テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#めめだて
雪月❄️
398
クリオネ?
100
右足首を襲う激痛に顔を歪めながら、それでも宮舘は須野村を睨みつけた。
❤️「だからって……こんな酷いことしなくてもいいじゃないか……!」
そんな宮舘を見下ろして、須野村は鼻で笑った。
「黙ってくんない?」
その言葉には、ただ自分の思い通りにならないことへの苛立ちが滲んでいた。
「…………あんたさ。もしかして、あたしと同じだったりする?」
❤️「……?」
――同じとは、なんだろうか。
わけが分からず、宮舘は痛みに耐えながら無言を貫いた。
「……なーんだ。……本当に欠陥か」
宮舘の薄い反応に、須野村は興味が薄れたように淡々と答えた。
「せっかく、めめと付き合える世界に来たのに……あんたが隣にいるせいで全部、パー」
その表情には怒りが浮かんでいた。
「どうしてくれんの?」
❤️「……そんなこと、言われても」
「……はぁ。……まぁ、始めはね?諦めて他のメンバーを攻略しようと思ったんだけどさ」
須野村は一度、視線を逸らした。
しかし次に宮舘を見た時、先程までとは比べものにならないほど濁った瞳をしていた。
「……あたし、やっぱりめめがいい。めめじゃなきゃ嫌っ…!」
ぞくり、と背筋が冷える。
「……あたしね、ヒロインなの。あんたとは、違う」
須野村が、ゆっくりと笑う。
「……神様が言ってたんだぁ」
一歩、宮舘へ近付く。
「チャンスをくれるって…!」
歪んだ笑みを浮かべた瞬間。
「……舘さーん?」
階段の上から、聞き慣れた声が響いた。
❤️「……!」
目黒の声だ。
自分を探してくれている。
今なら、助けを求められる。
❤️「(目黒……!)」
声を上げようと、必死に息を吸い込んだ。
その瞬間、パチンッと乾いた指鳴らしが階段に響いた。
❤️「……え?」
視界が、ぐにゃりと歪んだ。
画面そのものが壊れたように、景色が大きく揺らぐ。
次の瞬間、そこにはあり得ない光景が広がっていた。
❤️「……っ!?」
階段の途中に立っていたはずの須野村が、階段の下へ。
階段の下で足を抱えていたはずの宮舘が、階段の途中へ。
二人の位置が、入れ替わっていた。
何が起きたのか理解できない。
そして、異変はもう1つあった。
先程まであった右足首の痛みが、完全に消えていた。
🖤「舘さん……?」
階段の上から目黒が顔を覗かせ、その目が大きく見開かれる。
宮舘は階段の途中に立っている。
その下には足首を押さえ、涙を流しながら倒れ込む須野村がいる。
この光景だけを切り取れば、どう見ても。
【宮舘が須野村を階段から突き落とした】
そうとしか、見えなかった。
❤️「目黒……!」
必死に叫んで弁明しようとする。
❤️「(これは……っ!)」
けれど、声が出ない。
❤️「(……なんでっ!?)」
何度叫ぼうとしても、そこから漏れるのは、微かな息だけ。
❤️「(声が、出ない……!)」
ならば、と宮舘は腕を動かそうとした。
違うと伝えたかった。
ジェスチャーでもいい。
目黒なら、きっと分かってくれる。
そう思って、手を伸ばそうとする。
けれど、動かない。
指先一つ、腕一本。
身体そのものが、透明な枷に縛りつけられたように固定されていた。
❤️「(どうして……!)」
恐怖が一気に込み上げる。
何もできない。
何も伝えられない。
ただ、目黒を見つめることしかできない。
そしてーー階段の上に立つ目黒の瞳が、ゆっくりと冷えていった。
今まで一度も見たことのないような、冷たい目をしている。
❤️「(……目黒…)」
声にならない声で、名前を呼ぶ。
その直後、見覚えのある文字が浮かび上がった。
【目黒 蓮の好感度:??%】
その横には、重々しい錠前のマーク。
続いて、無機質なシステム音声が流れる。
【目黒 蓮が疑心暗鬼となり好感度がロックされました】
【解除しない限り好感度は上昇しません】
【ただし好感度の減少は起こるので注意して下さい】
❤️「…………」
宮舘は、呆然と文字を見つめた。
好感度が、ロックされた。
これまで積み重ねてきたものが、一瞬で閉ざされたような感覚だった。
昼休みに交わした言葉。
手作りのお弁当。
一緒に歩いた放課後。
学園祭の約束。
目黒が練習してくれたパンケーキ。
不器用な手作り弁当。
そして、何より『舘さん』と呼ぶ声。
その全てが、消えてしまうようだった。
❤️「(……違う。………違うんだ…)」
必死に唇を動かしても、声にはならない。
そんな宮舘の横を、目黒が通り過ぎた。
振り返らず向かった先は、階段の下で泣いている須野村だった。
🖤「大丈夫!?雪ちゃん」
「う、うん……っ」
須野村は涙を拭いながら、弱々しく答える。
「足首を、捻っちゃって……動けないの…っ」
🖤「……肩、貸すから。保健室行こう」
「うん……ありがとう。目黒君」
目黒は優しく、須野村の身体を支えた。
そして、そのまま歩き出す。
一度たりとも宮舘を見なかった。
❤️「…………」
胸の奥が、ぎゅっと締めつけられる。
すると目黒の影から顔だけを覗かせた須野村が、宮舘を振り返った。
涙で濡れていたはずの顔には、もう悲しみなど残っていない。
ゆっくりと口が開き、赤い舌が露わとなる。
その表情はどう見ても、ヒロインがするものではなかった。
そして、須野村は勝者のような笑みを浮かべると、そのまま目黒と共に廊下の角へ消えていった。
2人の姿が見えなくなった途端、ふっと身体の拘束が解けた。
❤️「……っ」
宮舘の膝から力が抜けその場に崩れ落ちた。
❤️「……そんな」
唇が震える。
❤️「……嘘だ」
足の痛みは消えている。
それよりもずっと深い場所が痛かった。
――信じてもらえなかった。
それが、何より苦しかった。
そして、須野村が持っている力。
世界そのものを、自分の都合のいいように書き換えてしまうほどの力。
それを目の当たりにした恐怖が、遅れて身体を震わせる。
目から、涙が溢れた。
一度流れ始めた涙は、もう止まらなかった。
この日を境にーー宮舘と目黒は、再び口を利かなくなった。
以前は、宮舘が目黒を避けていた。
自分が傷付くことを恐れて、逃げ回っていた。
今度は違う。
避けているのは、目黒の方だった。
約束していたお弁当も。
一緒に過ごす時間も。
何もかもが、最初から存在しなかったかのように消えていった。
手作りのお弁当を交互に作ろうと話した、あの日さえも。
❤️「…………」
宮舘は、ただ立ち尽くしていた。
何をすればいいのか分からない。
どうすれば誤解を解けるのかも分からない。
須野村が、世界そのものを動かせるのなら、自分に何ができるというのだろう。
❤️「(……どうすればいい?)」
瞳を閉じれば思い浮かぶのは、嬉しそうに笑っている目黒の顔。
偽物じゃないと信じたかった。
けれど今の宮舘には、その確信さえも伝う涙と共に見えなくなっていた。
……暗い展開が続きますが、
お付き合い下さい……(´;ω;`)ウッ…
コメント
17件

💙助けてー😭
最近からzetsuさんの作品を読みはじめましたが、とても心に染みます😭 続き楽しみに待ってます!