ウエットティッシュのようなお尻拭きを探している。
それがどんな入れ物に入っているのかさえ分からずに保健室の至る所を探していく。
しばらく探してようやく見つかったそれはボックスティッシュのような入れ物に入っていて、箱にはしっかりと、お尻ふき、と明記されてあった。
それを持ってオムツの横に置くとすぐに紙おむつを床に広げていく。
そしてオムツの上にお尻を置こうとした時、ひとつの不安が頭に浮かんでしまった。
(もう、漏れたりしないよね…)
布団の上に大きな地図を作ってしまったあとなのでオムツから漏れた時のことを考えてしまう。
(もう大丈夫だよね…)
(でも……)
大丈夫と言い聞かせたいところだが漏らしてしまった手前、不安が膨らむ。
自然と辺りを見渡していると、落としたオムツのパッケージの未開封の方に
「紙オムツパッド」
しかも
「高吸収タイプ」
と書いてあるのが見え
(オムツパッドすると2倍安心なんじゃない?)
勝手にそう思い込み、パッケージの方に手が伸びていた。
(あけてもいいよね。。。)
言いながらビリビリと開けられた中のいっぱいに詰め込まれたオムツパッドを強引に引っ張り出して取り出すと折りたたまれたソレを広げる。
(こんなに大きいんだ)
超SSビッグ用のオムツパッドは想像していた以上に大きいもので驚きを隠せない。
考えることなくオムツパッドを紙おむつの上に重ねていく。
(こうして…こうして……)
つぶやきながら設置し誰も来ない間にと、すぐにその上にお尻を乗せオムツを充てていった。
自分でオムツをすることなどあるわけがないので上手くいくはずもなく、思うようにいかない。
(こんなに緩かったっけ?)
先輩にあてらてた時はピッタリとフィットしていたのに自分ですると緩くなってしまう。
何度もテープを付けては外し、付けては外しを繰り返す。
(これでいいかな?)
何度目かでようやく少しマシになってきて、自分でも少し納得することができた。
体を起こし立ち上がる。
オムツパッドのせいで少しモコっとしているのは仕方がない。
オムツをつけ終え濡れてしまった洋服を着替えないといけない。
園児サイズと思わしき服はさっきオムツを探していた時に見ていたもののさゆりが着られそうな服は簡単には見つけられなかった。
しばらく探していると先輩が保健室に入ってきた。
(なにしてるの?)
(ん?この匂い)
すぐにおねしょの布団をみつけ
(あなた!おねしょしたの!?)
(園長先生に言ってくるから待ってなさい)
戻ってきた先輩と園長先生。
(お布団ぐっしょりじゃない!どうしてその時言わないの!)
その時と言われても言えるはずもなく
ごめんなさい…
謝っているさゆり。
(いいから早く洋服着なさい!オムツは取り替えたのね!)
先輩が持ってきた服を着ていくさゆり。
小児サイズの洋服を着るのもなれていた。
(まだ園児いるから布団外に出せないわね、シーツだけ洗濯しておきましょ)
保育士がおねしょするなんて想定していないだろうが、園児がおもらしやおねしょなどで汚してしまった時用に保健室に洗濯機が備えられてあった。
軽く畳んでから洗濯機の中にシーツをいれる。
オムツの女性が洗濯機の中にシーツを放り込む後ろ姿は、明らかにおねしょしたように見えてならない。
(オムツちゃんとできてるの?一応見てあげるからこっち来なさい)
恥ずかしそうに先輩保育士のほうに歩いていく。
(隙間だらけじゃない!こんなのしゃないのと同じだわ)
さゆりが自分であてたオムツは足首あたりに隙間ができてしまっていて誰が見ても漏れるのは確実にわかるほどだった。
慣れたように仰向けになるさゆり。
(よくもまぁこれでいけるって思ったわね)
オムツを当て直そうとテープを外し始めると
(テープが緩いみたいだけど何度もつけ直したりしたの?)
慣れないオムツ交換に何度もテープをつけては外しを繰り返したため粘着力が落ちてしまっていたのだった。
(新しいオムツする訳にも行かないし…)
少し考えている先輩の横から
(おむつカバーしなさい!そのためのオムツカバーだから)
見かねた園長先生がそういうとそれに納得した先輩は
(あ、そうですね、ちょうど新しいの届いてましたから)
と、すぐにおむつカバーを取りに行ってしまった。
(さゆりさん、オムツなのによく保育士になろうって思ったわね、年長さんでもオムツなんて卒業してるわよ、最近の子は早いんだから)
胸に突き刺さる。
近くで聞いていた先輩は何も言わずさゆりの足の間に座り
紙おむつを再度あてなおしていく。
(あなた!オムツパッドしてたの!?)
(どうりで違和感あると思ったわ)
(ここにあるのは園児用なのよ!保育士用じゃないの!新しいの開封するなんて!)
こんな大きいオムツしないでしょ。
と思ったもののそんなことも言えるはずもなく
(次からはお家で使ってるの持ってきなさい)
(はい…)
素直に返事を返しおむつカバーをあてられていった。
(洋服も持ってきたから着替えなさい)
(それくらい自分でできるでしょ)
強い口調で言われて体を起こそうとする。
モコモコのオムツが3日前までの自身とは違うことを表していた。
持ってこられた洋服に袖を通す。
園児用のソレはサイズこそ大きく着ることは出来たものの、胸の膨らみには対応していなかった。
スカートを履こうと片足を上げたが体勢を崩し
ドテッ
と後ろ向きに転んでしまった。
(着替えもひとりで出来ないの?いつも着替えさせてもらってるんでしょ、じゃないとこんなことで転んだりしないわ)
恥ずかしそうに黙ってしまうと
(ホントにママに着替えさせてもらってるみたいね、年中さんでも自分で着替えたがるわよ)
笑いながら顔を見つめる先輩。
(とりあえずお着替えは終わったからもう少しここにいなさい、園児もそろそろ終わる時間だからあたしたちは挨拶しに行かないと)
体験保育の終了の挨拶のため保健室を出ていく2人。
と、戻ってきた先輩は
(おむつカバーしたけど紙おむつゆるゆるだからおもらししないでね、漏れちゃう可能性高いから)
(じゃ)
言い残しすぐに出ていった。
(おもらしするなだなんて…したくないけどそれだったらオムツしないでよ)
泣きそうな目をこすりたちつくす。
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