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夏の夜、地元の神社で行われた夏祭り。
浴衣姿のふたりは、人混みを避けながら屋台を巡っていた。
「わ〜、綿あめ食べる? ねえ祐希さん、これ見て! 金魚すくい!」
「子どもか」
「子ども扱いしないで。俺、立派な甘えんぼなんだから」
「それ、開き直るとこじゃないだろ」
くすくす笑いながら歩くふたりだったけど、ふと藍の繋いだ手がぎゅっと強くなった。
「……どうした?」
「なんか、人多くて……迷子になりそうでやだ」
「俺、離れてないだろ」
「でも、……離れないで、って言いたくなる」
小さな声。でも、確かに本音だった。
「離れないよ。絶対」
祐希が手を握り直すと、藍はちょっと照れながら小さく笑った。
花火が打ちあがった瞬間、藍がぽつりと呟く。
「……綺麗だね……」
「うん……」
「でも……、さっきの花火よりも、祐希さんの手の方が綺麗だよ」
そう言うと藍は祐希の肩に寄りかかった。
「……何それ。甘えすぎだろ」
「好きな人には、全力で甘えるって決めてるから」
浴衣の袖から出た指先が、藍の手を包んだ。