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「お前、アイツはしっかり〆たんやろな」
「先月の逃げた人間なら、しっかりと」
サビ組事務所で横にいるスーツをきっちり着こなした女に声をかける圧のある男
「指を1つ折ったら、すぐにお金を返済頂けました」
「あー怖……お前はやる事が鬼やわ」
「そう頼んだのはカラスバ様ではないですか」
冷徹なサビ組の女幹部───アザミ
そう言いながらカラスバの横でヒールの音を立てて夜の街を歩く2人はカップルに見えるだろう
現に周りからもお似合いカップルだの綺麗だの言われている
「お前とカップルとか嫌やわ」
「私もこんなちんちくりんには興味ないですね」
「ア”?オレこそお前みたいな女には興味ないわ」
そう言ってお互いを睨む2人
「今日も見に行かれるのですか?」
「当たり前やろ」
「一日に何回も…一途ですね〜、あの日からもう3年経つのに」
「3年、か…早いもんやな。アイツは21になるんやっけな」
子供っぽいが話の節々から大人っぽく感じていたが、出会った頃は18歳のガキンチョだった
18歳なんて歳で片方は人を殺し、片方は自分を殺した
本当に壮絶な姉妹だと思う
「後の仕事は終わらしとくから、姉さんのとこ行きなよ」
「すまんな、ほな頼むわ」
「ご褒美くれよー」
病院の2階の隅の個室
そこにシオンは3年前から眠っている
眠っているように息をしている
手を握るとほんのり暖かい
「お前の妹はどうにかならんのやろか。年々態度デカなるし。」
そう冗談目かしく声をかけるが、相手からの返事は無い
「そうやリザードンら、お前に見せる為かどんどん強なってなァ…
アチャモはアチャモのまんまやけど」
あれからリザードン達を預かっているが、シオンに見せる為かよくペンドラー達の練習相手になってくれるリザードンやオンバーン、そしてメリープだったデンリュウ
そんな3匹を遠目に眺めるアチャモとヌメイル
アチャモとヌメイルに関しては、シオンが居なくなった日から進化できるはずなのに一切進化しなくなってしまった
「きっと、お前の手で進化したいんやろな」
そう言ってシオンの頬を撫でる
「せやから、はよ起き。オレもポケモン達もアザミもお前のことをずっと待っとんや」
────深夜 2:16
ガタッ……バタン!ガシャン!!
「っ、はぁ……はァッ………」
ここはどこ、見たことが無い
施設?なんで?なんで施設に戻って──
「何か音が───」
ドアの方から男の声が聞こえる
「!!ッ、ァ”……う…」
声が出ない、掠れる
それより逃げなきゃ、きっと酷い目にあう
混乱した頭のまま腕に着いていた管を取り、ヨロヨロと足を引きずるようにして窓の方へ手をかける
「に、げ…………きゃ……っ」
逃げないと、逃げないと、捕まる
高さ等関係ない
──ガサガサッ!!ドンッ!!
そのまま力を出し窓から身を乗り出し、下の芝生へ落ちる
「う”…ぁ”………」
何故か足にも力が入らない
しかしただ只管に逃げないとという感情が自分を動かす動力になる
壁にもたれかかれながらヨタヨタ…と1歩1歩弱々しく踏み込みその施設を後にする
「は、ァっ……はッ……」
煌びやかな街並みだが、ヒウンシティには見えないしここはどこなのか
あの人達に連れ戻されたのか…?
冷や汗をダラダラかく
「ッあ”…」
「おっと!!大丈夫か!?」
コケかけた時後ろから体を捕まれ間一髪助かる
「う…ぁ”……」
何故か喉が詰まり、言葉が出ない
その様子を若そうな好青年が首を傾げながら問いかける
「その服…どっかの病院から抜け出してきたのか?」
「…び、ぉ…いん?」
施設じゃないのか?いや分からない
そもそもここはどこなの
とにかくあそこには戻りたくない
もし施設の人が手引きしていたらと思うと……
幸い目の前の男の子に悪意は感じられない
一か八かかけてみる
「た、すけ……で……っ」
「助けて?なんか困ってんのか?」
そう聞かれると頷き、男の子を見つめる
するとその男の子は「よく分かんねぇけど、困ってんならほっとけねぇな!!」と言ってそのままシオンを抱き上げ夜の街の中へ消えていった