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02. 甘く縛る指
ねねの指先がひめの頬をなぞり、ゆっくりと顎を持ち上げた。
琥珀色の瞳が覗き込む。
「ねえ、ひめちゃん」
「……なに?」
「ずっと一緒にいてくれる?」
問いかける声は甘くて優しい。
けれど、その奥に隠された狂気を、ひめは知っている。
「ずっと」の意味を、誰よりも理解している。
ーーいいよ、と言えば、たぶん逃げられなくなる。
ねねはそういう子だ。
ひめのすべてを独占し、心の奥まで縛り付けてしまう。
それでも……。
「……うん」
気づけば、ひめは頷いていた。
ねねの唇が綻ぶ。
「ふふっ、ひめちゃん、かわいい」
囁くように言いながら、ねねはひめの手を握った。
細くて白い指を絡めるようにして、ぎゅっと。
ひめの胸が、ぎゅっと締めつけられる。
ーーもう、この手を振りほどくことはできない。
「ねねのことだけ見ててね?」
「……うん」
「ひめちゃんは、ねねのものなんだから」
甘く囁きながら、ねねはひめの耳元に唇を寄せた。
その瞬間、ひめの背筋がふるりと震える。
くすぐったいのに、熱を持つような感覚。
ねねはひめの気持ちなんて知ってか知らずか、笑いながら指を絡めたまま、ゆっくりと離れていった。
「じゃあ、また放課後ね?」
最後に、ひめの髪を撫でて、ねねは教室を出て行く。
残されたひめは、握られた指先の熱を確かめるように見つめた。
ーーこれは、温もり?
それとも、焼き付けるような、支配の印?
ひめは小さく息を吐いた。
どちらでもいい。
だって、もうすべてを委ねると決めたのだから。