テラーノベル
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見知らぬ刑事は、名刺も見せずに言った。「それ、持ち帰ったらあんたも消される」
声は低く、妙に落ち着いていた。
「……誰だ、お前は」
「捜査一課、だとでも言っておこう」
質問を重ねる間もなく、男は闇に紛れて去っていった。
残された俺の掌の中で、USBメモリはひどく冷たかった。
署に戻り、デスクトップに接続する。パスワードはかかっていなかった。
フォルダはひとつ。「MAY07」。
開くと、そこには監視カメラの映像ファイルが並んでいた。
再生すると、画面には会議室らしき場所。
スーツ姿の男たちが座り、中央の机には札束と……拳銃。
中には、現職の警視正や、俺が知るベテラン刑事の顔もあった。
映像の最後に、佐藤巡査部長の顔が映った。
彼は会議室の端で何かを撮影していたが、その直後――
扉が開き、拳銃を構えた別の警察官が入ってきた。
画面はそこで暗転。
背筋に氷が這う。
佐藤は、この映像を誰かに渡そうとして殺されたのか?
考えを巡らせていると、背後の窓ガラスが割れた。
乾いた音とともに机に弾痕が走り、ディスプレイが吹き飛ぶ。
反射的に床に伏せ、拳銃を抜く。
外には、黒いフルフェイスヘルメットの男がいた。
銃口が再びこちらに向く――その瞬間、廊下から叫び声が響いた。
「城戸! 逃げろ!!」
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