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俺は、一息付いて、昔の事を思い出し始めた。
 俺は現在のスウェーデン王国で生まれた普通の人間だった。戦に兵として出されて死ぬまでは。
 俺は妻子を残して死んだ。
 何の未練があって、この世に残ったのかは、今となってはもう忘れた。
 死んで霊になってからは、自身の未練が分からずただ彷徨っていた。
 そんな時、俺はこの家を見つけた。なぜだか妙に心地よいこの家に俺は住み着いた。
 そんなある日、赤子を抱いた一人の青年がこの家を訪れた。
 『誰だ?』
 玄関から入って来た一人の青年に声を掛ける。
 赤子を抱いた泥棒なんて居ないだろうし、この辺に住んでいる者なら、此処は霊が住んでいると有名だから普通は寄って来ない。ならば、此処とは少し離れた場所で暮らしている者と考えて当然だろう。
 俺は幽霊だ。だから、俺の声も姿も分からないだろう。なんて考えていると、その青年は俺の言葉に返事をし始めた。
 「住人が居たのか。なら申し訳ない。だが、今暫く雨宿りさせてもらいたい」
 そう言って青年はお辞儀をする。
 何故、この青年には俺の事が見えているのかなんて分からない。霊感と言う物が有るのだろうか。
 まぁ、そんな事は今はどうでも良い。赤子が風邪でも引いてしまっては大変だ。
 『早く、雨が止めば良いな』
 土砂降りの外を窓から眺めて俺はそう言った。
 それから暫く、俺と青年と赤子の間に沈黙が流れた。