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#めめだて
雪月❄️
398
クリオネ?
100
学園祭が明けてから2人の間には、新しいルールが出来ていた。
――お弁当は、交互に作ること。
それまで毎日のように宮舘が作っていた昼食を、今度は目黒も担当する。
最初の目黒のお弁当は、宮舘のものと比べれば、決して出来が良いとは言えなかった。
卵焼きの端が少し焦げていたり、野菜の切り方が微妙に不揃いだったりした。
❤️「いただきます」
蓋を開けた瞬間、宮舘の胸には愛おしさが込み上げた。
自分のために、朝早く起きて台所に立ち、何度も練習して作ってくれたお弁当なのだ。
一口一口、大切に味わいながら、宮舘は毎回綺麗に完食した。
🖤「うーん」
向かいに座る目黒が、空になった弁当箱を眺めながら、少し悔しそうに呟く。
🖤「やっぱり舘さんのお弁当には遠く及ばないや」
❤️「そんなことないよ」
宮舘は笑って首を振った。
❤️「目黒のお弁当、すごく美味しいよ。もっと自信を持って?」
🖤「……本当?」
❤️「うん、本当」
そう言われると目黒は照れたように笑った。
🖤「……舘さんにそう言ってもらえるなら、もっと練習して、次こそすごいやつ作るね」
その瞳には、悔しさと、それ以上の嬉しさが宿っていた。
まるで、次の料理では絶対に宮舘を驚かせてみせる、とでも言うように。
そんな目黒を見て、宮舘も思わず笑ってしまう。
昼休み。
2人だけで過ごす、この穏やかな時間。
それは、いつしか宮舘にとって1日の中で最も大切な時間になっていた。
そんな日々を送る目黒との好感度は【80%】まで上昇している。
その数字は、2人の距離が確かに縮まっていることを示していた。
けれど、宮舘が穏やかな幸福に浸っていられたのは昼休みの間だけだった。
ーー学園祭が終わった直後から、宮舘の日常には奇妙な異変が起こり始めていた。
***
❤️「……あれ?」
ある日の授業前、宮舘は自分の机の上を見つめて首を傾げた。
❤️「……また、ない」
さっきまで、確かに置いていた教科書。
授業が始まる前に机の上へ出しておいたはずなのに、どこにもない。
机の中、鞄の中、ロッカー。
何度探しても、見つからなかった。
キーンコーンカーンコーン――。
予鈴が鳴り響いた。
❤️「……あっ」
もう探している時間はない。
宮舘は仕方なく、隣の席へ視線を向けた。
❤️「佐久間、ごめん……」
🩷「ん?」
❤️「今日も教科書、一緒に見せてもらってもいい?」
🩷「え?あ、うん。いいけど……」
佐久間は教科書を開きながら、少しだけ心配そうに宮舘を見た。
🩷「涼太、大丈夫か……?」
❤️「…………」
一瞬、宮舘の笑顔が固まった。
❤️「ごめん。次はちゃんと持ってくるから」
🩷「……気にすんな」
佐久間はそれ以上何も言わなかった。
❤️「(……また、だ)」
流石に偶然ではない。
教科書だけではなく、ノートが消えたこともある。
筆箱の中身が、教室のゴミ箱に捨てられていたこともある。
机の中に入れていたプリントが、細かく破かれていたこともあった。
こんなことが、何度もあった。
明らかに、意図的な行為。
その嫌がらせは、既に1週間以上も続いていた。
.
.
.
.
.
放課後。
宮舘は、一人で校内を探し回っていた。
教室、廊下、階段。
校舎のあちこちに設置されたゴミ箱の中身を、1つずつ確認していく。
❤️「……ない」
次のゴミ箱へ。
❤️「ここも……」
そしてまた次へ。
夕方になり、校舎の窓から差し込む光が、少しずつ赤みを帯びていく。
❤️「……あった」
ゴミ箱の奥に、見覚えのある表紙が覗いていた。
引き抜いてみると教科書だった。
無事な姿ではなく、ページは何枚も破られ、表紙には泥とゴミが付着している。
宮舘は暫く、それを見つめていた。
そして、ぎゅっと胸元へ抱きしめる。
❤️「……」
唇を噛む。
悔しかった。
怖かった。
何より、何もできない自分が歯痒かった。
けれど、犯人の目星はついている。
――あの女子生徒。
後夜祭のフォークダンスで、自分の手を強く握り締めた少女。
『……欠陥の分際で、調子に乗んな』
あの声を、宮舘は忘れていなかった。
しかし、名前もクラスも、何も知らない。
この広い学園内で、その少女一人を見つけることはとても困難なことだった。
.
.
.
疲れ切った宮舘は、俯いたまま中央階段を上っていた。
一歩、また一歩、足取りは重い。
❤️「(どうして、俺がこんな目に……)」
考えれば考える程、思考が暗くなっていく。
あと数段で、踊り場に足を踏み入れる時だった。
❤️「……え?」
ふと、目の前に人影が立っていることに気付いた。
階段の上、逆光になったその姿。
誰なのか確認するより早く
――ドンッ!
❤️「……あっ――!」
突然、両手で胸元を強く押された。
身体が大きく後ろへ傾く。
手すりに掴まろうとするが、間に合わない。
重力に引かれるまま、宮舘の身体が宙へ放り出された。
❤️「……っ!」
次の瞬間。
ーーグキッ!
❤️「いっ…!」
最初の一段を踏み外し、右足首に鋭い痛みが走った。
バランスを失った宮舘は何段ものコンクリート階段を激しく転がり落ちていく。
咄嗟に両腕で頭だけは庇った。
しかし一番下まで落ちた途端に足首が、焼けるように痛んだ。
❤️「……っ、は……」
脂汗が額に滲み、宮舘は震える手で右足首を押さえ、その場に蹲る。
痛い。
動かせない。
息をするだけでも、痛みが響く。
ーーコツン。
静かな靴音が聞こえた。
ーーコツン。
また一つ、ゆっくりと階段を下りてくる。
❤️「……い、た…っ」
宮舘が顔を上げると、そこに立っていたのは――やはり、あの女子生徒だった。
「……あんたさ」
酷く冷たい目をしている。
「調子に乗るなって言ったよね…?」
❤️「……っ」
宮舘と女子生徒の目が、しっかりと合った瞬間だった。
❤️「……え?」
女子生徒の横に浮かび上がった文字。
それは今まで見てきたメンバーのシステム表示とは明らかに違っていた。
激しく、不安定に、壊れかけた画面のように明滅している。
【1年A組:須野村 雪】
【ヒロイン】
❤️「(……須野村、雪)」
その名前を心の中で呟くと、頭の奥に電撃のような衝撃が駆け抜けた。
❤️「(……それって…)」
未プレイの宮舘でも、その名前は覚えていた。
この恋愛シミュレーションゲームにおいて、プレイヤーが操作する主人公のデフォルトネーム。
目黒 蓮と結ばれることを前提として存在する――本来のヒロイン。
❤️「……」
宮舘の瞳が、大きく揺れる。
漸く理解したのだ。
――悪役令嬢、とは何かを。
目黒と結ばれるのが、ヒロインである須野村雪ならば。
――宮舘は、その邪魔をするライバル。
しかし、大前提として、このゲームにライバルキャラは存在しない。
だから、彼女は宮舘を【欠陥】と呼んだのだ。
❤️「……っ」
宮舘の脳裏に、ゲームを始めたばかりの頃の記憶が蘇る。
あの時、最初に表示された指令。
【指令:ヒロインより先に対象を攻略せよ】
ただのゲームの目標だと思っていた。
だから宮舘は夢ならば、目黒と結ばれてもいいだろうと考えた。
けれど、これは自分が本来のシナリオから目黒を奪っているということになる。
そして、学園祭で深澤が告げた言葉。
💜『……今は、すごく順調みたいだね』
💜『だけどこの先、君に大きな困難が訪れるよ』
あの時は、ただの占いだと思っていた。
今なら分かる。
――あれは、予言だった。
いや。
この世界の【本来の物語】が、宮舘を排除しようとしているのだ。
❤️「(……痛い)」
激痛の走る右足首を宮舘は必死に押さえた。
身体は震えている。
この先、自分がどうなるのか分からない。
この世界にとって、自分は【間違った存在】なのかもしれない。
宮舘は顔を上げ、階段の上から見下ろす須野村を、真っ直ぐに見る。
❤️「……」
例え、自分がこの世界にとっての【欠陥】だったとしても、目黒と過ごした日々まで、偽物になるわけじゃない。
初めて一緒に食べたお弁当。
街中で繋いだ手。
学園祭で見せてくれた笑顔。
❤️「(……そんなはず、ない)」
あの時間が。
あの笑顔が。
全てがただのゲームのシナリオだったなんて、認めたくなかった。
絶望の淵に追い込まれても、その瞳から光は消えなかった。
今まで以上に、強く燃え上がっていた。
❤️「(俺は……目黒との時間を手放さない)」
例え、この世界の【正しい物語】に逆らうことになったとしても。
――目黒と一緒にいたい気持ちは本物だから。
コメント
7件
な、なるほど! そういうコトだったのか!? でも❤️なら大丈夫!! 積み上げてきた確かな思い出があるのよ🥰 100%まであと少しだけど、展開が気になり過ぎるよ!! ぜっちゃんマジックやな✨✨✨
だて…( ; ; ) だてに負けない奴なんていない!大丈夫!