とある方からワクワクするお誘いを頂いた
思わず期待感の影響なのか、それとも処方薬のせいなのかは定かではないが、心臓がどくどくと跳ねている
焦る気持ちを押さえながら身軽な格好に着替えバイクのエンジンをかけ、小刻みに振動するハンドルをぎゅっと握りしめる
手持ちに救急バッグを、引っ提げ目的地にふわふわとした気持ちのまま走らせる
きな粉に醤油、海苔、 ずんだや納豆、大根おろし、そしてとろろ昆布など食べ方は実にさまざまだ。
邪道だがグラタンやピザのチーズの代わりにしてもうまい
海外ではめったに出回らず模造品の求肥のような物が日本語発音のモチとして出回っているのはご存じの事だろうか?
知っていても食べたいものは食べたいのである
一時、無性に食べたくなって、スーパ一へ急いだわけ だが.当然、すぐに手に入る訳もなく、なぜか求肥の中 にバニラアイスやらイチゴアイスやら取り敢えずアイスが入った物がモチとして売られていた。
絶望したが…味は良かった
十個ほど購入したが、ジャパニーズである
モチを、餅として認められず、うんうん唸りながらモチを買い続け、店員の兄ちゃんらからモチ好きの常連として認知され2、3個程オマケをつけてくれるようになったが
けっして認めてはいない、これは味がちょっぴり違う某大福であるのだ
とまぁ、餅を追い求めての話はすみに置き
恋い焦がれていた餅が食べれるかもしれないチャンスがやってきているのだ
きっかけは突然にやってきた
「ぐち逸餅つき手伝えや」
無線で夕コさんから告げられたその言葉に現在進行形でモドキを口に入えていた私はぎょっとしていた
急いで飲み込み、噎せ
手元にある茶をグビッと飲み干す
味わう暇もないまま無線機を近づける
まあきっと無いだろうけどと思いつつ
「拒否権は?」
「んなの無い!来い!」
と言うことでバイクを走らせているわけである
場所はアジト、いや元アジトかもしれないそこに向かって
風を切り分け向かう
なんだか、がぜんワクワクしてきた
ビュンビュンと車の脇を抜けていき、肩に乗るウサギは今にも落ちそうだが安心して欲しい
ピン留めダブルである,ヘリから落っこっても肩からは落ちなかった
なぜなら怖いピンクのお兄さん方にに
「全く、ぐち逸は俺らの物って自覚もって!」
やら
「危機感もって!ほら美味しい飴口入れてやるから…モゴモゴ文句言わないの!」
やらもちゃもちゃと文句とピンをがっつり縫い付けられたからだ、すごい苦戦していた、ホントに余計なお世話だった
全く人を子供扱いなのか、はたまたそれ以下なのか、過保護に磨きがかかっている
本当に勘弁して欲しいが、この距離感になれつつあるのは毒されているのかもう分からない
ほんのほんのちょっぴりだけ、信頼したいのだ
ふと顔を上げると甘い匂いがした気がした
すんと鼻をくすぐるこれは…
「餅米の香りか?」
首をかしげ、バイクを止め、ピンクのわちゃわちゃした中に入ってくい
レダーさんがこちらに気付きにんまりと笑い近付いてくる
なんだ、気持ち悪い
ゆっくり両手を上に上げて後ろにずりずりと後退していく
それを見ていて夕コさんがゲラゲラ笑う
「ぐち逸ぅ!おまえやっぱり来たな!」
「そりゃ来ますよ、呼んだでしょう」
なぜか満足そうな顔をする周りの方々
はぁ?なんなんだホントに
そんなこと思っていたらレダーさんにがっしりと腕を組まれてしまった
離してくれると嬉しいです、大至急
「他の怪我人より俺ら優先してくれたんでしょ?ありがとね」
「…まぁ、拒否権はないらしいので」
「ふーん」
にちゃつく隣が鬱陶しく、鎮静剤を連続で入れていく
ちょ、まっ!など聞こえていない、あー聞こえませ-ん
逆恨みなどしていない正当な権利である
レダーさんは夕コさんにストップがかけられるまで可哀想に地べたと友達になっていた
タコさんに感謝して欲しいものである
ケイン酷いと思わない?等の雑談は本人がいないところでやるべきだろう、心が傷が付いたかもしれないからと
オマケで一回追加で刺しておいた
「ぐち逸その辺でやめとけほれ」
夕コさんから炊き立ての餅米のお握りを頂き
からかうための注射器を置き、ほかほかであちゃちゃなそれを両手でお手玉しながらかじる
口にいれた瞬間からほろほろで甘く、もちもちと噛むほどにほんのりとした塩気と餅米の甘さが引き立ち、実にうまい
塩むすびの上位互換,最高級品といったところだろう
1個で足りないくらいだ
幸せに舌鼓していたら、音成さんがジーッとこちらを見ていた
もしやお金がないといっていたから食べていないのでは?
お腹が空くのは切ないので、苦渋の決断だがお裾分けしてあげよう
「…一口いります?」
「いいよ、口おっきいなって見てただけだから食べな」
にんまりと笑う音成さん、その後ろでねぇ!あのぐち逸が食べ物譲ろうとしてるぞ!、ま“っ!成長したわね!
なんていう家族ごっこをする夕コさんとレダーさん
「良いんですか?そんなこと言うならあげませんよ?」
「食べな」
まあそういうなら頂こう、醤油をちょっぴりかけてかじる
今日は古参メンバーしかいないようで、夕コさん、レダーさん、バニさん、音成さんにロウさん、そして芹さんにケインさんしかいない
「今日はメンバーが少なく感じますね」
「まあ今日過ぎたら正月スタートだからね、なんかコイツらと年越す羽目になりそう」
馴染みのメンバーで良いじゃないかと思いますけど?
まあ私は部外者だから、関係ないかもしれないから少し寂しく感じるが仕方ないことだろう
首をかしげながら夕コさんに告げる
「良いじゃないですか」
「おまえも入ってるからな、他人事止めろよ
大丈夫手錠つけて拉致って形でアジト入るからこたつで皆で年越しそばすするんだよ」
にんまりと上がりそうな広角を下げるためにムッとしてみるが、あまり効果がないようだ
念のため聞いておくか
「拒否権は?」
「だからないって!んでいつまで雑談かましてんだ?ほれ、餅つきスタート!」
ほかほかの炊けたもち米が日本でしか見たことない木の臼に吸い込まれていくとペッタンとつく木のやつを渡される、今回はケインさんが混ぜる役らしい
ペッタン、よいしょ
ペッタン、よいしょ
とせっせとリズムよく作っていく
途中でつまみ食いしながら、汗だくだくでほかほかのお餅がつき終わった
きっと明日は腕が上がらないかもしれない
「これは沢山食べなくては」
「いつものすごい量食べてんだろ」
「いや通常量なので」
「ぐち逸さんは大食いですね」
「あれが通常量なら皆苦しむわ!」
上からレダーさん、ケインさん、ロウさんである
全くの遺憾である
芹さんとバニさんがあっという間に餅の形を変え
テーブルにいろいろな餅が出来ていく
紙皿の上に出来立てのきな粉餅が5、6個乗り、いそいそと近くの椅子へ座る隣に座ったケインさん…人間フォルムだろうかがほかほかのアンコ餅をつまんでいる
どうやって食べるんだろうか、なんて疑問を持ちつつ
割り箸をパキッと割る
もちっと割り箸を押し返す力強さに上手く出来たと自負する
「頂きます」
ぱくり、もちーんと噛みきれず伸びる餅最後の抵抗を感じながらもちもちと無慈悲に咀嚼すると、きな粉独特の和の甘さと言うか風味と言うかが口いっぱいに広がる
お餅が自然な甘さのきな粉を含み、ボロボロとこぼれる以外は、最高である
「ケインさん美味しいですか?」
「美味しいですよ」
マジでどうやって食べてるんだ?
空になった取り皿にアンコ餅をとろうと
スッと立ち上がる
そしてロウさんはガチャりと私の腕に手錠を
はぁ?手錠?
「ちょ、勘弁して下さい」
できる限りの抵抗はするが、手がプルプルしたこの状態では、身を任せるしかない、いつの間にレダーさんが餅を車に乗せるよう音成さんと芹さんに声をかけている
「んじゃ来て貰おうかぁ?」
しまった、ケインさんが隣にいたのは罠だったか
ピースしてやがる、あのポンコツロボット!
ムッとした顔をしたせいで、バニさんが、求めていたアンコ餅を乗せてやってきた
「ぐち逸さんほらアンコ餅食べさせてあげるから」
ピタリと抵抗を辞めチラッとバニさんを見る
「抵抗の意思はありません」
「即落ちワロタなんだが」
ロウさんがにちゃつく、彼の再来で思わず太ももに鎮静剤をぶっ刺す
いったい!と喚いているのを尻目にバニさんは爆笑している
全くどこにつれていくつもりだ
気分はドナドナである
車の中でアンコ餅を食べさせて貰っている立場で何も言えないが、食べているのをなぜかバニさんは微笑みを称えながら見つめている
若い女の子ならきゃーきゃ-言う面をして何やっているだろうか
何か一言言ってやろうか
「何ですか?何か顔についてます?」
「いやー?なんか懐いてない猫が初めて膝に乗った感覚?」
「猫なんていませんが?」
「まあまあ、ほらあと一口!」
差し出された餅を遠慮せず頬張ると、アンコの自然な甘さと豆特有の香りに味、海外にぜひ流行って欲しい
たまにアンコ餅が食べたいときがあるからだ
もちもちと咀嚼しているといつの間にか車が止まる
ここは?
手錠をかけられたまま室内につれていかれる
夕コさんから、なんか言われたら拉致されて脅されたって
言っとけよとこたつに押し込まれる
言われなくても文字通りだろう
久しぶりのこたつに心がほっこりする
こりゃ不味い出れない
ぬくぬくでほかほかなこたつにゆっくりと力が抜けていく
抜けていくとどうなると思う
ごつんとテーブルに突っ伏すしかないのだ
「アッぐち逸寝てね?」
「完全に家猫にしたいよね」
「てかもうこっち側だろ」
「ゆっくりと染めていけばエエんやない?」
怖いお兄さんが話していても何も言わなくなるのだ
もう目蓋は落ちきっており、力は抜けている、意識を手放す数秒前だ
誰かが酒だーと叫んでいる、うるさいなぁと思いながら意識が飛んだ
「大丈夫、何かあれば縫い付けたやつで分かるから」
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