異世界誘拐事件録

魔王を討伐し、息絶え英雄となった勇者ルーシェの子供として生まれて間もないカイラは、クライス王の側近であるコロウに引き取られた

コロウはカイラに戦闘の技術や生きる術を教えた

7年後

コン！

コロウ「そうだ、だいぶマシになってきたな」

カイラは雪が積もるスモーク山の小屋の前で薪を割っていた

カイラ「おじさん！薪割り飽きちゃったよ…そろそろ銃の使い方や魔法を教えてよ！」

カイラはわくわくしてキラキラとした眼差しをコロウに向けた

コロウ「そうだな、もう薪はいい」

カイラ「やった！」

カイラはじたばたとはしゃいで喜んだ

そうして、魔法や銃器の使い方を学んだ

2か月後

カイラ「ふぅん！！」

ザンッ！！

カイラは別の雪山のふもとからそして大剣を振り、斬撃を飛ばした

ズバババ！！

見る見るうちに雪山の下部分からひびが入り、崩れていく

コロウ「信じられん」

そばで唖然とするコロウ

コロウ「わずか7歳の子供がクライスや俺を超えた…？」

カイラはスゥっと静かに剣を納めた

6年後

カイラは13歳となり、大魔術学校ルーン中等部へと進学した

コロウ「もうすぐ飯ができる、手伝ってくれぇ」

夕暮時となり、コトコトと晩御飯のスープを煮込むコロウ

カイラ「はーい」

カイラは読んでいた本を古びた棚へしまい、調理場へとかけよった

コロウ「カイラ、お前に伝えねばならんことがある」

コロウは固唾を飲み、スプーンをぎゅっと強く持った

カイラ「？？？おじさん急にどうしたんだ？」

コロウの目つきは真剣だった

カイラ「わかった、ただ事じゃないんだね」

カイラは持っていたスプーンを食卓テーブルに置いた

コロウ「お前の母親のことだ」

カイラ「！！」

カイラは驚いた、今まで何度聞いても硬く教えてくれなかったコロウが、自身の口から母親のことに触れるなんて

コロウ「お前の母親の名は、ルーシェ。かつて俺と一緒に魔王を討伐したメンバーだ」

コロウ「お前の母親は冒険の途中でお前を産み、魔王との戦いで命を落とした」

コロウ「だが魔王は最後の最後に禁忌魔法タイムトラベルを使い、未来へ飛んだ」

カイラ「…」

コロウ「そしてルーシェは最期にお前を俺に託した」

カイラ「なんで…今その話を…？」

コロウ「お前が戦力的に強くなり、成長したからだ」

カイラ「魔王は…どこかで生きてるの？」

コロウ「あぁ、多分な」

カイラは膝の上の手をぎゅっと拳を握った

翌日　大魔術学校ルーン　中棟部　Aクラス

アレン「おはよう、カイラ」

アレンはとても陽気でクラスの中でも特に目立っていた。しかし今日はなんだかいつもより暗い。実の母親が亡くなっていたことに気を使ってくれているのだろう

カイラ「…よう」

机に伏せた顔を起こして、アレンを見た

アリス「おはよ！カイラ！ハイこれ」

登校してきたアリスは八百屋で育てた果実を渡した

カイラ「商品持ってきて大丈夫なのか？」

アリス「大丈夫大丈夫！朝ご飯食べてないんでしょ？これでよければあげる！辛いと思うけど、私たちで良ければお話聞くよ！」

ギャバット「おはよう！カイラ、調子はどうだ？」

ガラガラと教室のドアを開けギャバットとカノンが入ってきた

カイラ「そうだ、まだ僕には、守るべき日常がある…守るべきエルフたち…」

アレン「どうした？」

カイラはすっと息を吸い、深呼吸した

カイラ「何でもない、強くならなきゃなって思っただけだよ」