テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
最終話 破 〜命の鼓動、最後の選択〜
「止まる前に、届かせろ」
現場:高速道路。横転した観光バス、あたりは血とガソリンの匂い。
煙、炎、叫び声。現場指揮系統は混乱状態。
【救急隊】
「重傷者20名以上!子どももいます!まだ車内に閉じ込められた人が!」
中島、ヘリから飛び降りる。目の前に広がるのは“医療ではない、生死の地獄”だった。
【藤原大輔】(声を荒げる)
「ガソリン漏れてる!爆発するぞ!」
車体後方に取り残された2人──重傷の高校生と、骨盤骨折で意識不明の妊婦。
だが、搬送は1人だけ。時間はもう残っていない。
【救急隊】
「先生、判断を!車体、傾きます!」
【中島蓮】(静かに)
「……俺が行く。どっちも救う。」
【佐藤悠真】(驚き)
「蓮、そんなことをして──!」
【中島】
「“選ぶ”ことが医者の仕事だと教えてくれたのは先生です。でも今日は──俺が“選ばない”覚悟を見せます!」
中島、走る。道具を背負い、1人でバス車内に滑り込む。
【藤原(無線)】
「何やってんだ!車体沈むぞ!」
中島、車内で処置開始。骨盤固定。気道確保。出血制御。
腕は震えていない。表情も、迷っていない。
【中島蓮】(心の声)
「これまで学んだすべてが、今、ここにある──」
高校生の脈が弱まる。モニターが鳴り始める。
【警告音】
ピッ……ピッ………
中島、片手で心臓マッサージ。もう片手で注射。声を張り上げる。
【中島蓮】
「まだだ……お前の鼓動は止まってない!」
その瞬間──背後で爆発音。バス車体が大きく揺れる。
【救急隊】
「危険です!全員退避──!」
煙が立ち込める中、ドクターヘリが着陸。藤原が絶妙なタイミングで救出に飛び込む。
担架2つ──中島は2人を背負うように、命を繋いで引っ張り出す。
ヘリが再び空を飛ぶ。モニターに、かすかに──
【心電図】
ピッ、ピッ、ピッ…
“戻った鼓動”──ラストパルス。
佐藤が無線でつぶやく。
【佐藤悠真】(静かに)
「……繋いだな、中島。お前が、俺を超えた。」