……一週間を終えて、退勤後に彼とデートの待ち合わせをした。
最寄り駅近くの大きな公園の中にある噴水の前で待っていてほしいと伝えられて、彼が来るのを待った。
丸く縁石で囲われた噴水は、ライトアップされた水が噴き上がる度に七色に移り変わって、楽しげに眺めているカップルも多かった。
季節は春先を迎えていたけれど、夜はまだ冷え込んでいて、水際ということもあってより寒くも感じられて、
春コートの併せ目を両手でぎゅっと掴んで、カップルの中に独りきりでいることにも少し寂しさを覚えつつ、なかなか来ない彼を、凍えそうになりながら待っていた……。
足元から這い上がってくる寒気に震えそうになったところに、彼が駆け寄って来るのが見えた。
革靴の音を響かせハァハァと小さく息をつく姿に、そんな風に急いで私の元に来てくれたことが嬉しくなる。
「……待たせしてしまって」
ハァ…と目の前でひと息をついて言う彼に、ううん…と首を振った。
「松原さんに、医療費の内訳を確認されていて、少し遅くなりました。では、行きましょうか」
歩き出そうとして、手を取った彼が立ち止まる。
「こんなに冷たくなって…待たせて悪かったですね…」
「いいえ、お仕事ですから」
言う私の両手にふぅーっと息が吹きかけられて、
吐息にくるまれた手が、じんわりとあったまる。
「体も冷えてしまっていますね…しばらく、こうしていてあげますから」
ロングコートの中にそっと包み込まれると、彼のスーツを通して温かみが伝わった……。
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優しい🩷