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ごきげんよう、シャーリィ=アーキハクトです。『マルテラ商会』のチェルシーさんが来訪するとは聞いていましたが、まさかカナリアお姉様ご本人がお忍びで来訪されるとは思いませんでした。

水晶越しに言葉を交わしましたが、こうしてお会いするのは十年ぶりでしょうか。お変わり無いようで何よりです。

「それで、カナリアお姉様。お忍びで来訪された目的をお尋ねしても?」

「貴女の顔を見たくなった、では不満かしら」

不満ではありませんが、カナリアお姉様がそれだけの理由で領地を離れるとは思えません。

何よりガズウット元男爵や没落貴族達の粛清で、多少なり門閥貴族達が慌ただしいはず。簡単にレーテルを離れるのはリスクがあります。

「カナリアお姉様、お腹の探り合いは不要ですよ。真意は?」

私が問い掛けると、カナリアお姉様も楽しげにされています。

「貴女達姉妹の保護も本音よ?もちろん貴女が持ってるものもね?」

「あげませんよ?」

いかにお姉様と言えど、私の大切なものは渡しません。

「分かってるわ。単刀直入に言えば、交易以外でちょっとした仕事を頼みたいのよ。信頼できる者は少なくてね」

ふむ。

「わざわざ私達に任せると言うことは、汚れ仕事ですね?」

「そうなるわ。没落貴族達の始末は鮮やかな手並みだったし、期待したいのよね」

「見返りは?」

「貴女が探している情報、かしら。これでも女公爵、耳は大きいのよ?貴女達がカイザーバンク相手に苦労していることも知ってる」

「耳が良いですね、お姉様」

裏社会の事情も御存知とは。

「資金援助については諦めて。大っぴらに支援はできないのよね」

「ここに来たのも危険では?」

「従姉妹に会いに来ただけよ。何れは露見するでしょうけど、その方が何かと都合が良いのよ」

「条件はあの日に関与した者達の情報で如何ですか?」

「私も知りたいわね。シャーリィ、なにか手がかりが無いかしら?」

「ガズウット元男爵の尋問で二つの名前が出ました。シリウス子爵とパウンド男爵です」

「どちらも派閥は別ね。確かパウンド男爵は」

「死亡しました。病死とありますが、口封じのために始末された可能性があります」

「ガズウット男爵の件を警戒されたのかしらね?」

「分かりません。ですが、手懸かりが減るのは避けたい。お姉様にはシリウス子爵について調べて欲しいのです。可能なら生きたまま確保したいのです」

「確証があるのかしら?別の派閥だから、手を回すにしても限界があるわよ」

「シリウス子爵は……東部閥でしたね」

「マンダイン公爵家はうちと対立関係よ。やり方を間違えると内戦になるわ」

それは困りますね。内戦なんて起こされたら、黒幕を利するのみ。パウンド男爵については間に合いませんでしたが、何とかシリウス子爵だけでも確保したい。

「何となりませんか?」

「……シリウス子爵と会う機会はあるわ。冬に帝都で第二皇子殿下の生誕を祝うパーティーがあるのよ」

「第二となると、ナインハルト殿下ですか」

「そうよ。皇帝陛下のご容態が落ち着かないこの時期に生誕の祝いなんて正気とは思えないけれど」

「ですが、生誕の祝いとなれば帝国貴族が集まりますね。農作物がたくさん売れます」

「そして情報が集まるわ」

うん、それならいけそう。

「では、パーティーに私も同行します。もちろん身分は隠しますよ。まだ時期ではありませんから」

「私に危ない橋を渡らせるんだから、相応の見返りを期待するわよ?」

「何をすれば?」

「そうね、先ずは現物を貰おうかしら。魔石が欲しいわ」

「魔石、ですか。失礼ながら、カナリアお姉様の方が容易く手に入るのではありませんか?」

西部も交易は盛んですし、レンゲン公爵家となれば『魔石』の入手も容易いはず。

わざわざ私に求めるものではない。

「言い方を変えるわ。貴女達が保有している大きな魔石の一部を貰いたいのよ」

!?

「何のことでしょう?確かに個人的な趣向で魔石を保有していますが、お渡しできるようなものではありませんよ?」

努めて冷静に返すと、お姉様は扇で口を隠しながら笑みを浮かべた。

「最近帝都の貴族達の間で出回ってる魔石。数は少ないけれど、随分と良質なものみたいね」

「そう聞いています」

あっ、これもしかして。

「とんでもない大金が動いているのよ。当然誰でも出所を探るわよね?」

「まあ、そうですね」

アルカディア帝国も政情が不安定で魔石の入手も困難になっています。敵国ですからね。

ただし、現地の海賊達を介している私達には関係ありませんし、そもそも魔石はブラッディベアから手に入れましたし。

いや、違う。この口ぶりだと出所が私達だとバレてる!?そんなまさか!マーサさんが入念にルートを偽装しているはず!

「ミディアム伯爵家」

「北部閥の貴族ですね」

冷や汗が背中を流れましたよ!?

ミディアム伯爵家はお得意様。

北部閥に属しており、権力闘争や政争の類いに関心が無いので良い隠れ蓑になっています。

「貴女は知らないわよね?彼処とうちはちょっとした縁があるのよ」

「縁ですか」

貴族の縁とは恐ろしいもので、数代前の今となっては交流すらない縁者ですら重要視される事もあります。

「ここまで言えば賢い貴女なら分かるわよね?シャーリィ。ミディアム伯から一通り話は聞いているわ。他言無用だと渋ったからちょっと強引にね?」

「それはそれは……」

ブラッディベアから採取した巨大な魔石は細分化して貴族達に売り付けています。もちろん足が付かないように複数のルートを使っていますが、ミディアム伯爵家は重要なルートのひとつです。

まさか、カナリアお姉様に感付かれるとは。

「ねぇ、シャーリィ。探り合いは好きじゃないわ。分かるわね?」

仕方ない。

「如何程ご入り用ですか?」

「ペンダントを作りたいの。社交界で使えば、うちに箔が付くじゃない。いくつか作らせるから、これくらいの大きさね」

握り拳程度ですか。これはまた困りましたね。とんでもない出費になりますが、仕方ありません。

「ミディアム伯については内密に」

「当たり前よ、約束は破らないわ。それに、次からはマルテラ商会を介して取り引きが出来るものね」

「何なりとお申し付けを」

いやはや、ちょっとしたお願いをしたら大変な出費を強いられる結果になりました。やはりお姉様の強かさには敵いません。

「直ぐに用意させます。ご用件は以上で?」

私が話を切り上げようとすれば、お姉様はこれまでにないくらい真剣な表情をされました。

「いいえ。本題はこれからよ、シャーリィ」

……何だか嫌な予感がしますね。

暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~

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