テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

私たちは5月末に新しい部屋で一緒に暮らし始めた。

前の部屋には家具等付いていたが、今回は二人で家電品や少しの家具を選び購入した。

引っ越しの荷物は身の回りのものだけなので引っ越し業者に依頼することもなく、颯ちゃんが車で来て運んでくれた。


最寄り駅が2つになり、利用出来る路線が増えたことで颯ちゃんは40分で部屋から店まで行けるようになった。

私も40分で事務所に行けるのだが、6月から木曜日だけ出勤の在宅勤務になった。

颯ちゃんは机がいると言ってくれたが、寝室のベッドが大きくなりそんなスペースはない。

なので、リビングの隅に小さな家事デスクを置くことにした。

疲れたら床に座りリビングのテーブルを使えばいい。


「ただいま」

「おかえり、颯ちゃん」


颯ちゃんは、だいたい店を6時に閉めてから7時頃に帰ってくるのだけど、今日はまだ6時半だ。

雨で暇だったのだろう。


「濡れた…シャワーするわ」

「よく降るねぇ…お風呂も一応沸かした」

「リョウも入る?」

「……ご飯用意する」

「残念」


全く残念そうでない声で言いながら、颯ちゃんがお風呂へ向かう。

一緒にお風呂に入ると、食事どころでなくなるのがわかっているのだろう。


私は梅雨の長雨の中、通勤しなくていい快適さを感じていた。


「ただいま、リョウ」


お風呂からキッチンへ入ってきた颯ちゃんは、私の腰を抱きこめかみに唇を落とす。


「颯ちゃん…ちゃんと拭いてよ。Tシャツ濡れた…」


短パンだけ履いて上半身の拭き方が適当だから、私のTシャツが濡れたのだ。


「脱ぐ?」

「脱がない」


素早くTシャツの裾を持った颯ちゃんを阻止すると、彼はガシガシ髪を拭いた。


「何、手伝う?」

「今日はもう出来たの」

「えー手伝うのに」

「明日は木曜日だから颯ちゃんにお任せ」

「おう、任せろ」


出来たと言っても難しいものは作れない。

今日は牛丼、じゃがいもと玉ねぎと油揚げの味噌汁。

自分一人だったらこれだけだったが颯ちゃんには足りないので、わかめとカニかま、きゅうりで酢の物を作り、市販の卵豆腐を出す。


「おかわりは?」

「牛丼の具は多めに作ったからあるよ」

「嬉しい。いただきます、リョウ」


颯ちゃんはよく食べるので、多すぎると感じるほど作ってちょうどいいとわかってきた。


「いただきます」

「味噌汁、うまい」

「もう一口だけは残ってる」

「いる」


大きな口を開けてモリモリ食べる颯ちゃんを見るのは、とっても気持ちいい。

毎日の幸せな瞬間だ。


「今日も暇だったの?」

「雨続きだからな、客が来ない。1年で一番暇なときだけど1件配達した」

「えーこんな日に?」

「ふるさと納税って知ってるだろ?日本の有名ブランドの工場が九州に大きな工場を持っていて、その市の返礼品は自転車がある」

「豪華返礼品だね」

「そうだよな。うちの店はその配達を請け負っているから1件配達すると手数料数千円が入る」

「なるほど。いろんなお仕事があるね」

「ああ。今日も‘この人30万以上ふるさと納税したんだ’と思いながら配達してた」

「…30万?」

「そう、30万以上で電動自転車が返礼品」


ふむふむと頷きながら酢の物を食べると、まあまあ美味しい。

良かった。


「リョウは?慣れた?」

「うん。やっぱり在宅では出来ないこともあるけど、その時には大木さんと案件交換したりして随分慣れた」

「ここに揃えて欲しいものないか?」

「ありがとう、大丈夫。本当にいるものは事務所が用意してくれるし」

「それもそうだ。在宅手当てが出るくらい、きっちりしてるからな」


家で電気を使用するからと、在宅手当てが頂けるのだ。

通勤時間ゼロというだけでもすごく楽なのに、申し訳ないような好待遇だ。

出来ないことがあると事務所の方の負担が大きくなるので、在宅時には全部の電話に自分が出るという心がけで、私なりに事務所の仕事に貢献したいと思っている。

良い子の良子さん

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

44

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚