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「残念ながら、お嬢さんの命は、もう残り少なく、生きられるのは後長くもって1年です……」
私は、私の誕生日に、余命宣告をされた。
私は、齢3の時、虚血性心疾患で倒れた。
幸い、命は助かったが、病院生活をしなければならなくなった。
虚血性心疾患とは、心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が動脈硬化によって狭くなったり、詰まったりして心筋への酸素供給が不足する病気だ。
最悪の場合、即死したりするらしい。
虚血性心疾患になってから、12年経ち、15歳になった今日、余命宣告された。
病室に戻り、母は、仕事場へと戻った。
静まり返り、自分の胸に触る。
トク,トク,トク,と、心臓は鳴っている。
(この心臓も後、1年で動かなくなる。)
悲しいのかわからない。
涙すら出ない私は、きっと感情を何処かに置いて来てしまったのだろう。
後1年、やりたい事が無い私は、もう放心状態で、なんならもういっそ即死して、楽になりたい。
「ガラガラ」
病室に誰かが入って来た。
(誰?)
言葉が、声にならなくて、動けないまま、入って来た人と目が合った。
(男の子…?)
「あ、病室間違えました…」
身長差はあまり無いように見える。
「貴方…誰?」
声になった言葉は、あまりにも冷たく、自分でさえ驚いてしまった。
「!!」
入って来た男の子もその冷たい言葉に驚き、微かに震えていた。
「ほ、堀川…ほりかわm…ゴホ!ゴホ!ハァ、ハァ、ゴホゴホ」
急に咳き込みだし、苦しんでいる。
「!!な、ナースコール!だ、誰か!うぅ…」
肝心な時に、胸が引き締められて、息が上手く吸えなくなる。
(誰…か………)
そのまま、私の視界は暗くなった。
「ーーーいさん!木佐坂乃衣さん!」
看護師さんの悲痛な叫び声で、目を覚ました私。
救急治療室に運ばれたのだと、すぐにわかった。
口には酸素マスクが着けられていた。
「!乃衣ちゃん!よかったぁ、目を覚ましたのね…!」
目に涙を溜めて、看護師さんは言う。
「だ、れ…が……気づ…い…て、」
上手く言葉を口にできない。
それでも看護師さんは読み取ってくれた。
「堀川真春君が、ナースコールを押してくれたの。後、10秒でも気づくのが遅れてたら、死んでしまってたかもしれなかったのよ…!」
(あの、男の子か…)
また視界が暗くなってきた。
3日後、私は、救急治療室から、前の、病室に移さてた。
本を手に、読み始めようとした時、扉が開いた。
「大丈夫?」
「!」
入ってきたのは、お母さんだった。
お母さんは、大企業の会社に勤めていて、滅多に休む事ができない。
「お母さん、仕事は?」
「そんな事言ってる場合?どうにか上司に縋り付いて、やっと休みを貰えたんだから…!」
お母さんの上司は、とても厳しくて、滅多に休みをくれない。
「でも、私の為になんで?」
「娘が倒れたて、駆けつけない親は、どこに居るの!?」
「!」
「!あ、ごめんなさい、声を荒げてしまって…」
「ううん、大丈夫。ありがと、お母さん。」
「これから、買い物してくるんだけど、何かいる?」
「ううん、大丈夫。」
「そう…じゃあ、また午後」
「バイバイ」
病室を出ていく母に、手を振る。
まだ、知らなかった。
乃衣が、母に会えるのが、これで最後だと言うことをーーーーーーーーーーーーーーーー
「入っていい?」
「!」
その声は、4日前、病室を間違えた堀川だった。
「入って」
扉が開く。
「大丈夫?」
「お陰様で」
「そっか、よかった」
堀川が安心した素振りを見せる。
「ところで、貴方、何故病院に?」
「僕、持病があるんだ。」
「何と言う?」
「虚血性心疾患。」
「!」
同じ病を持つ人を知った乃衣。
「それって…」
「うん、君と一緒!お揃い!…ところで、君、名前は?僕は堀川真春。真春って呼んで。」
「私は、木佐坂、乃衣。」
「木佐坂、乃衣か、よろしくね!乃衣ちゃん!」
15歳になって、ちゃん付で呼ばれるのは、ちょっと恥ずかった。
「よろしく、真春君。」
「ところで、乃衣ちゃんは、いつからここに居るの?」
「私は、3歳から。真春君は?」
「僕は5歳から!幼稚園で、寝てた時が始まり!間一髪だったってさ!」
「危なかったのね。」
「うん!」
「ところで、貴方何歳?」
「僕は、今年で15歳!」
「!同い年だったの!?」
「え!乃衣ちゃん、15歳なの!?」
「うん。」
「うわぁぁあ、やったー!同じ病で、同い年!偶然だと思えない!!」
「確かにそうね。」
飛び跳ねて喜ぶ真春を見ていると、ある疑問を抱いた。
(待って…何で、真春君は、今こうして飛び跳ねていられるの…?何で、普通に歩いていられるの…?)
私は、いつも緊急事を想定して、監視カメラ付きの個室で、用事無しでは、立ち歩くのは禁止だって言われている。
「?乃衣ちゃん…?」
(そうよ、最初から違和感はあったのよ!入院服を着ているのに、手すりとか、支え無しで普通に立ち歩けるのかしら…真春君は、5歳の時に発覚したって言ってる。個人差…?私が重病化しているだけで、真春君が、普通なの……?)
「ねえ、真春k…」
「ゴホ、ゴホ、ハァ、ハァゴホっゴホ、ゴホ、乃、ゴホゴホッ衣、ちゃ、ゴホン、ナースコ…」
バタっ……
「ま、真春君!……な、ナース、コール!ナースコール!!早く来て!真春君が…!真春君が…!!」
1分もしないうちに、搬送隊がやってきて、真春を担架に乗せて、行ってしまった。
1人残された乃衣は、ベットの上で、必死に祈っていた。
(神様、お願い…!真春君を、助けて…!!!)
真春が、運ばれてから、2日経った。
乃衣は、生きる気力を無くしたかのように、1点を見つめてばっかりだった。
「乃衣さん…」
看護師達も、乃衣を気の毒に思っていた。
真春は、運ばれてから、1命を取り留めたが、未だ目を覚ましていない。
「真春君……」
1点を見つめながら、ぼそっと彼の名を口にする。
「乃衣ちゃん。」
声を掛けてきたのは、乃衣とよく話してくれる看護師の山枝さんだ。
目線を山枝さんに向けて、
「何?」
と、冷たく言う。
「…、真春君の、事よね。」
「……」
コクっと頷く。
「‥大丈夫。大丈夫よ!真春君は、行っちゃったりしない!まだ、意識が戻ってないけど、明日か、明後日にでもなったら、ケロって戻ってくるはずよ!だから…ね。大丈夫、大丈夫。真春君が、戻ってくるのを待っていようね。」
「…でも、戻ってくるって、確定してないじゃん。」
「じゃあ、戻ってこないっていう事も、確定してません。」
「!」
山枝さんは、乃衣に微笑み、
「じゃあ、そろそろ仕事に戻らなきゃ…また明日か、運が良かったら、夕飯の時に…バイバイ」
「うん、またね、山枝さん。」
その後、昼食を終えて、編み物で遊んでいると………
「乃衣さん!乃衣さん!真春君が!真春君が、意識を取り戻すたわよ!」
「!!」
看護師さんが、乃衣の病室に駆け込んで来た。
「ほ、本当…!?」
「嘘を言う訳がないじゃ無いですかぁ!!」
「じゃ、じゃあ、真春君に…」
ふふ、と看護師さんが微笑んで、
「まだ、会ってはいけませよう。」
「うっ…そうだった」
シュンと、項垂れていると、
「明日にでも、戻ってきますよ。」
「本当?」
「えぇ。信じて、待ってなさい。」
「はい!」
その翌日……
「乃衣〜!」
勢いよく、病室に飛び込んで来た真春。
「その調子だと、もう大丈夫ね」
「?なんのこと〜?」
まるで、前より幼くなっているように感じる。
「真春君、貴方どこの病室に?」
「?俺は、乃衣ちゃんの隣!167でしょ?僕、168号室!」
「え!?そうだったの!?」
(まさか、こんな偶然な事…あるのかな…)
「あ、真春君!治りたてなんだから、今日くらい、安静にしてなさいな!」
廊下を通ってきた看護師さんに怒られ、はーい、と渋々帰った行った。
「乃衣、木佐坂…乃衣。」
病室に戻った真春。
乃衣の名前を繰り返しながら、ベットに横たわった。
翌日、真春は、目を覚まして、病室を飛び出した。
(乃衣ちゃん、乃衣ちゃん🎵)
「乃衣ちゃー…」
扉を開けようとすると、乃衣の部屋から、声がした。
(盗み聞きしちゃお)
そっと扉に耳を当てる。
「乃衣さん、残念ながら、貴方の心臓は、思ったよりも弱く、次発作したら、即死。治療が間に合っても、植物状態になってしまう。それで……」
(即死…!?)
真春は、扉から耳を離し、急いで自室に戻った。
ベットの、上に座って、掛け布団を頭からすっぽりかぶった。
(乃衣ちゃん…嫌だ、嫌だ、絶対嫌だ!死んじゃだめだ。死んじゃ…)
ぼろぼろと涙が溢れ出てくる。
「やだよぅ、乃衣ちゃん……」
子供のように泣く真春。
しばらく泣いて、気持ちを整理した真春は、もう1度乃衣の居る167号室へ向かった。
すると、乃衣は病室に居なかった。
(あ…あれ?)
真春は、顔が真っ青になっていくのを感じた。
(まさか…もう発作したのか………!!)
「あ、あぁ、あぁぁぁ…」
居ても立っても居られなくなり、急いで受付カウンターへと走った。
しかし、発作しかけ、廊下のスロープにしがみついて、咳き込んでしまう。
「大丈夫?!しっかり!」
通りかかった看護師さんは、真春の背中を撫でてくれた。
「あ、あの、167号室の、木佐坂乃衣さんって、今どこにいますか?」
もう走るのを無理だと感じた真春は、通りかかりの看護師さんに聞いた。
「木佐坂乃衣さん…あぁ!ちょっと待っててね。今確認してくるから!」
看護師さんは、走って行ってしまった。
「乃衣…」
一方、乃衣は緊急治療室に居た。
「お母さん……」
先程、乃衣の母が交通事故に遭い、意識不明の重傷のまま、この病院に運ばれてきた。
未だ意識は無く、目を覚ましてない。
「お母さん……居なくならないよね?お父さんみたいに、ならないよね?」
震えながら、目を覚さない母に問いかけ続ける。
「私が、3歳の時に発作してから、1年も経たない内にお父さんは、過労死して旅立ったよね……。私が、発作しただけに、もっとお金がないとって言って副業増やしたり、休日まで働いて…結果、仕事のやり過ぎで過労死しちゃったもんね……。」
意識の戻らない母に問いかけ続けても、乃衣の涙腺が緩くなる事がない。
「私が、いなければ、今もしかしたら生きてたお父さんと、意識のある元気なお母さん2人で、幸せに暮せてたのかもしれない。ごめんなさい…お母さん……私、移植手術するの、辞めるね。残り少ない時間だけでいい。……あのね、最近…私隣の堀川真春君っていう同い年の男の子に、恋を抱いたの。本当は、もっともっと、生きて彼と一緒に生涯共にしたいって思うけど、お母さんが…」
ガチャ。
緊急治療室の扉が開く。
「乃衣さん…時間です…また明日、会いにこよ?ね。」
「はい…」
(私に明日があるかなんてわからない。もしかしたら、今日の夜、発作して、そのまま行っちゃうかもしれないし…)
病室に戻ると、一通の手紙が置いてあった。
(誰かしら……)
【乃衣へ
今どこにいるの?でも多分この手紙を見てるから病室にいるんだろうね。話したいことがあるから、僕の病室にきて
by真春】
「真春君……?」
真春の病室に行ってみたものの、真春はベットで寝ていた。
(待ちくたびれてしまったのかしら…)
「真春君?…!!あ、あぁ…!!だ、誰か!!真春君が!真春君が!!」
(やだ…!ヤダヤダ!絶対にいや!やだ、考えたく無い…考えたく…)
「ハァ、ハァ、ウ…」
(ダメ、今発作するの…は……)
「乃衣……」
ベットの隣に椅子を引っ張り出して座る。
もう一生、目が覚さないかもしれない彼女を見る。
2人が発作を起こしてから、緊急治療室に運ばれたのは、およそ10分だったらしい。
その後、すぐに運ばれた。
真春は、発作してから1週間、意識がなかったらしい。
だが、乃衣はもう心臓が強くなかったが命は取り留めた。
しかし、前に医師に言われたように、植物状態になってしまった。
(なんで、自分だけ、助かったんだよ……なんで……なんで!!)
「うぅ…グズ……」
ぼろぼろと涙が溢れ出てくる。
「乃衣ぃ……僕、まだ君に…!!」
「スゥ…スゥ…」
寝息を立てて目を閉じている乃衣。
「乃衣……好きだよ。」
椅子から立って、乃衣の暖かい頬を撫でる。
「聞こえてないかも、しれないけど…グズ……はぁ…ずっと、ずっと、大好きだよ。初めて病室で会った時、1目惚れしてさ、それからずっと、ずっとこの時間が続けばいいのにって思った。……ねえ、いつ、目を覚ましてくれる?」
乃衣の手を取る。
「乃衣は、俺のこと、どう思ってるの?」
握っても、握り返してくれない。
「乃衣、看護師さんから聞いたよ。お母さんもお父さんも、もう此処には居ないんだってね。後を追うの?ダメだよ。だって、僕が居るんだから。」
手をそっと離す。
「乃衣……大好きだよ………」
そう言うと真春は体を屈めて、乃衣に顔を近づける。
そして、そっと、唇と唇を重ねる。
顔を上げる。
「やっぱり、ダメだね…。童話なんて、ただの作り話に過ぎない。でも…起きて欲しかったな…」
「スゥ…スゥ…」
あれから、3年が経った。
未だ目を覚さない彼女。
僕は、乃衣が受けなかった移植手術などを勧められ、丈夫な体になった。
家で暮らせる日々が戻り、毎日健康に気を遣いながら過ごしている。
「乃衣、会いにきたよ」
週に数回、乃衣の病室に訪れ、世間話を語り続けている。
家で猫を飼うことになった、だとか、医師になる事にして、勉強が忙しい、だとか。
それでも、ぴくりとも動いてくてない乃衣。
「じゃあ、また生てたら会いにくるね。」
そんな繰り返しの日々。
今日も、また彼女の眠る病室に向かう。
「やあ、また来たよ。今日は…そうだな、何を話そうか…」
「スゥ…スゥ…」
「今日は、飼い猫にご飯をあげたんだけど、食べてくれなかったんだよ〜、それで、母さんがあげると食べたんだよ〜、酷くない?」
「そう…だね」
「でしょーって…へ?の、乃衣?」
「おはよー…真春…」
「!!!」
薄目を開いて、真春を見つめる乃衣。
「えへへ〜……久しぶり〜」
「あぁぁ、乃衣…、乃衣!乃衣〜!」
ぽろぽろと涙が溢れてくる。
「起きたのか…!!」
「うん、おはよう」
「おはよう…乃衣……!!」
ぎゅっと抱きしめる。
「真春?」
「乃衣…、よかったぁ、起きて、本当に…よかったよ〜!」
「真春…、私も、死ぬ前に、真春に、会えてよかったよ」
「死ぬなんて、縁起でもない事、言うな〜!!」
「ねえ、真春…そこの、引き出し、開けて…そう、そこ」
言われるがままに開けると、一通の手紙が置いてあった。
「それ、私が発作する前に見た、真春からの手紙。…ねえ、話したい事って、なあに?」
「…、乃衣、僕、初めて君に会った時から、今でも、ずっと、ずっと、これからも、ずっと、大好きだ。」
「!!」
「だから、付き合って、くれませんか!!!」
「こんな…」
「?」
「こんな、夢みたいな事、あっていいの……?」
「それって…どういう?」
「私も、初めて会った時から、ずっと大好きだよって言ってるの!」
「!!!!」
「ねえ、真春…私、死にたくない…!!」
「!?それって…」
「私、死期が近づいてる…」
「あ……あぁ……」
「ねえ、せっかく、付き合ったんだし、今晩泊まっていきなよ」
「え…でも、ダメじゃない?」
「いいの!看護師さんに言っとくから、夜ご飯食べてから、また来てね!」
「う、うん、わかった!じゃ、また後で!」
「入っていい?」
「いいよ〜」
ガラガラ…
「いらっしゃい!」
「お邪魔します」
時刻:19:20分。
就寝時刻まで、残り1時間40分。
真春と乃衣は、話したいことを、順々に語り尽くした。
「もうそろそろ、寝るから、真春君は…」
「看護師さん!今日は泊まってくの!」
「えぇ…でも…」
「大丈夫!許可はもらってるから!」
「ハァ…わかったわ。早く寝るようにね」
『はーい』
電気が消され、窓から入る月光が、真春と乃衣を照らした。
「乃衣…」
「なあに?」
「抱きついても…いい?」
「うん」
同じベットで寝るらしく、少し窮屈ではあったが、そんな事、どうでもよかった。
ただ、今、今だけはーーーーーー
「乃衣、好きだよ」
「私も、大好き」
ぎゅっと抱きしめる。
乃衣も、ぎゅっと抱きしてくる。
「ねえ、真春…私、寝てる時、夢を見たんだけど…」
「どんな?」
「真春が、私にキスしてきた夢。」
「!//」
「?どーしたの?」
「いや、別に…///」
乃衣が植物状態になったと知らされた日のことを思い出す。
重ねた唇。
「それでさ、私達、付き合ったから、そういう事、してもいいんじゃないかって……いい?」
「…いいよ」
「やったー!」
「じゃ、じゃあ……」
唇を重ねる。
柔らかい、乃衣の唇が、真春の唇に重ねってくる。
「好き」
「僕も」
次の日、目が覚めると、乃衣は冷たくなっていた。
どんなに呼んでも、揺さぶっても、ピクリとも動かなかった。
「乃衣…」
目から、涙が溢れてくる。
昨日の事が、夢みたいだ。
「乃衣……」
最後に、もう1度話せるのなら、そんな叶わない願い。
なんなら、最後に、話したり、抱き合ったり、キスし合った事すら、神が与えてくれた、最後のチャンスだったのかもしれない。
そう思い、真春は、前を向く。
「乃衣…俺、頑張るよ!医者になって、俺達みたいな、重病も、治せるような、凄い医者になる!だから…だから!見ていてくれ!天国で!」
真春は、歩き出す。
決して、振り返る事無く。
〈頑張って!真春!〉
後ろから、彼女の声が、聞こえたような気がした。
「あぁ!頑張る!」
振り返らず、言葉を返す。
真春と乃衣の恋は、短い間だったのかもしれない。
しかし、真春は信じている。
たとえ、離れ離れでも、違う世界にいても、この愛の絆は、絶対切れないと。