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01. 淡い光に手を伸ばす
ひめは窓の外を見つめていた。
春の風がカーテンを揺らし、光が差し込んでいる。教室には他の生徒の笑い声が響いていたが、それはまるで遠くの出来事みたいに感じられた。
「ひめちゃん」
背後から、ふわりと甘い香りがした。
ミルクティー色の髪が揺れ、琥珀色の瞳が覗き込む。
天使ねね。学校で誰よりも愛される、眩しいほどの存在。
でも、ひめにとってねねは、世界でたったひとりの「特別」だった。
「何見てるの?」
ねねはひめの肩に顔を乗せるようにして、じっと外を眺める。
春の空はどこまでも淡くて、儚くて、まるで手を伸ばしたら消えてしまいそうだった。
「……光」
「そっか。ひめちゃん、太陽の光、苦手なのに」
「うん。でも、綺麗だなって思ったの」
ねねがくすっと笑う。
彼女の指がひめの頬をなぞるように触れた。
「それなら、ねねが光になってあげる。ひめちゃんのためだけの、ね?」
囁く声は甘く、ひめの心をかき乱す。
光なんて、掴めないものなのに。
でも、ねねだけは、ひめの手の中にいてくれる……?
ーー違う。
ひめは知っている。
ねねが自分のすべてを奪い尽くしてしまうことを。
それでも、抗う気なんて、もうとっくになかった。
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