葛葉 「 あ …… ! 」
叶 「 お、なんか分かった? 」
葛葉 「 分かった、かも … いや、これだわ。 」
伏見 「 えぇ? そんな証拠なんてないっすよ〜。気のせいじゃない? 」
ガッさんの指輪、それが犯行現場らしきプールに落ちていたことは決定的な証拠だ。
でも、ガッさん自身は、落としたものとはまた別の、同じ指輪を着けている。
その理由は ……
葛葉 「 部屋のクローゼットに入ってる沢山の衣装だ。 」
伏見 「 …… !! 」
葛葉 「 皆も部屋のクローゼットを開けてみれば分かると思うんだけど、同じ服が何着も入ってただろ? 」
長尾 「 あぁー … 入ってたな。 」
加賀美 「 確かに … 色んな衣装が入ってましたね、ピアスとかの分まで … あ、 」
葛葉 「 それっす社長、ガッさんは多分 … 指輪を落としたことに気付いて、そのクローゼットの中から一つだけ指輪を取り出してはめたんだ。 」
「 本当にそうしてるかどうかは … クローゼットを調べれば分かる。 」
俺がそう指摘したら、裁判場は静まり返った。
皆がガッさんの方を見た。
ガッさんは、口元を抑えて右下へ視線を向けていた。
驚くことに、動揺はあまり見られない。
なんだ? その余裕は。
そう考えていたら、彼の視線がバチッとあった。
そして、口元から手を下ろしたかと思ったら ……
伏見 「 …… で? w 」
ガッさんは、ケロッとした笑みを浮かべてそう言った。
葛葉 「 は? 」
伏見 「 いやだから … w それがどうしたの? w 」
長尾 「 … えっとぉ、ガクさーん … ? 」
伏見 「 言いたいことはよく分かった … 分かったけどさ。 」
「 別に、それが直接オレが犯人だー! … なんて証拠じゃあないっすよね? 」
「 黙ってて悪かったとは思いますけど … まぁ、皆の言う通り、オレはとやさんとプールを探索してる時に指輪を落としちゃったんすよね。それで一緒に探してて … 。 」
「 でもクローゼットに指輪があったこと思い出して、それを着けた … ってだけじゃん! 」
「 ね、とやさん。 」
剣持 「 うん、そうだけど … 。 」
「 こうなるから早く言っとこうって言ったのに … なんでそんな言うの躊躇ってたんですか。 」
伏見 「 いやー、だって指輪くらいまぁいっかって思うでしょ 」
伏見 「 てことで … オレが犯行中に指輪を落としたって可能性は無くなりましたよね! とやさんっていう証人が居るんだからさ。 」
ガッさんは、つらつらと反論を述べてきた。
俺は混乱して、眉を寄せた。
ガッさんは違う … ってことか? いやだって、証人がいるんだもんな。もちさんっていう。
じゃあ違う … ?
長尾 「 …… もちさんが、ガクさんに協力してるなら可能性はあるだろ。 」
散々頭の中で悩んでいたら、長尾景がバンと言葉を発した。
ほぼ皆が首を傾げている様子だ。
弦月 「 言われてみれば … というか、確かに剣持さん、がっくんの髪の毛の話が上がった時、やけに必死に弁明してたもんね … 。 」
月ノ 「 で、でも … クロに協力した所で、何もメリットは無いですよね? 」
長尾 「 脅されてる可能性も捨てきれねぇから …… 」
剣持 「 いや、ガッくんがクロ決定で話を進めるな___ 」
口論がガヤガヤと始まっていく中で、
… と、手を叩く音が響く。
伏見 「 …… はいはい、分かりましたよ。 」
音の主はガッさんだ。皆が彼を見た。
長尾 「 あ … ? 」
その静寂を切り裂いて、彼はいつもと変わらない声で言った。
剣持 「 …… は? 」
加賀美 「 … 正気ですか。それは、貴方が、甲斐田さんを殺したということに … 」
伏見 「 分かってますって、だから … オレがクロなんだって。甲斐田くんを殺した。 」
剣持 「 ……… 。 」
伏見 「 いやぁ、オレと無関係なとやさんが疑われるくらいならカミングアウトしようと思ってさ。 」
伏見 「 … ね、こういう時ってどうすんだ? カグさん 」
『 ん? うーん … 。まぁ、投票はするよ。もうする? 』
伏見 「 しちゃいましょ、クロがカミングアウトしたんすから。 」
『 …… 、分かった。 』
『 それでは、投票タイムに移ります。クロだと思う人物に投票をしてください。 』
『 投票の結果 …… クロとなったのは、 伏見ガク。 』
『 そしてクロかシロか …… 正解は …… 。 』
何か特別な演出がある訳でもなく、カグが言葉を連ねた。
なんだからあっさり … いや、あっさり行ったわけでは無いんだけど、なんだろう。
すごい複雑というか、なんというか。クロがカミングアウトしてきたからか?
俺が、少し恐る恐るというように視線をガッさんに向けると、ガッさんは、自分の名前が大きく載せられた投票結果が映る画面を見て、なんだか安心したような顔を浮かべていた。
伏見 「 お、良かった。皆投票してくれたんすね。 」
彼はまた、変わらない声でそう言う。
重い空気だ、ガッさんが、本当に甲斐田を殺したのか?
なんで殺したんだ、なんでそんなこと … 。
長尾 「 … なんでハルを殺した? 」
俺が考えていたことを、彼は口にした。
凄い真剣な顔だ、いつもの彼からは想像出来ない顔。
そして、弦月さんも、同じようにガッさんを見詰めていた。
俺も、同じようにガッさんに目を向ける。
伏見 「 なんで … なんでかぁ、なんだろうね … 。 」
「 丁度良くそこに居たから? 」
長尾 「 は … ? 」
ガッさんは、少し首を傾けながら数秒考えた後、フッと笑って笑みを浮かべながら理由を言った。
物凄く理不尽で、信じられない理由を。
加賀美 「 な … ッ、丁度良くだなんてそんな … ! 」
三枝 「 可笑しいって絶対! 」
笹木 「 うちらが殺されても可笑しく無かったんか … 」
本間 「 でも … んな理不尽な … 」
伏見 「 いやいやw 違うでしょw 」
「 オレは、人を殺さなきゃ殺されるって立場に立たされたんだよ? 」
「 君たちは違うでしょ、殺されないように生きるってだけで。 」
「 そんなの、こっちの方が負担が大きいに決まってるよね? 」
「 許してよ、甲斐田くんはきっと許してくれる____ 」
次の瞬間、長尾景が音も無く刀を抜いて、ガッさんの首元に刀身をあてがった。
長尾 「 数年同じにじさんじに居るからって、アンタに 甲斐田の何が分かるんだよ。 」
伏見 「 … ヤダなぁ、刀閉まってよ。危ないじゃん … ! 」
ガッさんは、その状況でも眉を下げてヘラヘラ笑っていた。
彼は、俺たちの知っている伏見ガクなのだろうか。なんだか不安になってきた。
弦月 「 景くん! 危ないから辞めて! 」
長尾 「 …… 。 」
弦月さんのその言葉で、数秒経った後、長尾景は刀を鞘に収めた。
『 殺したらどうしようかと思ったよ … 今から処刑するのにさ。 』
弦月 「 うん … 。僕らの手で殺すより、処刑した方が良いよ。いくらなんでも、顔見知りに手を上げるのは気が引けるから … 。 」
『 案外怖い理由で止めたんだね長尾さんのこと。 』
『 … ともかく、今から処刑を始めます。 』
剣持 「 ガッくん … !! 」
伏見 「 とやさん、… とやさんは、生きてくださいよ。オレの分までさぁ。 」
「 ほら、別れる時も笑顔で … ね。ピース! 」
剣持 「 ごめん、ごめんなさい … 」
伏見 「 謝るなって … ! じゃ、オレはもう連れてかれますから。 」
「 皆さん、お元気で。頑張って生きて。 」
長尾 「 どの口が … 」
次の瞬間、天井に穴が開き、そこからアームのようなものが出てきた。
すると、ガッさんをガシッと掴んで、天井へ物凄い勢いで戻っていった。
もちさんは手を伸ばしてたけど、やっぱり届かない物だった。
皆が唖然としていた。
『 ……ジジ、 』
そう音を立てて、画面が切り替わる。
そこにあったのは、パチンコ屋のような風景と、パチ台の前に座るガッさんだった。
どういう処刑なんだこれは … 。そう思ったら、画面に大きく、
『パチンコ当てられたら生きられます!』と文字が表示された。
ガッさんは決して乗り気じゃない様子で、パチ台にコインを入れて回した。
勿論1回目は当たらない、もう1枚コインを取り出す。
パチンコの明るい音が、なんだか気味悪さを際立たせている。
それを数回続けた頃、違和感に気づいた。段々と、ガッさんが居る床に水が溜まってきてるんだ。
きっと、コインを消費する事に水が増えるんだろう。
もう1枚、もう1枚。
もう1杯、もう1杯。
それが何度も何度も繰り返され、遂にはガッさんの口元近くまで水が溜まっていた。
苦しそうだ、とても苦しそう。音声もしっかり入っている、彼の咳き込む声も、唸る声も、相変わらず明るいパチンコの音も聴こえる。
俺はこの処刑を見せられている中、いつの間にか彼を応援したくなっていた。
早く当たって欲しい、当てて欲しい。そうしなきゃ死んじゃう、死んでしまう。また人が … 。
そう思っていた頃、パチ台が、ふたつ揃った。あとひとつ、あとひとつ同じものが出れば、ガッさんは生きられる … !
だがしかし、現実は甘くなかった。 外れたんだ。
また水が追加されて、遂に彼の背丈を超える水の量になってしまった。
ゴボゴボと音が聞こえる、苦しんでいる声が聞こえる。
でも、決して助けを乞うような声は聞こえなかった。彼なりに、死への覚悟があったのだろう。
ほとんど空気も無さそうな状況で、彼はこちらに顔を向けた。
その顔は、笑顔だった。
声はなかった、でも、彼は口を動かしていた。
『 騙 し て ご め ん ね 』
そう言っているように見えた。
彼はそう言うと、また後ろ姿をカメラへ向けた。
そしてその数秒後 …… 力が抜けたように、微動打にしなくなった。
沈んで、床に寝転がって、動かなくなっていた。
そこで、画面はプツと切れた。
『 …… 処刑が、完了しました。 』
コメント
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最高です。最後の咎人で泣いてしまいました、
あぁぁぁぁ、がっくん...... 最後までがっくんっていう感じがすごいして毎回すごいなって思います。 なんかこっちも剣持とか他のみんなの立場に立って感情が移ったみたいになってすごく楽しいし面白いです! これからも応援してます!! 長文失礼しました