テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
122
Mari
ある日、私は行く宛てもないまま夜道を歩いていた。どこに行くわけでもなく、ただ足が向くままに。
街の灯りが少しずつ遠ざかっていき、気づけば人の気配のない場所に来ていた。
ふと前を見ると、小さな橋があった。
私は何も考えないまま、その橋の欄干に近づいた。
そして、ゆっくりと身を乗り出す。
その時だった……
『危ないで』
後ろから、一人の男性の声がした。
私は驚いて振り返る。
そこに立っていたのは、背の高い男の人だった。
顔立ちは整っていて、雰囲気も明るくて、いかにも“陽キャ”という感じの人。
こんな場所には似合わないような人だった。
『そんな所で何してたん?』
そう言って、私をじっと見てくる。
……しつこい人だな。
正直、そう思った。
「……言ったところで、あんたに関係あんの?」
私は、わざと冷たく言い返した。
普通なら、ここで引き下がるはずだ。
でも……
その人は、少し考えるような顔をしてから言った。
『死にたいならさ』
そして、まっすぐ私を見て言った。
『俺と一年だけでもええから生きてみぃひん?』
……は?
思わず、そんな声が出そうになった。
この人、何を言ってるんだろう。
見知らぬ私に、そんなことを言ってくるなんて。
正直、変な人だと思った。
でも……
なぜだろう。
私は、その人から目を逸らすことができなかった。
名前も知らない。
どこの誰かもわからない。
それなのに。
なぜか、私は……
この見知らぬ男性のことが、少しだけ気になっていた。
その時はまだ、知らなかった。
この出会いが、私の人生を大きく変えることになるなんて。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!