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翌日も雨だったけど、定休日の颯ちゃんが車で送ってくれるので濡れることはない。

パソコンを持っての通勤なのでこれまでより荷物が重いこともあり、送迎はとてもありがたい。


「今からレシピ検索してスーパーに行ってくる」

「新作発表?」

「失敗したときのために、カップ麺も買っておく」

「ふふっ…ストックしてなかったね。いくつか買っておいてくれる?」

「了解。いつものヨーグルトなんかも揃えておくから」

「助かる。颯ちゃん、ありがとう。いってきます」

「帰りも来るから」

「うん、お願いします」


外を通るのはほんの一瞬だけど、傘は必要なくらい雨が降っている。

薄い水色のビニール傘を広げて車を降りると、私は颯ちゃんに手を振った。


「おはよう、良子ちゃん」

「大木さん、おはようございます」

「その傘、クラゲっぽくて可愛いわね」

「クラゲですか…そう言われるとそうですね」


水族館の中でもクラゲを見るのは好きだ。

水族館へ何年行っていないのだろう…今度の日曜日、颯ちゃんを誘って行こう。


週に一度の事務所では、業務だけでなく、皆さんとコミュニケーションを取るのが大切だと北川先生に言われている。

在宅で孤立して互いの業務サポートが出来なくなるのは問題だから。

パソコンを立ち上げ、皆さんに挨拶しながらコピー用紙を点検し、給湯室でポットにお湯を沸かしておく。

入口近くのトレイに分けきれていない郵便物等がないか確認していると、大木さんに呼ばれた。


「良子ちゃん、会議室。片山先生、孝市先生と打ち合わせ10分」

「すぐ行きます」


忙しい先生を待たせるわけにはいかない。

すぐ担当先生と事務員の打ち合わせに入った。

締め切り期日の近い案件の進捗確認が主になる。


「この方、また職場を変わられたようで…住民票追跡中ですが、今月分がまた遅れると思います」

「最悪…」


私のあとに大木さんが最悪と言うのもよく分かる。

養育費請求案件で、孝市先生が奥様側につき元夫に子どもの養育費を請求している。

すでに裁判所から言い渡された金額が決まっているのに支払いされず、元夫の職場に連絡をして給料から○○円をこちらに振り込んで下さいとお願いした。

これは職場も従わないとペナルティのある決まりごとなのだが、その給料差し押さえをする度に転職するのだ。


「何回目だ?面倒くさい相手だけど…逃げられると思っているところが腹立たしいよな。時間かかるけど追跡と差し押さえ、繰り返して」

「わかりました」

「依頼者さんには、こちらから連絡入れておくよ」

「お願いします」


養育費支払い金額から何%というのが依頼者様からの支払い金額、弁護士費用になる。

手間隙と労力を考えると割りに合わない仕事だが、億単位の訴訟で何千万円の収入を得るような仕事と先生方はバランスを取っておられるように思う。

収入面だけでなく精神的にも、大きな案件と、個人の相談に乗り日々の生活の力になるというバランスがあるように思う。


忙殺される1日だったが、たくさんの業務をこなせた。

5時半過ぎに事務所を出ると、朝と同じ場所にハザードランプを光らせた車で颯ちゃんが待っていた。


「ただいま、ありがとう」

「おかえり、リョウ。今日は家デートな。ケーキ買ったぞ」

「すごく嬉しい。今日すごく忙しくて甘いもの食べたかったの。何ケーキ?」

「帰ってからのお楽しみ」

「豪華デザートだね」


颯ちゃんの気づかいと頭をポンポンしてくれる大きな手で、疲れは吹き飛んだ。

良い子の良子さん

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コメント

1

ユーザー

良子ちゃんコミュニケーション取れてるし、細かいところを気にかけてチェックしてるしいいと思う!そしてなにより元気!颯ちゃんと暮らし始めて充実してるのはもちろん、愛して愛されて自信も出てきたんだね✨ さてお夕飯は…カップラーメン?🤭それはそれで楽しいよね😆あっ!だからケーキ???

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