「これっす!さ、どうぞ、主様♪」
アモンが用意したふわふわの花がいっぱいに詰まったバケットに入る。自分ではバケットによじ登れないので、アモンに持ち上げて貰い、アモンの手から降りる。すると、ふわりと花のいい香りが漂い、鼻をくすぐった
「やっぱり似合ってるっすよ、主様!衣装に合う様に白い花を選んで正解だったっすね!」
「わ…!これならこっちの帽子をかぶった方がもっと良くなると思いますよ!」
「それいいっすね、ならここをこうして……」
「私抜きで話進めないで???」
フルーレとアモンが手を組み、あれもいいこれもいいと盛り上がっている。疎外感を感じて周りを見渡せば、他の人らは各々好きな事をしている。君らマイペースだな……
「これは他の人にも是非見てほしいですね…!ナックさん達に会いに行きましょう!!!」
「ついでに写真も撮るっすよ!」
「くふふ、フルーレが楽しそうでなによりです」
「アモンもテンション上がってんな…ふあ、俺は昼寝してくる」
「ちょ、ボスキさん!隙あらばサボろうとして……またハウレスさんに怒られるっすよ?」
「別にいいだろ。じゃあ俺は失礼するぞ、主様」
「あ、うん。でもあんまりハウレス困らせちゃダメだよ?」
「そうだな」
「ここで善処するとか言わない当たりそう思ってないですよね、ボスキさん」
「あらあら……」
いつもよりボスキとの間に物理的距離を感じる…あ、私が小さくなったから潰さないようにしてくれてるのか。うろちょろし過ぎたかな
「主様、ちょっと失礼するっす」
「ん?うわっ……」
アモンの声がした途端、少しの揺れと共に浮遊感が私の体を包んだ。バケットごと持ち上げられたのである。先程の話から、恐らくナックに会いに行くのであろう。少しぐらついているのを感じたのだろうアモンは、安定する様にバケットの底を持ち、腕で固定する。
「乗り心地はどうっすか?」
「凄くいいよ。ありがとう」
「主様、こちらをどうぞ。今は春先とは言え、少し冷えますから」
「ありがとうフルーレ。そういえば、ベリアン達は?」
「ベリアンさん達は朝ご飯を食べていますよ。その後は仕事をすると言っていました。今日の担当執事は俺ですし、俺はこのまま主様のお世話を続けますね!」
「俺も花のお世話は終わらせてるっすから、今度は主様のお世話をさせてもらうっす♪」
「…ホントは俺一人が良かったな……」
「ん?フルーレなんか言った?」
「あ、いえ、なんでもありませんよ!」
ボソッと何かを呟いたフルーレにどうしたのかと聞くと、慌てた様に両手を体の前で振る。その様子に不思議に思った私は首を傾げるが、なんでもないと本人が言っていたので気にしない事にした。__さっきからなんかギャーギャー言い争ってる声が聞こえるけど、もしかしてまたナックとラムリ喧嘩してる…?
「あ、ナックさん居たっす!」
「おや、アモンさんにフルーレさん。如何なさいましたか?」
「なになに?2人してどうしたの〜?」
「2人とも、朝から言い争いしてたんですか?」
「だってナックが朝からグチグチうるさいから!ほんっとムカつく」
「ラムリに昨日やらなかった分の掃除をやれと言ったまでです。そもそもそれは貴方が昨日やっていればこちらも__」
「ストップストップ!主様の前で喧嘩しないで欲しいっす!」
「え、主様っ?どこどこ、どこにいるの?」
「ふふ、こちらを見てください!」
ずい、とバケットを2人の前に差し出す。中にいる私を凝視したまま瞬きもせずに固まっている2人に、おはようと軽く手を振る。
「か……」
「か?」
「かっっっっっわいーーーー!!!!!」
「うわうるさ」
「どうしたんですか主様!そんなに可愛くなって…わあ、ちっさーい!」
「綺麗な花々に囲まれ、その花を慈しむかのような主様の眼差し…そしてその衣装が更に主様の可憐さを引き立たせており…嗚呼、この光景を表現出来ない私の語彙力の乏しさが嘆かわしいです」
「いやどんだけ私を美化してるの……あと十分だと思うよ」
可愛い可愛いと大きい目をキラキラと輝かせて言うラムリと、自身の持ちうる語彙を活かして表現しようとするナック。後ろでアモンとフルーレが誇らしげにそうだろうと腕を組んで頷いている。取り敢えずもう可愛いはお腹いっぱいなのでこの暴走列車共を止めてもらえると助かるんですがね
「取り敢えず落ち着いて、2人共。ルカスがどこにいるか知らない?」
「あ、ルカス様なら僕達の部屋に居ますよ!ルカス様に会いに行くなら僕も一緒に行きます!」
「貴方は掃除がまだ残っているでしょう!」
「うっっざ。後ですれば問題ないじゃん?」
「後回しにしては絶対やらないでしょう」
「ちょっと、喧嘩はダメだってば!」
また口喧嘩を始める2人をフルーレが慌てて宥める。アモンが朝から元気っすね、と肩を竦めた。話が中断されたので軌道修正すべく、こほん、とわざとらしく息をひとつ吐く。
「兎も角、ルカスに一応診て貰いたいし、連れてってくれるかな?」
「了解です!じゃあ、このままお連れしますね」
「ありがと、フルーレ」
「あーあ。主様を運ぶ係、奪われちゃったっす」
「いいなぁリボンくん。僕も主様を運びたい!」
「それを言うなら私も主様をお運びしたいですが…今日の担当執事はフルーレくんですし、仕方ないでしょう」
君達の中で私を運ぶのってそこまでしたいことなの?ただのお荷物よ???いやまぁいいけど。なんとなくちらりとフルーレの顔を見上げる。私の視線に気が付いてか、どうしたんですか?とこちらを見て、その大きい目を細めて微笑む。やめて、私ホントに尊死しちゃうから。その顔は私の心にクリティカルヒットするから
「あ、主様。つきましたよ」
「ホントだ、ルカスー!ちょっといいかな?」
「おや、主様。とても可愛らしい格好だね」
「目が覚めたらこんな風になっちゃって…まぁご都合展開だろうけど(メタい)、体が縮んだんだし、診て貰った方がいいかなって思ったんだけど……というかルカス、随分落ち着いてるね?驚かれると思ったんだけど…」
「ふふ。昨日渡した薬が効いているようで良かったよ」
「ルカス?」
「ごめんごめん、冗談だよ。本当はさっきミヤジが訪ねてきてね、それで主様の状態を知ったまだよ。来てそうそうお前の仕業か、って頭鷲掴みされた時は頭潰れるかと思ったよ」
「あ、やっぱりこっち来たんすね。そのミヤジさんはどこ行ったんすか?」
「ああ、ミヤジならフェネスくんに会いに行ったよ。前に主様みたいに縮んだ事例があるのか調べてもらうらしい」
「元に戻るって確定した訳じゃないし、解決方法があればそっちの方がいいかな…後でフェネスにも会いに行ってみるよ」
「そうしてみて下さい。それでは、主様に異常が無いか調べますが…痛い所や違和感のある所は無いですか?」
「どっちもないよ。普通に動かせるし…」
「うーん…今の主様に触診する訳にもいきませんし、聞いた限り問題はなそうだし、恐らく大丈夫でしょう。ですが、少しでも違和感等があれば言ってくださいね」
「ん、わかった。ありがとう」
それにしても、とルカスがこちらを興味深そうに観察してくる。知的好奇心があるのはいい事だけど視線が気になるのでそんなに見ないで欲しい。イケメンにガン見されるとか生まれてこの方ないので……
「まぁ、問題がないんじゃいいや。診てくれてありがとう」
「これくらいなんて事もありませんよ。むしろ、朝からこんなに可愛い主様を見れたんだから、私が感謝したいくらいだよ♪」
「あはは……っと、そろそろフェネスの所に行こうか」
「フェネスさんなら見回り中に書斎で寝ている所を見掛けましたよ。ミヤジさんがそちらへ向かっていらっしゃったので、恐らくまだ居るかと」
「なら書斎に行こう!」
「はい。では主様、こちらへどうぞ」
ナックが私の目の前にスっと手を差し出す。ありがとうと一言お礼を言ってから差し出された手によじ登る。私がナックの手に乗ったのを確認し、ゆっくりとバケットの上に腫れ物を扱うかの様に優しい手つきで降ろしてくれた。
コメント
4件
お久しぶりの投稿で嬉しいぃ!! 頭が鷲掴みにされたルカス…想像しただけで笑いが…ww
いいね🎶