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宙に揺蕩う白煙の行方をボーッと眺める。吐き出された瞬間は白い布が何重にも重なって全てを隠すように濃い。けれど遠く高くなるに連れて重なりは弱まり色は薄く伸びて行く。
今日もエンジンは煙を吸って吐き出す。
グリスから聞いたそれの名前は煙草というらしい。菓子みたいに甘いわけでもないし、吸えば健康になるって訳でもない。その実は真逆で毒を吸っているのと同等らしい。
何かを探すように、遠くを見たり虚空を見つめたり煙草を吸っているエンジンは凄く静か。でもジッと俺がエンジンを見てるのに気付いて、目が合えばニヤッと煙草を咥えながら笑って頭をぐしゃぐしゃにする。
『あぁ、今日も…』
どこかで聞いた。
天界だったか?地下だったか記憶は定かではない、けど内容だけは記憶に深く結びついていた。
「煙草まだ吸ってんのかよ…」
「誰になんと言われようと止める気ねぇな」
「そうかよ」
「あぁ」
「ったく、嫁さんの前じゃあんま吸うなよ」
「…んでだよ」
「副流煙っつてな、吸う側よりも出た煙吸ってる方が毒を吸ってんの」
「マジかよ…」
「大マジだ」
エンジンは知らないうちに毒を吸いながら毒を周りに吸わせてる…
どうせなら…と気付かれないようにそっと肺いっぱいに煙で満たした。
エンジンに殺される。
俺の死因はその吐き出された煙が良い。
白い煙で首を絞めるように優しく緩くでも確実に殺される。