午前2時17分。 寝室の携帯がけたたましく震え、俺――城戸遼介は渋々目を開けた。
画面には「署長」の文字。嫌な予感しかしない。
「……城戸です」
『城戸、すぐ来い。第三区の倉庫街で殺人だ』
「こんな時間に? 所轄の事件じゃ――」
『被害者は……警察官だ』
その言葉で、一気に眠気が吹き飛んだ。
現場は港近くの錆びた倉庫だった。パトカーの回転灯が赤く地面を舐め、雨粒が光を反射して揺れている。
白いシートの下、見慣れた制服の袖口が覗いていた。
「被害者、巡査部長・佐藤誠、三十六歳。今夜は非番だったはずです」
鑑識係が低い声で報告する。
俺はしゃがみ込み、シートをめくった。
佐藤の顔は蒼白で、左胸には拳銃で撃たれた痕。至近距離、しかも――警察官が使う9ミリ弾。
背筋が冷たくなる。
警察官が、警察官に殺された可能性が高い。
ふと、倉庫の奥の闇から何かがきらめいた。
近づくと、それは小さなUSBメモリだった。
拾い上げた瞬間、背後で声がした。
「……城戸さん、それは署に持ち帰らないほうがいい」
振り返ると、そこには見慣れない刑事が立っていた。所属も名乗らず、ただ鋭く笑っていた。