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キズカナイ【完結済】

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キズカナイ【完結済】

81 - 第5章 結婚

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2022年02月19日

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「圭太――信じていいの?」

「当たり前だろ!」

「ごめんね――ずっと圭太のことが好きで、圭太と付き合うっていう長年の夢が叶ったもんだから、どうしても失いたくなかった――。怖かったの。不安で胸か押しれそうだった。でも、今の圭太の言葉を聞いて嬉しかったし、今までの全ての苦しみから解放された気がする。ありがとう」

久しぶりに見たゆずきの笑顔にホッとしたけど、何かがこの時、引っ掛かった。でもパーティーがあった翌日からも、ゆずきの態度で特に変わった様子はなかった。


マナの結婚式の3日前の6月10日――

俺とゆずきが付き合い始めて2ヶ月が経っていた。仕事を終えて家に帰ると、ゆずきがいつものように料理を作って待っていてくれた。

「圭太、大事な話があるんだけどいい?」

フロあがりにリビングでテレビを観ながら酒を飲んでいると、キッチンからゆずきが声をかけてきた。

「いいけど、大事な話って何だよ?」

俺がそういうと、ゆずきはソファーに座っている俺の隣に腰掛けた。

「あのね――私、アメリカでファッションの勉強をしてこようと思うの」

俺を至近距離からジッと見つめるゆずきの瞳は左右に泳いでいた。何か隠し事や、やましいことがあった時に、ゆずきが見せる癖のようなものだった。

「アメリカ――本気なのか?」

「本気だよ」

「ちょっと待てって! それっていつなんだよ?」

「準備が整い次第、行くつもり――」

「前々からわかってたんだな?」

「そうだよ」

「そうだよじゃないだろ! 何で何の相談もなしに勝手に1人で決めちゃうんだよ!」

「黙ってたことは謝るよ。でもね、これは圭太と付き合う前から考えてたことなの」

「だからって――俺たちの関係はどうするつもりだよ?」

「―――――。別れた方がいいと思う」

「はぁ? 本気で言ってんのか?」

「冗談でこんなこと言えないよ」

「勝手すぎるだろ! 俺の気持ちは無視ってことかよ!」

「向こうに行ったら、3年は帰ってこないつもりなの。3年も離れていたら、お互いツラくなるし、苦しくなるから、キッパリ別れた方がいいと思う」

「俺は大丈夫だから――ゆずきが帰ってくるまで待ってるから」

「圭太、ありがとう。まさか、そんな風に言ってくれるとは思わなかった。ホント嬉しいよ。でもね、私はもう無理なの。この日本に未練を残して行きたくないの。だから、お願い――別れて」

覚悟を決めたゆずきの言葉は強く冷たく聞こえたけど、その顔は涙で溢れていた。

「はい、わかりましたなんて言うと思ったのか? 俺は認めない。絶対に別れないからな!」

「圭太、ごめんね――。さよなら――」

ゆずきは、そう言うとコートとバッグを手に取って家を飛び出した。余りに突然のこと過ぎて、頭が真っ白になりと立ち尽くすことしか出来なかった。そして落ち着きを取り戻して、追いかけた時にはゆずきの姿は完全に見失ってしまった後だった。

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