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第102話「兆しの闇 ―再び動き出す宇宙―」
レファリエの静かな夜。
月光が草原を優しく照らす中、最高神アダムはゲズの前で口を開いた。
「この宇宙に、妙な歪みが生じている。放っておけば、再び全てが崩壊するだろう」
アダムの言葉に、ゲズの顔が引き締まる。
「何か、正体は掴めているのか?」
「一人の“人間”だ。だが、正確な出処も能力も未知数。
ただ一つ分かっているのは――その者が、“宇宙の法則”そのものを歪めているということだ」
アダムの語気は重かった。
「リオン、ウカビルにも伝えてくれ。あの者を追跡するには、宇宙全域に目を配る必要がある。
私の力だけでは追いきれない。だからお前たちに託すのだ、“星の英雄”よ」
一方、リオンとウカビルもアダムから事情を聞かされ、すぐに行動を開始する。
「怪しい動きがある星を洗っていこう」
「痕跡は微細でも、何かが見つかるはずだ」
かくして、ゲズ・リオン・ウカビルの三人は再び旅立った。
――そして数日後、彼らは宇宙を巡り幾つかの星々を調査したが、異常な現象は確認されなかった。
空間の歪みも、エネルギーの乱れもなし。むしろ、どの星も不自然なほど「静か」すぎた。
「おかしい。痕跡すら残っていないなんて、何かを“消して”動いてるとしか思えない」
リオンが静かに言葉を漏らす。
「まるで、“闇が闇を隠している”みたいだな…」
ウカビルも不気味な沈黙に背筋を凍らせる。
そして三人は、報告のため再びゴッドエデンへ向かおうとした――
だがその宇宙航路の途中に、ひとつの星の軌道上に「異常な影」が存在しているのを確認する。
ゲズが言う。
「…この感じ。昔、どこかで…」
そして彼らが近づいたその空間に、突如現れたのは――
黒いローブを纏った、一人の青年だった。
「やあ…久しいな、英雄たち。僕のこと、覚えているかな?」
その顔――それはかつて、神と闇の戦乱の最中、第36話で登場した《黄昏の使者・リンネ》。
「リンネ…! お前が、原因か…!」
リンネは微笑んだ。
「さあ、再会の挨拶はこの辺で。これから宇宙は“黄昏”に染まる。
その幕を開けるには…まずは、導き手が必要だろう?」
その言葉と共に、星々の光が淡く歪んでいく――
何かが、確実に動き出していた。
《続く》