったんかアンタ!?」
畳の部屋で食べる夜食。その時に、店員顔負けで働いている莉來に風太はピシャッ!とそう言った。
莉來「路郎の為ならどんな事でも覚えられるしぃ♡」
快晴「イケメンに教えて貰ったら仕事が出来るタイプの人間やな」
座敷用の黒色で低い長テーブルに、料理の品を次々と置く莉來。
音奈「あ、あの…ッ、す、すみません…!わ、私も一緒で…ッ」
美虹「あら、構わないわよ。大勢で食べた方が嬉しいもの」
美虹はニコニコと音奈を見るが、彼女は体を震わせながらもぎこちない笑顔を浮かべていた。
風太「羽渡は来てへんな」
快晴「あんなフラれ方したら顔合わせ辛いやろ。僕やったら『帰る』言うて帰っとる」
風太「ほんまな。よう『おる』言うたよな」
快晴「金勿体ないからちゃう?」
風太「あー」
路郎「ありがとう莉來ちゃん、助かったよ」
向かい同士に座っている快晴と風太はそう会話していると、懐石料理のもう半分を持って来た路郎が笑顔で莉來に礼を言った。
莉來「全然良いですよぉ♡恋人ですからぁ♡」
快晴「恋人に対して激甘は相変わらずやな」
美虹「ねぇオーナーさん。この旅館に泊まる女の人は行方不明になるって噂があるのはご存知?」
路郎の左腕に両腕を絡ませている莉來をそのままに、美虹は普通の表情でこの旅館に纏わる噂の話を始めた。
路郎「はい。父が自殺してから、女性客が行方不明になる事件は耐えませんね」
美虹「どういうこと?」
路郎「私の父…前オーナーの和水始は、極度の女性嫌いでした。父が自殺をしてから、母親と妹が行方不明になり…」
風太「お、お前それッ!の、呪いの類いちゃうやろな?」
美虹「フウちゃん、幽霊嫌い?」
快晴「はい」
路郎の父親が自殺してから、路郎の母親と妹が行方不明になっていると聞いて、風太は冷や汗を滝のように流しながら震える声でそう言った。
それを聞いた美虹は、風太が幽霊嫌いと知り、右斜め前に座っている快晴に聞こえるように普通の声量で言うと、快晴は呆れた顔で静かに肯定していた。
快晴の隣に座っている女子高生の音奈も、路郎から話を聞いて、恐怖で体を震わせていた。
路郎「それから、女性客が急に消える呪いのようになってしまっているのでしょうね」
音奈「ひッ!!」
莉來「こわぁい♡路郎さぁん♡」
莉來は甘い声を出しながら、路郎の左腕に縋り付くようにして抱きついた。そんな莉來の頭を路郎は優しく撫でていた。莉來は頬を朱に染めて、嬉しそうな顔をする。
風太「何イチャついとんどコラ」
莉來「恋人だから良いじゃない」
イチャつくのは構わないが人前…と言うより自分の前ではやめて欲しいタイプの風太は、頬に青筋を浮かべて莉來と路郎に静かに指摘した。
だが莉來は「恋人同士だから人前だろうが陰でだろうがイチャつくのは当然」と考えている。
莉來「もしかして風太、恋人同士がイチャつくの見るの耐えられないの?」
快晴「違います。フウちゃんは恋人が幸せそうにイチャついてるのを見て嫉妬してるだけだから」
風太「もっとイメージ悪なっとるやないかい!!」
快晴「でも僕の言うとー事当たっとるやろ?」
風太「……」
快晴の言っている事は図星のようで、風太は押し黙ってしまった。
快晴「呪いの類いか…」
美虹「快晴君も、呪いを信じるタイプ?」
快晴「いいえ。僕はフウちゃんと違って呪いの根元があると思うタイプです」
風太「俺と違って別にいらんやろ!!」
路郎「根元?」
快晴「はい」
風太「言うてお前!呪いの家とか曰く付きの家とか信じて行っきょーやん!」
快晴「僕は別に信じて行ってる訳ちゃう。呪いや幽霊の仕業や言われてる原因を調べてるだけやで?」
美虹「快晴君の書いてる『怪怪解説コーナー』、意外に人気があるのよ」
快晴「それほどでも」
莉來「『怪怪解説コーナー』……」
莉來は顎に手を当てて首を傾げてそう呟く。そのあと「あ!」と思い出したように声をあげた。
莉來「もしかして『manatu』の雑誌書いてる人達!?」
美虹「フフ!あったり〜。もしかして読んでくれてる?」
莉來「読んでる読んでる!ファッション誌も髪型も最近の噂とか女性向けの漫画とか、占いとか色々あるわよね!?」
美虹「そうよ!私達は『怪怪解説コーナー』担当だけどね」
路郎「なるほど。もしかして、ここの事も記事にするんですか?」
美虹「はい。女性客だけが行方不明になるって噂がある旅館…。蓋を開けたらイケメンオーナーが美味しい料理を作ってくれて至れり尽くせりで驚いてるわ」
路郎「そう言って貰えると私も嬉しいです。いつか、噂が掻き消されて女性客も気軽に通ってくれるように私は頑張りますので」
莉來「路郎さん健気過ぎぃ好きぃ♡」
莉來は蕩けた顔をして、甘い声で路郎を褒めていた。路郎はそんな莉來に微笑みで返した。
路郎「さて、私は羽渡様に料理を部屋まで持っていきます」
莉來「私も行くぅ♡」
風太「お前気まずないんか?」
莉來「恋人から元恋人になっただけよ?何が気まずいの?」
風太「ある意味精神的に図太い女やな」
路郎と莉來はおぼんに志土の分の料理を乗せて、彼がいる部屋へと向かった。
そして暫くしてから、志土の怒鳴り声と何かが落ちる音がした。
風太「何や!?」
快晴「フウちゃん飯食ってる時に立ったらアカンで」
風太「いや志土の声と音気になるやろ!!行ってくるわ!!」
風太はお座敷から出て、志土の部屋へ向かった。