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曇天の覇者

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曇天の覇者

7 - 第7話:フェブラリーS

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2025年12月22日

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ここまで頑張ってきたアメノマエ。今はと言うと―

なんとフェブラリーSへの出走が決まっていた

古参ファンや玄人達からは静かな期待が寄せられる


「フレアテイルに勝った時の感動をもう一度」

「粘り強さなら今レース1番なのでは」

「これで勝てば認められる」


フレアテイルに勝ってからというもの限界突破したのだろうか。

騎手は首を傾げるが、乗っていてもアメノマエは平然としており、良馬場でも淡々といい成績を残せるまさに仕事人のような走りを見せるようになった。


いくら逃げられても、食らいつく。

どんなに追われても、粘り勝つ。


天気予報は当日前日共に晴れ。

―しかし

なんとレース前日に雨が降ったのだ。


アメノマエは前日から曇天を引っ張りレース当日を迎えた。


騎手は確信した、アメノマエの勝利を。

調教師は見守った、あの根性の足を信じて。


装鞍所で鞍をつける。

かつての日のような重さはない。


本馬場入場を終え、返し馬。

足取りは重くない、そして地面をしっかり踏みしめるリズムを持っていた。


ゲートに入る、いつになくピリピリした空気。

他の騎手は自分の乗る馬をなだめる。

たがアメノマエとその騎手にそれは不要だった。

互いに、勝利の栄光を確信していたから。


スタート


出遅れもなくスムーズに前へ出る。

だがここであることに気づく騎手たちが出てくる。

重馬場とされていたがほぼ不良馬場のようなぬかるみが広がっているではないか。

返し馬の時点では気づけなかった。焦りや緊張で不安定な馬の足が滑りやすい。

だがアメノマエは違っていた。

信頼関係や静かな期待に応えたい一心で、しっかり地面を蹴る。

コーナーに差し掛かる。

後続の馬たちは足を取られそうになり先頭も体力を消耗しているようだった。

騎手は滑りやすいことを理解し無理に内や前は狙わず外から持ち前の安定感を出すことにした。

しかしアメノマエは何故か前に出る。

騎手は思う


「アメノマエ、まだ早くないか?」

「……いや任せてみよう。これは競馬、賭けてみようじゃないか!」


最後の直線、スパートをかける馬が出てくる。


アメノマエはと言うともう先頭争いで勝利していた。

後ろから差し馬が来る気配はする。

だが、ここに来たアメノマエにはもう関係ない。


前に出る。

もう誰も食らいつけない。

坂をも余裕の走りで制し


結果は1馬身差

堂々の1着。

騎手は喜ぶ

だが派手にではない、目を瞑り自分の中で噛み締める。

アメノマエという競走馬と共に、1着を勝ち取ったことを実感する。




なんだか暖かい、そう思って目を開くとなんと甘えることの少ないアメノマエが自分の頬に顔を寄せているではないか。

「……嬉しいんだな…」


そっと撫でる。


競走が好きというより、人の期待に応えることが好きなアメノマエにとってこれほどの瞬間は、他にない。

感受性の高いアメノマエは共に駆け抜けてきた騎手の熱い思いを感じ取り珍しい行動を取っていた。




その後の競馬新聞、見出しはこうだった。


【曇天の覇者、堂々の1馬身差勝利】


レース後のパドックの盛り上がりは凄まじかった。

アメノマエのファンが多く押しかけ、コールが最後まで鳴り止まなかった。


「やるとは思ってたけどここまでとは」


こんなコメントがあちこちで上がっていた。

ついに認められた。

あれだけ話題性が乏しかったアメノマエが初のGIでなんと1馬身差。

古参ファンにとって格別の喜びだった。

そして何より嬉しいのはここまで育てた関係者達だろう。

厩舎に戻った後のアメノマエはまるで強者の風格を身にまとったかのようだった。

その影響か、ほかの馬たちも自然と一目置いているようだった。

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