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#ハッピーエンド
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「ははっ、いい顔してるなベル」
いつの間にか立ち上がったケンラートは、パウェルスの首筋に剣を突きつけた。
あれほど蹴り倒したのに、まだ立てるなんて。さすが元軍人。無駄に頑丈だとベルは歯ぎしりをしながら、ケンラートを睨みつける。
ケンラートは元軍人だ。身体は鍛えているし、そこそこ剣も扱えるだろう。
パウェルスまでは、大股でも4歩。一気に距離を詰めたとて、間違いなくケンラートの方が早くパウェルスの首に刃を埋め込むことができる。この状況では下手に動くことはできない。
なら、別の方法で時間を稼ごうと考えるが、現状を打破できる案なんてすぐには出てこない。
焦りは禁物、冷静になれ。と、ベルは自分に言い聞かせるが、どうしたって動揺を隠すことはできない。
せめて表情だけでも冷静でいようとするが、わずかな唇の震えはしっかりケンラートに見られていた。
「ベル、ここに跪け。俺様に首を垂れろ」
案の定、ケンラートはえげつない命令を下した。
いっそクルトの上で跪いてやろうかとすらベルは思った。しかしケンラートは、クルトから少し離れた位置を指で示している。
不本意だが、ベルは素直にクルトの背中から降りる。こっそり彼のわき腹につま先を埋め込んでから。
腎臓近くのそこは急所の一つ。自分は痛覚が麻痺していたから動けたけれど、本来なら激痛が走り、しばらくは動けないはずだ。
ベルがそんなことを頭の隅で考えながら、膝を折ろうとしたその時、
「ベル様、なりません!老い先短い爺のことなど放っておいてください!!」
迷いを振り切ったような顔つきになったパウェルスは、あらんかぎりの声で叫んだ。
ベルは気付いている。パウェルスが唯一の肉親である孫娘を人質に取られてしまったことを。
そうでなければ、かつて剣豪と謳われた男がこんな簡単に屈するわけがないからだ。
しかしパウェルスは、今、自分を選ぼうとしている。孫娘が成長する姿を楽しみにしているのに、それさえも捨てようとしている。
そんな血の吐くような恩師の叫びを聞いても、ベルはあっけらかんと笑う。
「ごめん、師匠。それはできないよ」
だって領印を破壊するときに、決めていたのだ。誰も犠牲にしないと。
罪も罰も、全部自分が負うと決めていた。そして、今この時点でもその決意は変わっていない。
パウェルスはベルにとって恩師だ。でもその前に、ケルスの領民だ。父であるラドバウトが愛し護り続けた領地で、幸せになるべき人間の一人なのだ。
ベルだって恩師の幸せを心から望んでいる。
だから笑って、床に落ちたゴミでも拾うような仕草で地面に跪いて首を垂れた。
コメント
1件
うわぁ…重い、でも熱い展開だったね。ベルが「罪も罰も全部自分が負う」って決めた覚悟、もうここまで来ると本当に格好いいよ。師匠パウェルスが「老い先短い爺のことなど放っておいてください」って叫んだのに、ベルは笑顔で「それはできない」って返す…その対比が胸に刺さる。読んでてこっちまで息が止まった。次が気になる…!