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主にも電話をして俺が休むとなると続々と霊達は俺の部屋を後にしていった。
『頭痛薬しっかり飲んでね』
少し頬を膨らましながら亜津沙が一番最初に扉をすり抜ける。
『来客が来たら追い返しとくわ〜』
両腕を頭の後ろで組みながら晶斗はそう告げて壁から外に出て行った。
『何かあったら呼んでね。光の速さで駆け付けてくるから!』
ニコニコと暖かい笑顔を浮かべながら杏那も扉をすり抜ける。
『じぁ、俺も行くから。安静にしとけよ』
「待ってくれ」
それだけ言い残して部屋を出ていこうとする彰を何故か、俺は引き留めた。
「独りに、しないでくれ」
なんで、俺は彰を引き留めてるのだろう。普段ならこんな事はしないのに。
『分かった』
彰はただ一言そう言って、ベッドの近くに立っている。
彰といると、なぜか安心感がある。
そんな事を思考していると、猛烈な眠気が襲ってくる。俺はそんな眠気に身を任せ、また、夢の世界へと旅立つ。
先程とは違い、心地良さそうに眠っている典華を俺、彰は眺める。
『昔はもっと、自分をさらけ出していたというのに』
鏡に映らぬ自身の姿にほんの少しだけ嫌気が差す。
『典華がいつから、男のような口調で話し始めたか』
『いつから、弱点を隠すようになったのか』
『いつから、人を頼らなくなったのか』
悪夢に魘されている感じもなく、心地良さそうに眠る典華を見つめながら言葉を溢す。
『彼奴が、盟典が居れば、今とは違った未来があったんだろうか』
空で今となれば星となってしまった典華の兄、盟典の名を呼びながら典華が子供のように無邪気に心の底から泣いたり笑ったりしている姿を想像する。
決してもう二度と会うことのできない者の事を考えたとて、典華が幸せになる訳ではない。
俺は、いつから此処に住み着いたんだったか。確か、盟典が此処に住み始める少し前だったな。
俺は、一息付いて、昔の事を思い出し始めた。