さぁ始まりました一時間目、そう体育の時間〜
朝からとんでもない大騒動を起こし、朝会を開かせるというやらかしをした俺こと鳥居希は騒動の原因とも言える体操着をゲットし、今違う問題にぶち当たっている。
俺はどこで着替えるべきか
通常女子は1‐Bで集合し、着替え男子は1‐Aで着替えるのだがここでイレギュラーな俺。感性は丸々男で、だが体は女、流石に男子と一緒に着替える訳にはいかない。かと言って俺が女子の着替えを見るというのも問題がある、慣れた方が良いのだろうがエロ小僧と弄られる程のムッツリなので、多分無理。尻のデカイ女の子を凝視してしまう事間違いなしだ。
一か八か担任に聞いてみる事にした。保健室の先生なのでこういう事(?)に理解があるかもしれない。何かしらの処置をとってもらわねば俺の心の平安が乱れる、割ともう手遅れだが。
「せんせー…俺、あの何処で着替えたらええんすか」
「ん?あ〜……保健室貸すよ、階段降りてすぐだし」
「マジで!?ええんですかあざっす!」
保健室を貸してくれるとの好返事、やはりこういう事(?)に理解があるのだろう。俺にとってはとてもありがたい、だって自分でもこんな事になると思っていなかったものだから…。
皆よりも着替えるのが遅くなる分早く保健室に向かって着替えを始める。何だか小学校での着替えを思い出して懐かしくなった。あの時はサラシの上からブラジャーを付けて形を崩さないように…だとか慎重になっていたが、サラシが取れる心配がないので気楽に着替えが出来る。何よりもたつかない。
「にしてもこのスポブラ楽やな…」
中学生になるにあたり、母親に色んな下着を合わせられたがその時付けたカワイイひらひらのレースが付いた下着が一番キツかった。スポブラはゴムなので伸びるし動きやすいがあのブラジャーは少し動くとキュッと締まって跡になった。子供の時履いていたパンツじゃダメなのかと言ったらいつ見られるか分からないと返されて物凄く困惑した。今となっては理解出来すぎて逆に怖い。
俺は発育がとても良いらしく、Bカップもあるのだそう。同年代の子の中では極めて大きい方だ、自分の体に欲情する事はないが偶に触っている。だって柔らかくて気持ちいいんだから仕方が無いだろう。でも強く掴むと激痛が走るので絶対に力を入れる事はない、初日でそれは痛感した。
まだ少し時間に余裕があるので体操着を着る前に日焼け止めを塗る、俺はとても肌が弱く焼けると痛むので肌を露出する時は必ず塗っている。毎度面倒だが、焼けるよりマシなので欠かすことは無い。ジャージも着ようかと考えたが流石に暑すぎるしジャージまで借りるという事は流石に遠慮したい。グルッペンの体操着に俺の汗染み込むけどすまんな。洗濯して明日持ってこようと誓った。
もう時間が無くなってきているので急いで日焼け止めクリームを置いてバタバタと慌ただしくなる。時間があると油断したせいで残り時間はもう1分を切っていた。
「ゾムまだかー?皆もう行ってもうた……」
「あっ」
「…ッすー…鍵閉めとけやゾムゴラァ!!!!」
「ホンッマにすまん大先生!!」
遅い俺を急かしに来たであろう大先生がガラッとドアを開ける。そこで俺は鍵もかけずに下着姿でウロウロしていたという事に気が付いた、多分アイツら以外に見られてたら終わってた。一気に顔に熱が集まり、茹でダコのようになってしまった。だが急いで正気を取り戻し体操着を来て荷物を持ちドアを開ける、とそこには顔を赤く染めた大先生が居た。何とも居た堪れない気持ちになりギクシャクしながらグラウンドへ向かう。とても気まずい、今すぐにでも走り去りたい気分だ。大先生は不可抗力で俺の下着姿を見たので俺はもう死にたい。
いっそ殺してくれ…
結局一言も交わすことなく皆と集合した、明らかに何かあったであろう雰囲気を醸し出す俺たちを見て全員が俺を見る。何をしたんだとでも言いたげなその視線を受け更に落ち込んだ。本当にごめんなさい大先生、友達の下着姿とか母親がビキニ着てプールではしゃいでる時ぐらい気まずいやん。
「…あ、あー……まぁ、気にせんでええから」
「……へ?き、気にせんでええって…ええんか?」
「うん、まー…確認せんと入った俺も悪いしな」
「…大先生ゾムの下着ゴハァッ」
「黙りやがれ下さいコネシマさん」
何とか大先生から許しを貰えたがやはり少し気まずくよく分からない沈黙が流れる、それで気付いたが1‐Aも1‐Bも全く喋っていない。誰も喋らずに流れる時間の何と苦痛な事だろう。早く来て欲しい、先生。今朝からずっと先生に助けられている気がする、とても早く来て欲しい救世主様。
「…おー、何か…静かだな…?まぁ良い授業を始めるぞー」
全員の視線が前に立っているトラゾー先生に向いた。突然首を動かし前を見出す生徒は軽くホラーだったのだろう、少しだけ悲鳴をあげるトラゾーさんに全員申し訳なくなる。ただ来てくれてありがとうございます、地獄みたいな雰囲気が和らぎました。でも何で俺は大先生の隣なんだお互い気まずいのに。
「ひっ、…あー担任からある程度聞いてるだろうが」
「一応な、グラウンドを使用する際の注意事項はーーー」
「説明は以上。厳しくいくから覚悟しておけ」
この人が元自衛官と言われるのも分かる気がする。職員室であった時の雰囲気とまるで違っていて、ビリビリと空気が張り詰めた気がした。何で注意事項だけでここまでの重厚な雰囲気を出せるのか分からないが、教師陣はやはり変人が多いのだろう。まぁ校長先生がともさんなので割と納得出来る、教頭先生も何か個性強いし。
その後は準備体操や整列の仕方歩き方等を徹底的に叩き込まれた。
「そこ、コソコソと喋るな。何を話していた、言え」
「声を出せ、危険を伝える事が出来ないだろう!!!」
「1、2、3、このテンポだ。忘れるなよ」
「お前らにはまだ体育をやる資格は無い。」
「基本を正す、姿勢は真っ直ぐ、声を張れ!!」
結論、とんでもなく厳しい。本当に軍人なのではないかこの人は、もしくは俺たちが訓練生にでもなった気分だ。本当に体育をやるだけなのか?戦場に引きずり出される様な気さえしてきた。だが俺はしっかりと言うことを聞いたから褒められた、体育への熱量が半端ないだけで普段は優しいので俺はトラゾー先生を気に入っている。何より今朝助けてくれた(かどうかは微妙だが)、体育自体きちんとこなせば楽しいのでどこも嫌いじゃない。一定数苦手意識を持つ人間も増えた、やはりこの厳しさじゃ嫌になる人も多いだろう。
この厳しさのおかげで大先生との気まずさは消え失せた。
「っはぁ〜!楽しかったなロボロ!!」
「クッソ厳しいけどな、あの人やっぱ自衛官ちゃうか?」
「現役説あんで、滅茶苦茶怒られたわ」
特に大先生は絞られていた、猫背を注意されまくっているのに一向に治す気が無い大先生を見てため息をついていたのは印象的だった。それからはもう大先生に猫背でキレることは無くなった。他では滅茶苦茶怒られていたけれど。
「大先生がきっちり動かへんからやろ声小さいし」
「あっ、小さいで言うたらロボロ探されてたよな?」
一度トラゾー先生が生徒の言った人数と合っているか数えていた時、名前が書かれているはずのロボロの姿が見えなかったのだ。周りの背が高く囲まれていたロボロはトラゾー先生に探されている事に気付いてなかった。
「天乃…天乃はどこへ行った?」
「あっ、俺です!ここに居ます!!」
「…えっ…あぁすまん」
「吹くかおもたで」
「誰がチビじゃい!!て言いそうになったわ」
さて、2時間目は数学である。俺の不注意でぶつかって下敷きになった先生は元気だろうか。
数学の先生、名前は不明だが皆に兄さんと呼ばれているので本名が兄さんみたいなもの。不思議な雰囲気をしているがそれが女子に受けている。モテる。
続きは例によって3000⌒ ͜ ⌒
コメント
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ん"ッッッッッあぶねぇ..叫ぶかと思った