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引き続きシャーリィ=アーキハクトです。カナリアお姉様の纏う気配が変わりました。おそらくこれからが本題なのでしょう。

「シャーリィ、貴女は帝国の行く末をどう見てる?」

はて、含意が広すぎますね。

「お姉様、それでは分かりません」

「そうね、国家としての在り方よ」

ああ、なるほど。

「見通しは暗いかと」

旧態依然とした現皇帝は病で先も長くない様子。跡目争いをしている三人、いやお兄様以外の第一、第二皇子は保守派の筆頭格。

第二皇子ともなれば、帝国は古き良き姿に戻るべしなんて懐古主義者ですからね。

どちらが後を継いでも帝国に未来はありません。

「先行きは暗いと考えているのね?」

「進歩を失ったものに待つ未来は滅びです。国であろうと例外ではない」

「アルカディアの脅威なら心配無用よ?」

「お姉様、お戯れは止めてください」

アルカディアも政情が不安定ですが、彼方は革新派が台頭しています。もし彼らが主流派となれば、アルカディア帝国は一気に国力を増すことになるでしょう。

カナリアお姉様がそれを知らないとは思えません。

「愚問だったわね。シャーリィはなにか野心を持ってるんじゃない?」

「野心ですか?」

復讐以外はまだ考えていませんが。

「貴女が第三皇子殿下と接触しているのを知ってるわ。他にもガウェイン辺境伯とも親しいみたいね?」

本当にお姉様の耳は広いですね。いや、そうでなければ四大公爵の一角に君臨できませんか。

「ユーシス殿下とお会いしたのは事実ですし、ガウェイン辺境伯とも関わりはありますよ」

そもそもガズウット男爵の件を知らせてくれたのは辺境伯です。お兄様の意思が関与しているのは間違いありませんが。

「何を企んでいるのかしら?この時期なのに、第三皇子殿下は帝都に居ないのよね」

「私が第三皇子殿下の企みに加担しているとお考えなのですね?」

「飾らずに言えばそうよ。どうなの?」

「お姉様、今の私にとって何よりも優先しているのは復讐と大切なものを護ることです。他のことを考える余裕はありません」

ハッキリ言って帝国の行く末に興味はありませんし。

「それは本当かしら?」

「お姉様に嘘は吐きません。後が怖いので」

私が答えると、カナリアお姉様は力を抜いてソファーに身を委ねました。納得して頂けたかな?

「帝位争いが加熱しているのに、第三皇子殿下は行方知れず。他の貴族達は気にもしていないけれど。だから貴女なら所在を知っているんじゃないかと思ったのよ」

「残念ながら、殿下の居場所は私にも分かりません」

神出鬼没なんですよね。

「そう……」

「随分と殿下のことを気にされていますね?」

お兄様は冷遇されている。だから貴族達は気にも留めない。目の前のお姉様以外は。

「当たり前よ、シャーリィ。殿下は冷遇されているけれど、優秀な方よ。敢えて言うわ。第一、第二皇子はボンクラよ」

これはまたハッキリと言いましたね。まあ、他言するつもりはありませんし同意しますが。

「だから第三皇子殿下をお探しに。西部閥は第三皇子支持なのですね」

「名言は避けているし、表向きは中立よ。でも、帝国の抱える問題に対処できてより良い未来へと導けるのは殿下だけだと思っているわ」

そうでしょうね。そんなこと表立って言える筈がない。対立関係にある東部閥のマンダイン公爵家は第二皇子支持。

確か令嬢が婚約者でしたね。是が非でも帝位に着けたい筈。

「第三皇子殿下の所在が分かったら、お伝えしますね。ただし、口止めをされた場合は喋りませんよ?」

お兄様は大事な後ろ楯なのですから。

「構わないわ。その時に殿下とは一度お会いしたいと伝えてちょうだい」

「分かりました。ではお姉様、誤解も解けましたし工房へ向かいましょう」

「魔石ね。今から楽しみだわ」

忘れていれば幸いでしたが、お姉様相手に誤魔化しは意味を成しませんからね。

その後、工房でドルマンさんに依頼して握り拳より少し大きめの魔石を進呈。

「任せておきなさい、シャーリィ。悪いようにはしないわ」

お姉様は要望より少し多い意味を正しく認識してくれたみたいです。

これで帝国有数の有力者を後ろ楯にすることが出来ました。シェルドハーフェンではあまり意味がありませんが、表の世界では大いに役立ちます。

魔石を手に入れたお姉様は、商談に参加したあとチェルシーさんを連れて直ぐに町を発たれました。数日程度滞在されるかと思ってお部屋を用意したんですが、お忍びですし。

意味を成していませんが、一応シェルドハーフェンは南部閥の領地ですからね。

正確にはガウェイン辺境伯の領地ですし、長居は出来ないのでしょう。

「良かったのか?嬢ちゃん。あの大きさならかなりの大金で売り捌けたんだが」

「構いませんよ。これは先行投資です」

ドルマンさんがちょっと不満げにしていますが、ただ情報を得るだけではありません。組織としても旨味が欲しい。だから、マーサさんにお願いしたんです。

「海路を主体とした交易協定を結んだわ。彼方に譲渡した船の整備や補給はシェルドハーフェンで行う。代金はもちろん貰うから、かなりの利益を見込めるわ。関税も破格の安さを約束してくれたし」

マーサさんがニコニコしてますね。

懸念は関税でしたが、魔石を多めに渡したからかお姉様が随分と譲歩してくれました。

隣に居たチェルシーさんは青い顔をしていましたね。長い目で見れば損になると感付いた様子。

「マルテラ商会にもちゃんと旨味があるんだから、多少の損は我慢して貰わないとね」

協定書を見る限り間違いなく貿易摩擦が起きますね。此方が得をするだけですから。

まあ、彼方は農作物を独占できます。それを売り捌けば相応の利益が出る筈です。

「シャーリィ、品物に魔石を加えるべきかしら?」

「いえ、魔石は引き続き帝都で売り捌いてください。ミディアム伯爵については、少し保留で」

お姉様以外にも感付かれたら厄介ですからね。

「分かったわ。他のルートを使う。利益は上がるから安心しなさい」

「お願いします、マーサさん」

さて、お姉様の来訪は予想外でしたが冬に帝都へ行く用事が出来ました。ならば、それまでに懸念事項をある程度消しておく必要があります。

先ずは来月に予定している『花園の妖精達』との交渉ですね。そして私の命を狙い続けるスネーク・アイへの対処。まだまだ忙しい日々が続きそうです。

……それと、気になることもあります。カナリアお姉様を相手にしている時私はずっと身を焦がすような憎悪に苛まれていました。

私個人ではありません。おそらく勇者様の感情。確か四大公爵家は勇者様と旅を共にした四人の英傑達を祖としている筈。

そしてその四人は勇者様を陥れた張本人。感情を抑制するためにも気を付けなければいけませんね。

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