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目を開けた瞬間、違和感が全身を駆け巡った。体が重い。まるで誰かが自分の上に何かを乗せたようだ。手を動かそうとすると、それはいつもよりも大きく、肉厚な感触が返ってきた。
「……何これ?」
布団をはねのけ、ゆっくりと上体を起こす。そこに映ったのは、自分の知っている体ではなかった。腹がぽっこりと出ており、腕や脚はぶよぶよしていて、服の隙間から肉が溢れそうだ。恐る恐る鏡を覗くと、さらに驚愕が広がった。
顔全体に大きなそばかすが広がり、いくつかの赤いニキビが点在している。髪はボサボサでまるでワカメのように太く束になり、無造作に広がっていた。目をじっと見ると、まるで四白眼のように不気味で、どこか生気のない視線が返ってきた。
「え……誰、これ……?」
声も自分のものではない。低くてくぐもった音が口から出る。慌てて両手で顔を覆ったが、その手も自分のものではなく、むくんで丸い。
「……私、転生したの?」
記憶がぼんやりと蘇ってくる。確か、事故で……。そこで思い出すのをやめ、再び鏡に向き合った。これは夢かもしれない、と自分に言い聞かせながらも、この現実をどうにかしなければならないという焦りが心の底から湧き上がってきた。
「もしかしてこの見た目…不気味なラスボスの、アルベルタ・エネア…?」
私は真剣に前世読んでいた小説を思い出し始めた。何か手がかりがあるかもしれない。
…。確か美しいヒロインが男達を誑かして行く物語だったはず。
だけどその男達にエネアの婚約者が入っていたのだ。そのことで、エネアは注意をしにいく。
エネアは婚約者が幸せならそれでいいと、優しさを見せたのだ。
しかし、ヒロインはエネアの婚約者の顔や名前すら覚えていないのに悪びれずにこう言ったのだ。
「貴女は残念ね?こんなにも出来損ないで、見た目も人間以下よ…。誰からも欲されないで、逃げられて…あはは!私に全て取られて本当に惨めね…!」
その言葉にエネアは闇堕ちし、恨んでいた主人公達を全員殺すためだけに生きるようになってしまうのだ。
うん…。もはやヒロインより悪役に改名した方がいいクズさ。それが作品の魅力だったけど、推してる人がいたのが不思議に思えた。
まあ、顔だけはどタイプだからとかいう理由が多かった…。
あ、ヒロインのことより、自分の事を考えないと。このままだと、私も同じ結末を迎えてしまうかもしれない。だから、垢抜けて、レベリングし続けて早くここから逃げよう!