テラーノベル
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船に揺られてようやく羅刹学園に到着した。
恋太郎「ゔぇ、…きもちわり……」
無陀野「着いたぞ。俺についてこい。審査する部屋まで案内する。」
ほぼ無理やり連れてこられたのに吐く時間すら与えてくれないのか……やばいほんとに腹立つ。
でも従うしかない。
死にそうな声で適当に返事をして彼について行った。
無陀野「今から審査を行う。その前にいくつか質問をさせて頂こう。」
恋太郎「なんです?」
無陀野「1つ、お前は“氷上の王子”で間違いないか。2つ、鬼の角が出たのはいつか。」
毎回注文は多いくせに偉そうなのが気に食わないが、きっとこれからも桃太郎に怯えて暮らすよりかはここに入学できた方が幾分マシだろうと思い、我慢して口を開く。
恋太郎「俺は確かにそう呼ばれてました。鬼のツノが出たのは、足に大きな怪我をしてもうスケートが出来ないと聞いた時あまりのショックで…その時に出ました。結果的に足は治ったしいいんだけど、氷の上には戻れなくなりました。でも今でも足が大切で、家でよくジャンプを飛んだりしてるんです。」
無陀野「そうか。じゃあ鬼の血のことを知ってるか?」
恋太郎「知ってはいるけど、やり方がわからないのです。」
無陀野が「なんだコイツ、使えねぇな」的な目で見てくるのは見間違えだろうか……いやこっちだって好きで鬼になった訳じゃないんだわ!!と大声で叫びたいのをこらえる。
無陀野「はあ、仕方ない。非効率なことは嫌いなんだけどな。血を使えるよう手を貸してやろう。」
その提案に頷こうとした時だった。
_足から鋭い痛みが走った。
「え…?」
思わず声が漏れる。痛みの先へ目線をずらす。
足から血が溢れている……
恋太郎「なんで、こんな……俺の話聞いてた…?ねえ、足が大事だって…」
もう敬語とか大人だとか考える暇なんてなかった。大事な足から血が溢れているのだ。今まで感じたことの無い感情が湧き出る。
— 殺してやりたい。あの男を。
その瞬間血液が沸騰するように熱くなった。
そして辺り一帯が血に染まり始めた。
無陀野(こいつもダメか……)
無陀野が血蝕解放をしようとした時だった。
恋太郎の瞳からぽたぽたと涙が溢れた。
恋太郎「俺はただスケートをしたかっただけだ…なのに、なんでこんなことになってるんだ……」
無陀野「そうだ…お前の原点はそこだろう。欲に忠実になれ。」
恋太郎「俺はただ踊っていたい…氷上に戻りたい!!!」
その瞬間、血に染った床はスケートリンクのように変化し、足にはスケート靴が血で作られていた。
夢のような光景だった。
あぁ、身体が勝手に動いていく。あの頃の幸せな記憶へ俺を連れてってくれる。
無陀野side
何とか彼の血蝕解放を成功させることが出来た。そして彼は優雅におどりはじめた。
彼と出会った時の正直な感想は“地味”だった。だが今になってみればそう思えない。
きらめく黒髪が揺れて、その前髪の奥で光る瞳がこちらを覗いている。高身長故の迫力がありながらも優雅な舞。指先までもが美しい。
これは……魅了される…。
目線が釘付けになり、彼以外何も見えなくなる。なるほど、敵の目線を釘付けにし、彼以外に視線を向けられなくなる能力か。
しばらくして踊り終わった恋太郎がこちらへお辞儀をした。その時でさえも、彼から目を離せなかった。
これが氷上の王子なのか。
無陀野「恋太郎、合格だ。羅刹学園はお前を歓迎するよ。」
恋太郎「ありがとうございます。」
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