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「どうしたらいいんだろう。何もできない、役立たずにならないために。」
オレが今考えられるのはイジられ役しかない。
でも…。
ひどいイジリに、顔を苦痛に歪めた俺が目に浮かぶ。
「っ…もう、イジられたくない…。イジられ役は、嫌なんだっ…。」
こんな気持ちになるくらいなら大人しく処刑された方がマシじゃないか。
すると、一つの案が生まれた。
「 !そう、だ…。しん…じゃえば…。」
処刑場に上手く入れればしねる。
実行するのはこの後、看守が来た時だ。
ルートは大丈夫だ。看守を押し退けていけばいい。
しばらくすると、部屋のドアが開き、看守が入ってきた。
「おーい、しんどうじ〜?昼ごはんだぞ〜!」
「今日はお前の好きなステーキ…」
今だ。と心の中で叫び、看守を突き飛ばした。
「なっ?!」
驚く看守を尻目に、全力で走る。
きっと、ぐるっと回っていけば、処刑場のあるところまで入れるはずだ。
俺は足に力を込め、必死に走った。
ぷちぷちside
「っ…くそ、待てっ!!」
まずい、まずい。
取り逃がせばしんどうじがいなくなってしまう気がする。
きっと俺も降格だ。いいや、そんなこと考えてる暇なんてない。早くしんどうじを追わなくては。
だがあっちは日々刑務作業で鍛え、脚力も高いものだ。
「どこに向かってるのかさえわかれば…」
そういえば、しんどうじはリストカットをするほどの何か悩みを抱えていたのかも知れない。
ということは、もしや悩みが大きくなり、自殺行為を考えているのではないか?
それなら、しんどうじが向かう先は…
「…処刑場だ。」
きっとあいつはぐるりと回って処刑場のあるエリアに侵入しようとでも思ってるはずだ。
俺は鍵を持っているのだし、正式なドアから入って仕舞えばいいんだ。
焦りで震える手でドアを開け、処刑場へ急ぐ。
すると目の前には、処刑場の扉を壊そうとするしんどうじがいた。
俺はしんどうじに駆け寄り、持っていたツルハシを跳ね飛ばした。
「っ!!しんどうじ!!」
「ぁ…」
しんどうじは固まってしまった。
そして、気が抜けたように膝をつき__
「っ…うぅっ……ぅあ…っ…」
「…は、?」
__ぽろぽろと涙をこぼし始めたのだ。
しんどうじが泣くなんて見たことない。
俺は戸惑いを隠せなかった。
しんどうじは嗚咽をあげながら何か呟いている。
俺は背中をさすり、耳を傾けてみる。
「っ…んで……てく……か…た…で…?」
「しんどうじ…?なんて、いったんだ?」
「…んで、…なんでしなせてくれないんですかっ…?」
「っ!…俺は、処刑日までお前らを殺さないという義務があるからだ。」
「っそれなら、!」
しんどうじは俺と向かい合わせ、涙がうるむ目で訴えた。
「あなた達のイジリは、俺の心の殺しに入らないんですか、?」
「っ!それ、って…。」
「看守…。俺が苦しんでる理由、わかりますか…?」
「…俺たちの、せいなのか?」
そう問うと、しんどうじは頷き、また涙をこぼした。
「そうに、決まってるじゃないですか…っ。毎日毎日イジられて、ギャグをしないとご飯を食べられない。こんな生活、もう嫌なんです、!!」
「…それなら辞めちゃえばいいんじゃないのか?」
「辞めたら…俺は役立たずになる。役割ごときでこんな苦痛になるなら…っ、もう、いなくなりたい…、!!」
「…」
しんどうじは嗚咽を上げながら涙を拭い続ける。
俺は泣くしんどうじを前に何も喋れなかった。
そんなこと、考えてなかった。
確かに、考えてみればイジリのつもりがどんどんエスカレートしていっていた気がする。
俺は3人の処刑日まで楽しく過ごさせてやりたかった。でも、そのためにしんどうじを利用してたんだ。
自分も、傷つくしんどうじを無視して楽しんでいた。しんどうじは楽しく過ごせず、俺たちだけ楽しんでいた。
そんな俺に、かけてやれる言葉はあるのか?
目の前のしんどうじはもう、動く気力もなく泣き続けている。
俺たちの遊び心で傷つけたしんどうじに。
「っ…ごめん…」
口は勝手に動き出す。
こんな言葉で済ませていいのか?
こんな言葉でしんどうじの心の傷は癒えるのか?
「…ごめん、しんどうじ…。そんなつもりじゃなかった…。俺はお前らを処刑まで楽しく過ごさせてやりたかった。でも、それにしんどうじを利用した…。…お前を傷つけて。」
口からは言い訳ととれる音がペラペラと発せられる。
「そんなことのために、俺は傷ついたんですか…?なら、やっぱり俺はっ!!」
「っ…俺は、俺は…しんどうじも楽しく居てくれてると思った。これまでのは冗談じみたイジリのつもりだった。」
「こんなの、冗談って言えますか…?」
「あぁ、冗談なんて嘘は言えない。お前は本気で苦しんでいたんだよな。」
「…」
「…すまなかった!!これからは、絶対に楽しい日常のために人を利用したりなんてしない…!だから…だから、もう一度だけお前を処刑日まで見張るというチャンスをくれないか…?」
「…」
「お前がもう嫌って言うならもう俺は止めない。でも、もう一度だけ信じてくれないか?」
俺はそう良い少し目線をしんどうじに向ける。
しんどうじはうつむき、何も言わない。
迷っているのだろうか、このまま自殺してしまうか。最後に一度だけ信じてみるか。
しばらく沈黙が流れ、俺はもう一度問いかける。
「…もう一度だけ、信じてみてはくれないだろうか?」
すると、次には反応があった。
しんどうじは顔を上げ、目に水を溜めながら俺を見つめてきたのだ。
「信じても良いんですかっ…?俺は、もう一度あの輪に入れますか…っ?」
「っ…あぁ、入れる…!!絶対に!!」
「一回だけですからね…。次俺がこうやって苦しんだら今度は本気でしんでやりますから…。」
「っ!…ありがとうっ!!ごめん、しんどうじ…!」
俺達は泣きながら、少しの間抱き合った。
その後、しんどうじには一度部屋に戻ってもらい、
俺はひなこ達を迎えにいった。
そしてひなこ達に俺たちがしんどうじを傷つけていたこと、しんどうじの現状を話した。
2人ともびっくりとしていたが、心当たりがあったようでひどく悔やんでいた。
しんどうじはまだ、こちらを向いてくれただけだ。完全に信じてくれるまでには時間がかかる。
どうか、処刑までには信頼を取り戻していきたい。