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「圭太――信じていいの?」
「当たり前だろ!」
「ごめんね――ずっと圭太のことが好きで、圭太と付き合うっていう長年の夢が叶ったもんだから、どうしても失いたくなかった――。怖かったの。不安で胸か押しれそうだった。でも、今の圭太の言葉を聞いて嬉しかったし、今までの全ての苦しみから解放された気がする。ありがとう」
久しぶりに見たゆずきの笑顔にホッとしたけど、何かがこの時、引っ掛かった。でもパーティーがあった翌日からも、ゆずきの態度で特に変わった様子はなかった。
マナの結婚式の3日前の6月10日――
俺とゆずきが付き合い始めて2ヶ月が経っていた。仕事を終えて家に帰ると、ゆずきがいつものように料理を作って待っていてくれた。
「圭太、大事な話があるんだけどいい?」
フロあがりにリビングでテレビを観ながら酒を飲んでいると、キッチンからゆずきが声をかけてきた。
「いいけど、大事な話って何だよ?」
俺がそういうと、ゆずきはソファーに座っている俺の隣に腰掛けた。
「あのね――私、アメリカでファッションの勉強をしてこようと思うの」
俺を至近距離からジッと見つめるゆずきの瞳は左右に泳いでいた。何か隠し事や、やましいことがあった時に、ゆずきが見せる癖のようなものだった。
「アメリカ――本気なのか?」
「本気だよ」
「ちょっと待てって! それっていつなんだよ?」
「準備が整い次第、行くつもり――」
「前々からわかってたんだな?」
「そうだよ」
「そうだよじゃないだろ! 何で何の相談もなしに勝手に1人で決めちゃうんだよ!」
「黙ってたことは謝るよ。でもね、これは圭太と付き合う前から考えてたことなの」
「だからって――俺たちの関係はどうするつもりだよ?」
「―――――。別れた方がいいと思う」
「はぁ? 本気で言ってんのか?」
「冗談でこんなこと言えないよ」
「勝手すぎるだろ! 俺の気持ちは無視ってことかよ!」
「向こうに行ったら、3年は帰ってこないつもりなの。3年も離れていたら、お互いツラくなるし、苦しくなるから、キッパリ別れた方がいいと思う」
「俺は大丈夫だから――ゆずきが帰ってくるまで待ってるから」
「圭太、ありがとう。まさか、そんな風に言ってくれるとは思わなかった。ホント嬉しいよ。でもね、私はもう無理なの。この日本に未練を残して行きたくないの。だから、お願い――別れて」
覚悟を決めたゆずきの言葉は強く冷たく聞こえたけど、その顔は涙で溢れていた。
「はい、わかりましたなんて言うと思ったのか? 俺は認めない。絶対に別れないからな!」
「圭太、ごめんね――。さよなら――」
ゆずきは、そう言うとコートとバッグを手に取って家を飛び出した。余りに突然のこと過ぎて、頭が真っ白になりと立ち尽くすことしか出来なかった。そして落ち着きを取り戻して、追いかけた時にはゆずきの姿は完全に見失ってしまった後だった。